カンボジア「地方部農業セクター支援事業」に対する融資契約の調印(海外投融資):農業セクターの金融アクセスを改善

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2022年5月27日

調印式の様子

ACLEDA Bankの借入人である農家と購入した精米機・保管倉庫の様子

国際協力機構(JICA)は、5月13日、 カンボジアのACLEDA Bank plc.(ACLEDA Bank)との間で、カンボジアの農業セクター向け貸付資金として、最大8,500万米ドルの海外投融資による融資契約に調印しました。本融資は、株式会社三井住友銀行(SMBC)との協調融資であり、両機関で2021年3月に合意したサステナブルファイナンス・フレームワーク(*1)を適用します。

カンボジア経済における農業セクターの重要性は高く、GDPの約2割、雇用の約3割を占めています。一方、農業セクターにおける金融アクセスは国内全体の融資額の9%程度に限られており、農民の半数以上が金融にアクセスできていません。カンボジアにおける貧困層の約9割は村落部に居住しているといわれ、村落部では住民の約8割が農業に従事しており、村落部における収入は都市部の5~6割程度に留まるといった経済格差があります。

本融資は、カンボジア国内の農業セクターにおける融資残高が最大の金融機関であるACLEDA Bankを通じて、こうした村落部の農民等への金融アクセス向上に貢献するものです。農業セクター向けの貸付拡大を支援し、カンボジアの持続的な経済成長に貢献することを目的としており、SDGs(持続可能な開発目標)ゴール1(貧困を無くす)、2(持続可能な農業)、5(ジェンダー平等の達成)、8(金融サービスへのアクセス改善)に貢献します。また、2019年に日本政府が発表した「対ASEAN海外投融資イニシアティブ」(*2)に沿って実施されます。

ACLEDA Bankは、内戦終結後の1993年に国連開発計画(UNDP)や国際労働機関(ILO)によって設立されたNGOに端を発する、カンボジアの最大手商業銀行であり、設立当初から、農家・中小零細企業を中心にカンボジアの金融包摂に注力してきました。2020年5月にはカンボジア証券取引所に上場し、着実に事業を拡大しながら国内の金融包摂に取り組むカンボジアのリーディングバンクです。2021年12月末時点で、SMBCを含む本邦金融機関が合計3割を出資して経営に参画しています。

ACLEDA Bankは女性管理職の登用や女性職員の採用にも注力しており、シニアマネジメントの30%以上、全従業員の約40%が女性です。本融資はG7の開発金融機関が取り組む「2X Challenge: Financing for Women」(*3)のイニシアティブの基準を満たしており、融資金額の30%以上が、ACLEDA Bankを通じ、女性農家、女性が経営する中小零細事業に融資される見込みです。本融資を通じて、農業セクターに就業する女性の金融アクセス改善し、カンボジアにおける女性の一層の活躍を支援します。


(*1)サステナブルファイナンスとは、環境・社会・ガバナンス(ESG)といった観点も踏まえながら、持続可能な経済・社会に必要な課題解決のため、資金を活用するものです。JICAとSMBCのサステナブルファイナンス・フレームワークでは、開発途上国における開発事業の課題設定・モニタリング・事業効果測定におけるODA実施機関としてのJICAのノウハウを活用し、協調融資にあたって共通の事業効果測定方法・モニタリング手法を用いることで、融資先が創出する開発インパクトを評価、共有、マネジメントすることとしています。そうした手法を内包することで、本フレームワークはSDGs達成に向けた取り組みとして国際的に認められた各種のサステナブルファイナンス原則に合致・準拠したものとして、外部評価機関による第三者意見を取得しています。なお、サステナブルファイナンス原則には、国際資本市場協会(ICMA)やローン・マーケット・アソシエーション(LMA)等が定めるグリーンローン原則、サステナビリティ・リンクローン原則、グリーンボンド原則、ソーシャルボンド原則、サステナビリティボンド・ガイドラインがあります。JICAは本フレームワークの導入により、今後もSMBCとの連携を積極的に推進し、開発途上国・地域の経済社会の発展に向けた民間資金動員を加速していきます。

(*2)対ASEAN海外投融資イニシアティブ:2019年11月、ASEAN・アジア地域の金融包摂分野について、我が国が第22回日・ASEAN首脳会議における首相声明において立ち上げたイニシアティブ。「ASEAN地域を中心に、質の高いインフラ、金融アクセス・女性等支援、グリーン投資の分野について、民間を含む資金の動員を目指し、今後JICAの出資・融資を倍増させていく」旨コミットしています。

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(*3)2X Challenge: Financing for Women:2018年6月のG7にてJICAを含む各国の開発金融機関が採択したイニシアティブ。女性の経済的エンパワーメントに資する案件に対して2020年までに30億米ドルの資金動員を図ることを掲げました。2021年には同取り組みを更に拡大すべく、2021年から22年の2年間で150億米ドルの資金動員を図る目標を設定しました。2Xは女性への投資の量及び効果を倍増させるという目標を示しています。

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