バングラデシュ初の都市高速鉄道ダッカメトロ6号線が部分開業

2023年1月17日

式典のスピーチの様子

式典に集まった多くの参加者

2022年12月28日、バングラデシュ初の都市高速鉄道(メトロ)であるダッカメトロ6号線の部分開業式典(ウットラ北—アガルガオン区間)がダッカにて開催されました。ダッカメトロ6号線は、ダッカの中心地を南北に結ぶ全長約21km、17駅で構成される全線高架の路線で、今回は約12km、9駅(ウットラ北駅-アガルガオン駅区間)が開業しました(*1)。

式典には、バングラデシュ政府からハシナ首相、カデール道路交通橋梁大臣、ヌリ道路交通局次官、シディキダッカ都市交通会社総裁などが、日本からは岩間在バングラデシュ特命全権大使、市口JICAバングラデシュ事務所長に加え、本事業の建設等を請け負った日本企業等の関係者も参加しました。始発駅であるウットラ北駅周辺の広場で首相による記念碑の除幕式、バングラデシュ政府要人、岩間大使、市口所長によるスピーチ、開業記念の50タカ紙幣・切手の発表などが行われた後、ハシナ首相を含む主要参加者がウットラ北駅から部分開業区間の終点であるアガルガオン駅まで乗車しました。ハシナ首相のスピーチでは、同国初のメトロ開業への期待や、2016年のダッカ襲撃テロ事件(*2)を決して忘れず犠牲者を慰霊する旨、日本の協力に感謝する旨などが述べられました。

同路線は、鉄道の顔となる車両の製造・納入、車両基地土地造成、本線の主要な工事や駅舎建設、信号や改札システム等の主要機材の供給を日本企業が受注しています。日本の鉄道技術をベースとした標準システムを採用しており、車両は日本の通勤車両をモデルにしています。また、SUICAやPASMOと同じ非接触ICカード技術方式が導入され、関係機関が発行する交通系ICカードを利用して乗車できます。これらの例を含め、組織体制や法整備、安全運行、駅周辺開発に関する技術協力など、日本は様々な面から協力を行ってきており、日本の技術やノウハウを活用するかたちで同路線が整備されてきています。

(*1) 開業直後の混乱等を避けるため、当面は営業時間、乗客数、乗降駅等を限定して運行。
(*2)2016年7月1日にダッカ市内で日本人を含む複数の外国人が犠牲となった襲撃テロ事件。ダッカの都市鉄道事業に関わっていた方々が巻き込まれた。

【画像】

ダッカの街中を走るメトロ6号線        同国初となる女性運転士たち      開業記念の50タカ紙幣(見本)

同路線の一般利用が開始となった12月29日以降、沢山の人々が駅に訪れ、自動券売機等で乗車券を買い求めて車両に乗り込み、バングラデシュ初のメトロの開業を喜ぶ様子がみられました。女性の乗客からは「女性でも安心して利用できる公共交通が出来て良かった」という声や、車いす利用の乗客からは「他の人のサポートが特になくても利用できる公共交通が整備されて本当に嬉しい」といった声も聞かれました。同路線には、エレベーター、車いすも通過できる幅広の自動改札機、点字ブロック、お年寄り等のための優先席、女性専用車両等様々な方が安心・安全に利用できるための設備が整備されています。

【画像】

駅構内の様子                      駅内で乗車券を買い求める人びと

【画像】

(左)改札機を通過する子どもの乗客 改札前に日本による協力を伝えるプレートが設置
(右)乗車をする人びと 安全のためプラットフォームドアが設置

【画像】

車内の様子 混乱を避けるため当面は各運行の乗客数を限定 車いすの乗客用のスペースも設置されている

昨年は日本とバングラデシュの外交関係樹立50周年、今年(2023年)はJICAの協力が開始してから50周年を迎えます。バングラデシュは近年、年平均6%を超える堅調な経済成長を続け、年々存在感が増しています。また人口は約1億6,500万人と世界8位であり、首都ダッカは2,000万人を抱える世界有数の大都市です。他方、急速な経済発展・人口増加による交通渋滞や大気汚染等が課題ともなっています。

そうした状況のなか、同路線の開業によって、自動車交通から公共交通機関への移行の加速化、ダッカの交通渋滞と大気汚染の緩和、さらには安全・快適な移動手段の提供による女性の社会進出促進も期待されています。残るアガルガオン駅~モティジール駅区間は2024年に、モティジール駅~カマラプール駅区間は2025年に開業予定で、全区間が開業となれば、現在は渋滞などにより車で2時間以上を要する移動が約40分に短縮される見込みです。

同国政府は、JICAの協力で策定した都市交通マスタープランに基づいてダッカ市内のメトロの整備に取り組んでおり、今後、円借款により6号線の残り区間、1号線、5号線(北路線)が整備される予定です。ダッカの交通需要を支えるインフラ整備の取り組みにご注目ください。