田中理事長がフィリピンを訪問

2023年2月3日

ドゥテルテ副大統領表敬

BTA議会での演説

ウピ町キブレグ小学校の視察

BTA主要閣僚との面談

フィリピン沿岸警備隊の関係者と

田中明彦JICA理事長は、1月17日から21日にかけてフィリピンを訪れました。滞在中、ドゥテルテ副大統領、ベルサミン官房長官、多くの閣僚等と会談し、協力事業を視察しました。また、バンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域を訪問し、外国人としては初めてバンサモロ暫定自治政府(BTA)議会にて演説を行い、BTA議会から感謝・称賛の決議を受ける栄誉に浴しました。

ドゥテルテ副大統領は、JICAのこれまで50年以上に亘る協力、特にミンダナオ和平プロセスへの協力やダバオ市バイパス建設事業等に謝辞を述べました。同時に、同国の多様な開発課題に対するJICAの継続的な協力への期待を示しました。これに対し田中理事長は、フィリピンは日本にとって重要なパートナーであり、今後もフィリピンの開発計画に沿った形で協力すると述べました。

ベルサミン官房長官は、日本は最も信頼できるパートナーであると述べ、インフラ整備及びマニラ首都圏における渋滞対策におけるJICAの協力に期待を表しました。田中理事長はそのほか、パンガンダーマン予算管理大臣、ガルベス和平・和解・統合担当大統領顧問室長官兼国防大臣、ボノアン公共事業道路大臣などとミンダナオ和平プロセスの推進、インフラ・海洋・防災分野の協力推進等に関する意見交換を行い、一層の関係深化・協力強化の必要性を確認しました。

マニラでは、2018年からJICAが円借款を通じて改修及び維持管理に協力している首都圏鉄道3号線(MRT3号線)に試乗し、日本の協力により運行速度や運転間隔の改善が進んでいることを確認しました。また、グアダルーペ橋付近からパッシグ・マリキナ河川改修事業等が人々の生活や経済活動の改善に繋がっていることを再確認しました。さらに、昨年円借款を通じてフィリピン沿岸警備隊に供与された97メートル級多目的船や制圧術訓練等を視察し、日本による長年に亘る協力による成果を確かめ、日本にとって欠かすことのできないシーレーンに位置するフィリピンの海上保安能力強化に向けた取り組みの重要性を再確認しました。

ミンダナオ島コタバト市を訪問した田中理事長は、BTA議会で外国人として初の演説を行いました。1990年代から続く長年の協力によりミンダナオ和平プロセスが着実に進展していることを称えつつ、平和の定着に向けた継続的な努力への期待とJICAの今後の協力方針に言及しました。演説後、BTA議会から理事長及びJICAに対し、これまでのミンダナオ和平プロセスへの協力に対する感謝・称賛の決議書が授与されました。さらにイブラヒムBTA暫定首相などと第2次バンサモロ開発計画における重要政策について意見交換を行いました。

ミンダナオ島北マギンダナオ州ウピ町では、技術協力「バンサモロ包括的能力向上プロジェクト」による農業の研修を受けた住民を訪ね、キブレグ小学校を視察しました。ウピ町は、2014年3月のフィリピン政府とモロ・イスラム解放戦線(MILF)による包括和平合意文書の締結後、ミンダナオ紛争影響地域の人々に和平プロセスの平和の配当が迅速に行き届くよう、JICAが小学校や公民館の建設を支援した地域のひとつで、今も元戦闘員を含む人々への生計向上支援が続いています。

JICAは、ミンダナオにおけるさらなる平和の定着を目指し、従来取り組んできた紛争被災地の復興や生計向上及び和平プロセスへの支援に加え、今後、自然災害を含む危機に耐えうる強靭なインフラ・制度等の構築支援等、中長期的な地域開発計画づくりなどの支援も強化していく方針です。