私のなんとかしなきゃ! 岡村麻未 歌手・音楽講師

平和への願いを歌の翼に乗せて

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© IZAWA NAOHISA

幼いころからうたうことが大好きだった私は、小学2年生のときに親子合唱団に入りました。戦時中の話を描いた作品など、実話をもとにした合唱劇でさまざまな役を演じたり、うたったりする中で、命と平和の大切さを実感しました。小学校中学年のころには湾岸戦争があり、今もどこか見えないところで戦争は起きているのだと子ども心に感じたことを覚えています。合唱団では、広島での公演や日本に暮らすアジアの人々との交流イベントなども経験し、歌を通してさまざまな人とつながることのできる喜びもこのころに知りました。

声楽を専攻していた大学時代には、韓国で現地の大学生と韓国の民謡を歌ったこともあります。心が通い合う感覚を覚え、改めて音楽を続けていきたいと思いました。卒業後には一時期、平和のために直接的に貢献できる進路がないかとJICAについて調べたことも。ですが、悩んだ末、舞台の道に進むことを決め、その中でささやかでも自分にできることをしようと思っていました。

地元愛知県で開催される「平和を願ういのちの音楽会2008」でうたってほしいと依頼を受けたのは、そんな折でした。作曲家の桃井聖司さんが"新しく作品を作ろう"と提案くださったこと、また、友人が漫画家・西原理恵子さんの作品「うつくしいのはら」を紹介してくれたことで、ミュージカル仕立ての音楽詩「うつくしいのはら」が生まれ、私にとって大切な作品となったのです。

「うつくしいのはら」は、生きるために少年兵にならざるを得なかった男の子とその母親の悲しい物語。読み終えた私は涙が止まらなくなりました。生まれたときは、子どもは皆同じはず。それなのに、教育が受けられないために、兵士になるしかない現状が今も世界のどこかにあるのです。この物語は"字を覚えましょう"に始まり、最後も同じ言葉で締めくくられます。教育が行きわたれば少年兵を生み出す負の連鎖を断ち切ることができる、そんな強いメッセージが込められているのです。

私は、このミュージカル仕立ての作品の中で、3人の登場人物を1人で演じ、うたっています。主にチャリティーコンサートなどの演奏会で発表していますが、原作者である西原さんや、絵本をもとに脚本と作曲を手掛け、音楽詩として息を吹き込んでくれた桃井さんなど、さまざまな方との出会いがあって、この作品を人々にお届けできていることに感謝しています。

「うつくしいのはら」は悲しい物語ですが、教育を受けて自分の力で人生を切り開いていきたいと願う登場人物の中に希望の光があると感じるのです。この作品の演奏を通して多くの人が世界の現状に思いを馳せることができるよう、これからも素敵な歌をうたい続けていきたいと思います。

PROFILE

愛知県出身、東京都在住。幼少より愛知のバレエ団、合唱団に所属。名古屋芸術大学声楽科を卒業後、劇団四季に入団。退団後はミュージカルやオペラなど、さまざまなジャンルのコンサートに出演。映画やアニメの挿入曲、CMソングなどを手掛けるのと並行して、幼稚園や子育て支援センターでの「のあのあコンサート!」、ユニットの「ゆるりら」「POPON」としても活動。常磐短期大学や劇団、養成所などの講師も務める。

なんとかしなきゃ!プロジェクト

「なんとかしなきゃ!プロジェクト」は、開発途上国の現状について知り、一人一人ができる国際協力を推進していく市民参加型プロジェクトです。ウェブサイトやFacebookの専用ページを通じて、さまざまな国際協力の情報を発信していきます。