事業と社会貢献を両立し一世紀 住友化学

化学の総合力で新たな価値の創造に挑む住友化学株式会社は、事業を通じて、“持続可能な社会の実現”に積極的に貢献している。
そこには、社会とのつながりを常に意識しながら業務に取り組む社員一人一人の姿があった。

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タンザニアの「オリセット®ネット」工場。多くの現地雇用を生んだ
®M.Hallahan/Sumitomo Chemical

SDGsの理念は会社の歴史・理念と同義

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タンザニア

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本社に設置された「サステナブルツリー」

東京都中央区の住友化学本社の受付を訪ねると、色鮮やかなカードで飾られたツリーが視界に飛び込んでくる。「サステナブルツリー」と名付けられたこのツリーの横には、SDGsの17のゴールに合わせた17色のカードが用意され、社員や来訪者がそれぞれの思いを書き込み、ツリーに飾ることができる。

「SDGsの理念は、住友化学の歴史と理念そのもの。社を挙げて、社会にその意義と価値を広めていきます」。CSR推進部の福田加奈子部長は、ツリーにカードをくくり付けながら、語り口に力を込める。「樹木のように、しっかりと地に根を張り、SDGsによる社会貢献を社員一人一人が実感できる会社づくりを進めていきたいのです」

住友化学は、約400年の歴史を持つ住友グループの一社として1915年、愛媛県新居浜市で開業。当時の社名は住友肥料製造所で、地域の課題となっていた銅製錬に伴う煙害の解消のために、肥料を製造したのが事業の始まりだった。銅製錬時に生じる亜硫酸ガスから、農業肥料として有益な過燐酸石灰を作って販売。環境問題の克服と農産物の増産の二つを使命として誕生したのだ。以降、100年以上にわたり成長を続け、現在は、グループ全体で全世界に約3万3000人の社員を抱えるグローバルケミカルカンパニーとして存在感を放っている。

住友化学を含む住友グループには、「自利利他公私一如(じりりたこうしいちにょ)(事業は自ら利益を得るものであるとともに、社会に対しても利益のあるものでなければならない)」という言葉がある。「この言葉は成文化されたものではないのですが、住友の社員ならば誰もが事業精神として理解できる言葉です。住友が数百年かけて発してきた理念と、SDGsという世界的なキャンペーンがシンクロできることを誇りに思います」と福田部長は笑みを広げる。

世界にインパクトを与えた「オリセット®ネット」の開発

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「オリセット®ネット」の中で遊ぶ子どもたち
®M.Hallahan/Sumitomo Chemical

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タンザニア・さくら女子中学校で特別授業を行う広岡敦子執行役員(左)。本業以外の社会貢献活動も積極的に展開している

住友化学は現在、1)技術・製品、2)レスポンシブル・ケア、3)社会活動−の3軸からSDGsへの貢献を目指している。バルクケミカルからICT、環境・エネルギーやライフサイエンスまで、幅広く確かな技術を持つ同社だが、全世界に大きなインパクトを与えた事業の一例が、マラリア予防に効果のある蚊帳「オリセット®ネット」の開発だ。

この蚊帳は、ポリエチレン樹脂に防虫剤を練りこみ、薬剤を徐々に表面に染み出させることで、防虫効果を長期間持続させることができるという特長を持つ。2001年に世界保健機関(WHO)から世界初の「長期残効型防虫蚊帳」として効果が認められ、80カ国以上に供給されている。使用された地域では、マラリアの感染率が目に見えて減少するなど、その効果が実証された。販売にとどまらず、タンザニアに合弁会社を立ち上げ、08年に同社に製造工場を開設。最大7000人の雇用を創出し、民間の事業を通じた幅広い社会貢献の形として大きな脚光を浴びた。

また、次代を担う子どもたちへの教育支援も積極的に展開。国内外の各拠点を中心に化学の楽しさを伝える出前授業の実施や、海外での学校建設、教材の提供なども行っている。アフリカへの教育支援には、「オリセット®ネット」の売り上げの一部を用いるなど、“事業を通じた社会貢献の良い循環”が出来上がっている。

SDGs達成のリーディングカンパニーへ

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住友化学の歴史は、肥料製造からスタートした

住友化学グループは多くの従業員を抱え、5つの事業部門を持つ巨大な会社だ。ゆえに、「近年は特に、全社員が日々の業務の中でSDGsの理念を理解し、やりがいを感じられる環境づくりに力を入れています」と福田部長は話す。具体的な取り組みとして、昨年、温暖化対策や環境負荷低減に貢献する自社製品や技術を「スミカ・サステナブル・ソリューション」として認定し、社内の機運を高める制度をスタート。また、冒頭の「サステナブルツリー」設置も、取り組みの一つだ。

「特に素材メーカーの場合、組織の中で働く社員は、自身の仕事がどのようにSDGsの目標達成に貢献しているかが分かりづらいこともあるかもしれません」と福田部長。「SDGsの8番目のゴールにあるように、一人一人が働きがいを感じられなければ、SDGs推進を堂々と語れませんから」と思いを込める。SDGs達成に取り組むリーディングカンパニーとして、飽くなき挑戦は続く。