国際協力を担う人々

世界各国で展開されているJICAの国際協力プロジェクト。
プロジェクトの最前線では専門家や開発コンサルタントが、現地の人々と協力しながら日々活動に従事している。
長年JICA事業に携わってきた二人に、国際協力の仕事について聞いた。

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対談

開発途上国での原体験が始まり

近藤
JICA事業で豊富な経験をお持ちのお二人にお話を伺います。
長井
私は農学部で林学を専攻し、卒業後は青年海外協力隊の植林隊員としてニジェールで活動しました。その際に、国際協力に関わる仕事の一つとして開発コンサルタントを知り、帰国後、当時の緑資源公団で砂漠化防止事業に従事した後、現在の会社に就職しました。仏語圏西アフリカでの業務経験が多く、近年はニジェールやギニアの農村開発や地域開発などに携わっています。
長岡
私は教育分野の専門家で、現在はラオス教育省に勤務しています。もともとはビール会社で営業職をしていましたが、忙しさに追われるばかりの毎日に疑問を感じるようになり、会社のボランティア制度を使って青年海外協力隊に現職参加したんです。職種は日本語教師、派遣国はパプアニューギニアです。帰国後は復職したものの、開発支援への思いが断ち切れず、退職して大学院で国際協力を学びました。その後、専門家養成のための研修であるJICAのジュニア専門員を経験し、現在に至ります。
近藤
現在のお仕事について、もう少し詳しく教えていただけますか。
長井
私は開発コンサルタントとして、当社がJICAから受託したプロジェクトに従事し、数カ月程度の海外滞在を年に数回繰り返しています。プロジェクトの環境への影響調査を担当しており、対象地の実地調査や現地の関連法令調査などを行い、プロジェクトが環境に与える影響を想定した上で緩和策を提案しています。東京で勤務するときは情報収集や報告書の作成、新規プロジェクトのためのプロポーザルの準備などを行います。
長岡
私の立場は、特定の会社に籍を置かず、JICAから直接業務委託を受ける専門家です。今は2年間の契約で、ラオス教育省のアドバイザーとして、国連や各国とのドナー会合に参加して支援の連携あるいは重複の回避といった援助協調を図ったり、JICAの支援の成果を政策に反映させるべくラオス政府と協議したりしています。教育分野の情報を円滑に共有できるよう、ネットワークをつくって関係者をつなげることも大切な仕事です。
近藤
これまで印象深かったプロジェクトについてはいかがでしょうか。
長井
2012年から4年間、アフリカのサヘル地域で実施した農業プロジェクトが印象に残っています。貯水池の改修を通じて、農業普及・地域振興を図る業務でした。青年海外協力隊で派遣されて以来15年ぶりにニジェールを訪れましたが、隊員当時お世話になった人々が私のことを覚えていてくれて、とてもうれしかったです。長年この業界にいると、かつて自分が汗を流した地域に戻れることがあります。時を越えた友好関係を感じます。
近藤
私も同じような体験をしたことがあります。現地の方々からすると、私たちは日本の代表であり、当時のことを本当によく覚えてくれています。
長岡
私にとって思い入れが強いのは、現在ラオスで実施している算数の教科書の作成支援です。教育の中でもカリキュラム改訂という人づくりの根幹にかかわる支援で、先方政府の主体性が高く、やりがいを感じています。プロジェクトを請け負っている開発コンサルタントの方々とは10年前にバングラデシュで一緒に働いたことがあります。共に苦労を乗り越えたメンバーで再び働けるのもうれしいです。

互いの強みを生かして効果を最大限に

近藤
プロジェクトにおいて、開発コンサルタントと専門家の方々はどのように連携しているのでしょうか。
長井
私たち開発コンサルタントが出張する際は、首都から遠く離れた地方の現場で活動することが珍しくありません。一方で専門家は、特に現地政府のアドバイザーという立場の場合には、首都に年単位で滞在しながら、日常的に中央政府との関係を構築している方もいます。そのおかげで、私たちは専門家との情報交換を通じて有効な対応策を考えたり、中央政府との協議も円滑に進めたりすることができますし、限られた滞在期間中に現場での活動に専念できるのです。
長岡
現地で腰を据えて活動している立場を生かし、うまく関係者間の橋渡し役を担えればと思っています。プロジェクトの実施に当たっては、時に相手国関係者との意向が噛み合わず、調整が必要な事案も出てきます。そのようなときに、事業の成果を最大限に引き出すことを第一に考え、高い専門性を持って中立の立場から助言を行うことも私たち専門家の役割です。
近藤
信頼関係の構築は、国際協力事業を成功に導くための重要な要素です。お二人がこれまでに苦労されたのはどのような点ですか。
長井
やはり相手国側との信頼関係の構築でしょうか。協力隊出身ということもあり、その点は慣れているつもりでも、プロジェクトの重要な段階で急に先方から予定変更を告げられてしまうこともあります。食事を共にするなど、日常的な関係づくりも大切だと感じています。
長岡
私の場合は専門性の追求です。以前、英語力や会議などでの発言力にコンプレックスを感じていた時期がありました。それを克服するために、自分のポストに求められる能力と、自身の現状の能力を客観的に分析し、そのギャップを埋めることを常に意識するようになりました。他方で、経験が物を言うという側面もあります。他国での経験に基づいて助言や提案ができるようになると度胸も自信もついてきます。

次世代の国際協力を担う若者たちへ

近藤
インターネットで世界中の情報が簡単に手に入る今の時代、便利になった一方で、さまざまな情報があふれ、取捨選択は難しくなったとも思います。だからこそ、学生などの若い人たちには実際に現場を自分の目で確かめることが大切だと伝えたいと思っています。お二人はいかがですか。
長井
私が会社の後輩に伝えているのは、中長期の目標をしっかり持ってほしいということです。何がしたくて入社したのか、それに向かってどんな目標を設定し、達成するためには今何をすべきなのか-。目標は時とともに変わっていっても良いんです。それを達成するために考え、努力するプロセスを大事にしてほしいと思っています。
長岡
私は協力隊時代に感じた"ワクワク感"を求めて開発途上国に飛び込みましたが、実際に途上国で生活し、国ごとの多様な自然環境や文化に触れながら、現地のために活動するこの仕事は刺激に満ちています。私自身が学生時代にJICAバングラデシュ事務所でインターンシップをし、多くの経験をさせてもらったので、今は恩返しの気持ちを持って、ラオス事務所の下でインターンシップを受け入れています。どの学生さんからも、国際協力への熱意を感じます。
近藤
どのような点がこの仕事の魅力でしょうか。また、国際協力の仕事はどのような人に向いていると思いますか。
長岡
途上国の人々と真摯(しんし)に向き合い、現地のことを最優先に考えながら共に活動する点にやりがいを感じています。また、ずっと同じことを繰り返すのではなく、さまざまな地域で新しい技術を駆使しながら、新しいものを生み出せる仕事だという点も魅力ですね。
長井
私も同感です。例えば、ドローンは環境分野で広域を対象とした調査でも活用できます。新しい知見を得ることは、開発コンサルタントとして自分が提供できる価値が広がっているということでもあります。この仕事に向いているのは、人の話をしっかり聞くことができる人でしょうか。
長岡
そうですね。相手の気持ちに共感できること、理解しようと努力できること、それは国際協力の仕事をする上でとても重要な能力だと思います。

開発コンサルタント

長井 宏治さん

NTCインターナショナル株式会社
1997年に大学を卒業後、青年海外協力隊(植林隊員)としてニジェールで2年間活動。帰国後、2001年から現職。現在は主に仏語圏西アフリカを中心に農業・地域開発業務に従事しつつ、国内では各業務の支援も行っている。

JICA専門家

長岡 康雅さん

ラオス教育省で教育政策アドバイザーとして勤務。1996年に青年海外協力隊(日本語教師隊員)としてパプアニューギニアに派遣され、その後、バングラデシュ、インドネシア、エチオピア、ネパールにて、JICAの教育分野の専門家として15年ほど国際協力に従事。

聞き手

近藤 貴之さん

JICA国際協力人材部 人材養成課