JICA STAFF 徳田 由美 人間開発部 基礎教育グループ 基礎教育第一チーム

教育で人々の人生を豊かにしたい

子どもが好きで、教育に携わる仕事に就きたいと考えていた徳田由美さん。さまざまな教育関連の仕事を経験する中で選んだ道が、開発途上国の教育を支えるJICA職員だ。教壇に立っていた経験を生かして、常に現場の声に耳を傾けながら、その国の抱える教育課題に向き合っている。

学ぶ喜びを知ってほしい

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ラオスの首都ビエンチャンの小学校を訪れて授業を視察した

大学時代に取得した小学校教員と日本語教師の免許を生かせる仕事に就きたいと思い、卒業後はシンガポールの日本人学校で働きました。滞在中、休暇を使って近隣のマレーシアやインドネシアを旅行したときのこと、多くのストリートチルドレンを目の当たりにし、学校に通うことさえできない子どもがいるという現実に改めて気付かされました。学校で学ぶ喜びを知らない子どもたちのためにできることはないか-このまま教師として仕事を続けるのが本当に自分のやりたいことなのか疑問に感じた私は、帰国後しばらくしてから、イギリスの大学院で教育と国際開発について勉強することを決めました。

修士号を取得した後は、ユネスコの中央アジア地域事務所で活動したり、JICAエチオピア事務所の企画調査員として働いたりすることで、開発途上国の教育支援に携わりました。企画調査員のときには、エチオピアの村に初めて小学校ができた瞬間に立ち会い、学校に通えなかった10代の女の子が、「私の人生はこの先結婚しかないと思っていましたが、これから1年生として学び始めるという新たな道が開けました」と話してくれたのが印象に残っています。教育支援は子どもの学びそのものだけでなく、その先の人生も支えることだと実感し、政策と現場レベルの両方からそれに携われるJICAなら自分のやりたいことを実現できると思ったのです。

教育現場に寄り添った支援を

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ミャンマーの初等教育カリキュラム改訂プロジェクトで、同国の教育大臣らと協議する徳田さん(右から2人目)

2006年にJICAに入り、希望していた人間開発部の基礎教育グループに配属されました。当時の担当案件の一つが、アフガニスタンでの識字教育プロジェクトです。同国に設立されたコミュニティー学習センターで、女性らを対象にした識字教育を行いましたが、そこでも現地の人から掛けられた言葉が印象に残っています。プロジェクトの成果を調査していた際、ある女性が、「識字教育を受けて社交的になり、自分の生き方にも前向きになりました。これまで女性への教育は抑圧されていましたが、この学習センターは私にとっての平和の象徴です」と語ったのです。子どもだけでなく、女性たちの豊かな人生の扉を開く事業に自分が関わっていることに喜びを覚えました。

その後、アフリカ部とケニア事務所を経て、2016年から再び基礎教育グループで仕事をしています。現在担当している代表的な案件は、ミャンマーの初等教育カリキュラム改訂プロジェクトです。10科目の教科書の開発を支援し、完成品を全国の小学校に配布するというスケールの大きさにやりがいを感じています。

私がJICA職員として案件の形成や管理を行う際に大切にしているのが、現場の声です。例えば、出張に行くときには必ず現地の学校を訪問するようにしています。現場で先生の教え方や子どもの学ぶ様子を見れば、その学校が抱えている課題が分かるからです。授業についていけず、つまらなそうにしている子どもたちの姿を目にしたとき、学校に行っても十分に学んでいない"学びの危機"を再認識しました。二度と戻らない学齢期に、子どもの発達段階に合った学習機会を提供することは、途上国の教育に関わる者の使命だと思っています。これからも自分のライフワークとして、教育分野の事業に一貫して携わっていきたいと思っています。

そして、途上国の教育の現状や教育支援の取り組みを日本の子どもたちに伝えていくことも、私のもう一つの目標です。自分自身の経験を日本の教育に還元し、国内の開発教育を推進していくことも、JICA職員として果たせる役割だと考えています。

プロフィール

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徳田 由美さん

徳田 由美(とくだ ゆみ)
JICA人間開発部 基礎教育グループ 基礎教育第一チーム

大学卒業後、シンガポールの日本人学校で3年間勤務。その後、イギリスのロンドン大学大学院で修士号取得。JICAエチオピア事務所の企画調査員などを経て、2006年にJICAに入構。2016年4月より現職。