ごみ問題は、経済発展の度合や、処分場に適した土地の確保、振り分けられる予算などによって国ごとに事情が異なってくる。段階を追って見てみよう。
廃棄物管理の段階において、日本は「3.ごみ削減と3R導入」の次のステップである、「4.循環型経済の確立」に向けて歩みを進めている。途上国の状況はさまざまだが、ひとたび発展が始まるとごみの増加が速く、「1.公衆衛生」から「2.環境保全」と順を追わずに「3.ごみ削減と3R導入」も同時進行してごみに対処し、「4.循環型経済の確立」を目指していることもある。
廃棄物管理を考えたとき、好ましい処理の方法を上から順番に表したもの。限りある地球の資源を有効に使う「3R」のなかにも、(1)リデュース、(2)リユース、(3)リサイクルという序列がある。
高所得国は、将来的に見てごみ量がほぼ変化しないと予想されている。その理由はごみの発生を抑制する対策(3Rなど)が進むから。
国の所得レベルによる違いはごみ質に表れている。低所得国になるほど有機物の割合が大きくなる。
デンマーク、カタール、日本、シンガポール、オマーンなど(46か国、総都市人口7億7400万人)
ごみ組成質 | 2012年(注) | 2025年(予測) |
---|---|---|
有機物 | 28% | 28% |
紙類 | 31% | 30% |
プラスチック | 11% | 11% |
ガラス類 | 7% | 7% |
資源類 | 6% | 6% |
その他 | 17% | 18% |
ごみ総発生量(トン/年) | 6億200万 | 6億8600万 |
コスタリカ、キューバ、ロシア、メキシコ、セルビアなど(35か国、総都市人口5億7200万人)
ごみ組成質 | 2012年(注) | 2025年(予測) |
---|---|---|
有機物 | 54% | 50% |
紙類 | 14% | 15% |
プラスチック | 11% | 12% |
ガラス類 | 5% | 4% |
資源類 | 3% | 4% |
その他 | 13% | 15% |
ごみ総発生量(トン/年) | 2億4300万 | 4億2600万 |
アルバニア、ブータン、ペルー、フィリピン、ボリビアなど(42か国、総都市人口12億9300万人)
ごみ組成質 | 2012年(注) | 2025年(予測) |
---|---|---|
有機物 | 59% | 55% |
紙類 | 9% | 10% |
プラスチック | 12% | 13% |
ガラス類 | 3% | 4% |
資源類 | 2% | 3% |
その他 | 15% | 15% |
ごみ総発生量(トン/年) | 3億6900万 | 9億5600万 |
タンザニア、ガーナ、モザンビーク、ミャンマー、ネパール、ハイチ、タジキスタンなど(38か国、総都市人口3億4300万人)
ごみ組成質 | 2012年(注) | 2025年(予測) |
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有機物 | 64% | 62% |
紙類 | 5% | 6% |
プラスチック | 8% | 9% |
ガラス類 | 3% | 3% |
資源類 | 3% | 3% |
その他 | 17% | 17% |
ごみ総発生量(トン/年) | 7500万 | 2億100万 |
(注)集計年度は各国で異なる
世界82か国のデータをもとにした一人あたりの所得レベルに応じたごみの発生量。ごみ量は所得が多くなるにつれて増えているのがわかる。表内にある横線は所得別のごみ量の平均値を示している。点線の上側にある国はごみ量が多く、下側にある国はごみ量が少ないと言える。
ごみ収集率は先進国ではほぼ100%近くになる。一方、途上国の多い南アジア地域は65%、アフリカは46%と半分にも満たない。残りは街なかに勝手に投棄されたり、海や川などに流されていたりする。
ごみ処分場に運んできたごみを、そのまま投棄すること。開放投棄。ごみ山ができる原因にもなる。オープンダンピングも同じ意味。一方、ごみを適切に埋め立てたり、土で覆ったりして環境の影響に配慮することをコントロールダンピングと呼ぶ。
最終処分場に降った雨が埋め立てたごみに浸透し、ごみの中の有害成分が溶出して汚染された水などをいう。浸出水が地下に浸透すると、地下水汚染の原因となるため、遮水シートを設け地下水への浸透を防ぐとともに、浸出水を集めて汚水処理施設で安全なレベルにまで浄化し排出する。
限りある資源の採取を抑え、環境負荷を減らした循環型社会を実現するためのキーワード。Rから始まる三つの取り組みがあり、上から順に優先度が高い。
国際社会が2030年までに貧困を撲滅し、持続可能な開発を実現するための指針。全部で17の目標があり、廃棄物管理はゴール12(持続可能な消費と生産のパターンを確保する)に最も関連している。
環境分野のスペシャリストとして、スリランカ、パレスチナ、ヨルダン、パキスタン、イラン、チュニジア、アルジェリアなどのJICAの国際協力事業、事例研究に携わる。人材育成の経験も豊富で、個人、組織、制度、社会の中において包括的な課題対処能力を持ち、その能力を自身で磨き上げていけるような研修員を数多く育てている。2002年から2017年3月までJICAの国際協力専門員。