私のなんとかしなきゃ! 有森裕子 元マラソン選手、ハート・オブ・ゴールド代表理事

「パートナー」として見守ること

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カンボジアでの活動を体験できる「ハート・オブ・ゴールド スタディツアー」の様子(写真提供:ハート・オブ・ゴールド)

NPO法人「ハート・オブ・ゴールド」は「スポーツを通じて国境、人種、ハンディキャップを超えて希望と勇気の共有を実現すること」を目指して1998年に発足しました。当時、スポーツを通じた社会貢献活動はあまり例がありませんでした。

スポーツはおたがいをリスペクトでき、コミュニケーションの手段としてとても効果的です。その一方でスポーツは、途上国の人々にとって生活に直結するものではありません。カンボジアで活動を始めて間もない頃は、「それをしたら、何をくれるの?」という反応でしたね。スポーツを純粋に楽しむことは、実はとても贅沢なことだと実感しました。

そのような背景もあり、初めはチャリティマラソンの実施と同時に、物資の援助なども行いました。モノを届けたり、学校の校舎を建てたりと、ハード面の支援は目に見える成果があります。でも、学校の校舎を建てたら、子どもたちを教える教員が必要ですよね。大切なのは人材を育てること-ソフト面の支援が、自立のために本当に必要なことだと気づきました。

そのために、国の指針となる「学習指導要領」と「指導書」の作成と普及に取り組みました。現在では「体育の授業」をしている学校が増えてきています。体育だけでなく保健の授業も大切です。スポーツを通して「豊かな心と健やかな体」づくりに貢献したいと願っています。

私たちは単なる「支援団体」ではなく、「パートナー」として関わっていければ理想的ですね。ソフト面の支援で、教員やマラソン大会の運営スタッフなど、人材も育ってきました。私たちが始めたチャリティマラソンも、今ではノウハウを受け継いだ現地スタッフが運営を行っています。長く継続した支援が求められていることを感じていますが、途上国の人々が自分たちの問題を、自分たちの力で解決できるようにならなくては。だって、彼らの国ですから!

活動する上で私がいつも考えているのは、「支援団体は、組織自体の継続ではなく、問題解決を目標にする」ことです。極端な言い方をすれば、自分たちが必要なくなり、団体を解散することが最終目標なのです。活動の「引き際」を見極めるのはとても難しいことですが、「何に困っているの?」ではなく、「何ができるの?」というアプローチで彼らに足りない部分を補いながら、途上国の人々をサポートしていきたいと思っています。

PROFILE

ありもりゆうこ
1966年、岡山県生まれ。オリンピック女子マラソンでは、バルセロナで銀メダル、アトランタで銅メダルを獲得。1998年にNPO法人「ハート・オブ・ゴールド」を設立し、代表理事に就任。2002年、アスリートのマネジメント会社RIGHTS.設立。国際陸連女性委員会委員、国連人口基金親善大使、社会貢献支援財団評議員等を歴任。国際オリンピック委員会女性スポーツ賞を日本人として初めて受賞。カンボジア王国ノロドム・シハモニ国王よりロイヤル・モニサラポン勲章大十字を受章。現在は、スペシャルオリンピックス日本理事長も務めている。

ハート・オブ・ゴールド スタディツアー

カンボジアでの活動を体験できるスタディツアー。カンボジアのニューチャイルドケアセンターで子どもたちと交流したり、歯磨き指導などを行う医師の補助ボランティアを行ったり、希望すればアンコールワット国際ハーフマラソンにも参加することが可能。一般も参加可能なツアー募集も行っている。

お申し込み・詳細は「特定非営利活動法人ハート・オブ・ゴールド」まで。

なんとかしなきゃ!プロジェクト

「なんとかしなきゃ!プロジェクト」は、開発途上国の現状について知り、一人一人ができる国際協力を推進していく市民参加型プロジェクトです。ウェブサイトやFacebookの専用ページを通じて、さまざまな国際協力の情報を発信していきます。