私のなんとかしなきゃ! 大野いと 女優

心に残る風景を伝えていく

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カントーで開かれたイベントに参加した大野さん(写真中央)と参加者のみなさん

映画の撮影で初めてベトナムを訪れました。『クジラの島の忘れもの』(注)という映画です。仕事やプライベートで欧米を含め10か国以上に渡航していますが、ベトナムは初めてです。アジア圏ではインドネシアやバリ、タイを訪れたことがあり、料理が美味しい印象がありましたから、ベトナムでも美味しいものに出合えるのではと楽しみでした。撮影の合間をぬって、スタッフの皆さんと一緒にダナンの町に出かけたときには、チェーという甘く煮た豆や果物をのせたかき氷のようなスイーツに出合い感動!地元の人たちでにぎわう、日本でいう居酒屋のような大きな路面店で食事をし、活気あるベトナムの町を堪能しました。中でも町の人たちのやさしさが印象に残っています。町で出会った人たちは、微笑んで一緒に写真を撮ってくれ、私が観光客であったということを差し引いても親しくあたたかく接してくれました。

今回の映画で、森崎ウィンさん演じるコア君は、日本で研修を受けるベトナム人男性の役でした。誠実で、まっすぐな青年を演じていますが、実際、ベトナムでお会いした皆さんにも同じようなやさしさを感じています。映画の中に、私が演じた愛美の誕生日シーンがありますが、撮影時、ベトナム人の出演者たちは、少し人見知りの私に積極的に話しかけてくれ「誕生日では先に願いごとを言うんだよ」「ベトナムでは食事の前に合掌はしないんだよ」など、文化や風習の違いを教えてくれました。

今年は日越国交45周年にあたり、この映画もその記念作品として製作されました。2017年11月、ホーチミンから車で約4時間かかるカントーという町で開かれた日越国交45周年のイベント「越日経済・文化交流フェスティバル」に参加しました。歌があり、踊りがあり、私は映画を紹介したり、アオザイを着たりと、町を挙げての大きなイベントに素敵な経験をさせていただきました。お祭りに町中が盛りあがる様子や町を流れる大きな川、町にあふれる素朴な空気に、カントーほど大きな町ではありませんが私の故郷、福岡を思い出し、懐かしく感じました。またカントーを流れる川には、大きなカントー橋が架かっていました。日本が協力し架けた橋だと教えていただき、日本とベトナムのつながりを感じました。

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ホイアンにある日本橋でのシーン

撮影で訪れたホイアンにある来遠橋(日本橋)も日本とベトナムをつなぐ有名な場所で、16世紀に日本人が架けたといわれています。映画の中でも登場しますが、ベトナムでも特に忘れられない場所です。日本を思い出すだけでなく、どこか懐かしい、ホッとする素敵な場所-とにかく、美しい場所でした。

私は映画を通じて日本とベトナムのつながりを知る機会をいただきました。次は私が、今回得られた感動やベトナム人の誠実で魅力的な人柄、美しい風景を多くの方に伝えていきたいと思っています。

(注)映画『クジラの島の忘れもの』は、夢をなくした女性と夢を追いかけるベトナム人の青年が、運命に導かれるように出逢い、自然に惹かれ合い、そして国境を超えて愛を貫く姿を描いたヒューマン・ラブストーリー。大野いとさんは木元愛美役で出演した。

PROFILE

おおのいと
1995年、福岡県生まれ。ティーンズファッション誌『Seventeen』専属モデルとして活動を開始。『高校デビュー』(2011年/英勉監督)で映画デビューを主役で飾る。以降、『愛と誠』(2012年/三池崇史監督)から『兄に愛されすぎて困ってます』(2017年/河合勇人監督)、本作品『クジラの島の忘れもの』(2018年/牧野裕二監督)などの話題作に出演。近年は舞台出演にも活動の場を広げている。今年は『TANIZAKI TRIBUTE/悪魔』(藤井道人監督)が公開され、2019年には主演映画『燈火、風の盆』(坂下正尚監督)の公開が控える。

なんとかしなきゃ!プロジェクト

「なんとかしなきゃ!プロジェクト」は、開発途上国の現状について知り、一人一人ができる国際協力を推進していく市民参加型プロジェクトです。ウェブサイトやFacebookの専用ページを通じて、さまざまな国際協力の情報を発信していきます。