JICA STAFF 波多野誠 JICA四国

日本の地域も元気になる国際協力を

ともに「創る」大切さを学んだ現場

国際協力を志したきっかけは、小さいころに見たエチオピア大飢饉のニュースでした。「日本は飽食なのになぜだろう」と、食糧問題に興味を抱いたことが原体験になっています。

加えて、大学のサイクリングクラブで仲間と一緒にツーリングやイベントの計画を立て実行する楽しさを味わい、バックパッカーとして東南アジアを旅したときに開発途上国の人たちの熱気に触れたことで、さまざまな組織・人と連携して、開発途上国で事業を計画・推進するような職に就きたい-そう考えるようになりました。

入構後は、主に農業分野に携わり、赴任したラオスでは、農業政策の根幹となる農業統計の整備や、質の高い稲種子やタンパク源となる淡水魚の養殖技術を農家に普及するプロジェクトなどを担当しました。大学では植物病理学を専攻しましたが、JICAでは、それを超えた幅広い分野の経験ができることが大きな魅力です。相手国の行政官、各分野の専門家、村人の声を聴きながら、政策・制度づくりから現場での農家の生計向上まで、農業・農村開発という大きなテーマ全体を見通して挑むことに非常にやりがいを感じました。

みんなを笑顔に 自分はつなぎ役

【画像】

2018年の「日系研修」ではアルゼンチンから1名、ブラジルから2名、パラグアイから2名、チリから1名が来日。2017年に参加した日系人が地元に戻ってよさこいを広める、そんな好循環も生まれている

JICA四国では、自然災害が多いことやへき地・離島があることなどを背景とした四国ならではの取り組みを活かし、たとえば、ネパールでの蛇籠(じゃかご)の普及(注1)やタイの遠隔治療(注2)など、企業、大学、自治体、NGO/NPOの産・学・官・民が連携した事業を推進しています。私はおもに開発途上国からの研修員の受け入れを担当しており、四国の地域資源を活用した研修の企画や運営を行っています。開発途上国の課題を解決するために、研修実施機関の方と意見交換しながら知見を深めて、事業をともに進めることにおもしろさを感じています。

また、地方創生にも貢献する国際協力に力を入れており、ユニークなものに高知の「よさこい祭り」を体験する「日系研修」があります。四国から中南米に多くの人が移住し、現地で農業分野などで活躍していますが、現在は世代交代が進み、日本とのつながりを意識した日系社会の振興が課題となっています。

そこで、長年、海外から研修員を受け入れてきた高知希望工程基金会と一緒に、戦後のまちおこしの一環として始まった高知の「よさこい祭り」を通じ地域振興を学ぶ研修を立ち上げました。アルゼンチン、ブラジル、チリ、パラグアイといった地球の反対側からやってきた、日本にルーツを持った日系人が、研修でよさこいの踊りを披露する姿を見て、地元の人は非常に喜ばれました。なお、パラグアイとアルゼンチンに、よさこい指導の日系社会青年ボランティアの派遣も行っています。よさこいを世界に広げる取り組みを行っている高知県や市民と連携して、中南米の日系社会も高知県の人々もより一層元気になるきっかけを創っていければと思います。

私がJICAの職員として醍醐味を感じるのは、さまざまな組織や人を「つなぐ」こと、そして「ともに創り上げること」です。日本の地域と開発途上国を結び、お互いの学び合いや交流を通じて、双方が元気になっていく、そのような国際協力を推進していきたいです。

プロフィール

【画像】

波多野 誠さん
着用しているのは、JICA四国のオリジナルTシャツ。開発途上国からの研修員に、おもてなしとして進呈している。漢字、カタカナ、ひらがなが入っていて、ウケもいい(写真:中島健一)

波多野 誠(はたの まこと)
JICA四国

大学で植物病理学を学び、2000年、JICAに入構。JICA筑波、農村開発部で農業分野を担当したのち、ラオス事務所に赴任。イギリス留学(農村開発)、総務部、東南アジア・大洋州部などを経て、2015年よりJICA四国で「研修員受入事業」を担当。関心事項は、地方創生×国際協力。