JICA海外協力隊がゆく Vol.1 タンザニア

JICA海外協力隊員の世界各地での活動を紹介する新連載。
今回は、タンザニアで環境教育に取り組む隊員の声が届きました。

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海に潜ってサンゴなど海中生物を調査するのも田丸さんの活動だ。潜っているのは海洋公園で働く同僚たち。

海洋環境保護の意識を育んでいます

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タンザニア

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小学校では、環境を守る気持ちを育てるためにみんなでポスターを作った。前列左端が田丸さん。

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地域の人たちと小学生が参加したビーチクリーンのイベントも企画。自分たちの活動で海岸がきれいになることを体験してもらった。

私が活動しているムシンバティ村は、タンザニア南東部に位置するムトワラ州の小さな漁村です。主要都市のダルエスサラームからムトワラまで飛行機で1時間、そこからさらにバスで1時間半かけてようやく到着します。

JICA海外協力隊に応募したのは、途上国の人たちのためになにかやりたいと考えていたところ、日本で小・中学生を対象にした自然体験キャンプでの引率の経験が活かせる職種があることを知ったから。趣味でスキューバダイビングをやっていたので、海を対象とした環境教育に取り組みたいと思っていました。タンザニアからの要請は、開発が進んでいない海洋公園での海洋調査と学校での環境教育だったので、これだ!と思いました。

今は、海洋公園の敷地内にある四つの小学校と一つの中学校を巡回し、毎週、環境の授業を行っています。村の子どもたちは漁師になることが多く、幼い頃から海洋保護の意識を育めば持続可能な漁業に取り組むこともできますし、また海洋公園の保護をしたいという気持ちも生まれると思い、日々、授業に取り組んでいます。

授業の内容は、海洋公園の同僚たちにアドバイスを受けながら、村の子どもたちの身近な問題を探して組み立てます。そこで見つけたテーマの一つがウミガメです。海洋公園にはウミガメが棲息していますが、年々数を減らしています。原因の一つが人々の食用になっていること。ウミガメの捕獲も食用も法律的に禁止されていますが、地元の人にとってはご馳走で高く売れるため、密漁がなくなりません。そこで授業では、棲息数の減少などウミガメを食べてはいけない理由を教えてきました。

先日、同僚がパトロールをしていると「向こうでウミガメを食べている人がいる」と子どもたちが教えてくれたそうです。同僚が「なんで教えてくれたの?」と聞いたところ、子どもたちは、「学校の授業でタクヤがウミガメを食べちゃダメだって教えてくれたから」と言ったそうです。自分の授業がちゃんと子どもたちに響いているのだと感じてうれしくなりました。

任期は2019年1月まで。海の近くで暮らしていても、海に潜ったり海洋公園に来たりしたことのない子も多いので、海での実習や社会科見学を実現させたいと思っています。

JICA海外協力隊プロフィール

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田丸拓弥さん

田丸拓弥(たまる・たくや)27歳
出身地:東京都
職種:環境教育

企画調査員(ボランティア事業)(注)からひとこと

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赤堀育美さん

JICAタンザニア事務所 赤堀育美

田丸さんの任地は都市部から遠く離れ、不便なことも多いのですが、"あるもの"で創意工夫し、子どもたちだけでなく、同僚や地域住民にも環境教育の大切さを忍耐強く伝えています。タンザニアにとても馴染んでいて、友人も多く、子どもたちにも慕われている田丸さんなので、任期満了に向けて、地域の人たちの理解と協力を得ながら活動に取り組んでくれることを期待しています。

(注)隊員の活動全般を支援する「ボランティア事業支援のプロ」。また相手国の要望を調査し要請開拓を行うなど、隊員活動全体の運営を行う。

+one information 世界的にもレベルが高いBongo Flavor(ボンゴ・フレーバー)

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イラスト:さかがわ成美

近年、アフリカの音楽が欧米で少しずつ注目され始めている。なかでもタンザニアは音楽産業が盛んだ。

タンザニアの人たちは音楽が大好き。町を歩いていると、いたるところから大音量で音楽が聞こえてくる。地方都市でも大規模な野外ライブが開催され、たくさんの人であふれかえる。

こちらに来る前は、タンザニアでは民族音楽が主流なのではと思っていたが、実際はそうではない。多くの人が聴いているのはタンザニアのポピュラー音楽「Bongo Flavor(ボンゴ・フレーバー)」で、日本でいうJポップに近い雰囲気。欧米の曲と遜色のないノリのよさで、世界的にみてもレベルが高い。ここ数年は、世界的に有名な欧米の歌手がタンザニアの歌手とコラボすることも増えている。自分が昔から知っている欧米の歌手がスワヒリ語で歌っているミュージックビデオを見た時には驚いた。最近はタンザニアの音楽にどっぷりハマっていて、「なんでそんなに詳しいんだ」とタンザニア人に驚かれるほどだ。

もしかしたら近い将来、日本でもスワヒリ語の曲を耳にするようになるかもしれない。(田丸拓弥)