ビジネスが変わる

ルワンダのICTビジネスで活躍する若者たち

ルワンダのICT業界では30歳前後の若者たちが起業家として、または企業の中枢として活躍する。JICAの協力を通して日本から学んだ経験をもとに、自国の課題解決に精力的に取り組んでいる。

カードをタッチしてバス運賃を支払い

クリスタ・ムネゼロさん(27歳)

ICカードでバス運賃を支払う日本の「Suica」や「PASMO」のようなサービス「タップ&ゴー」を開発した「ACグループ」に所属。キガリ市内で運行する3社のバスすべてが同社のこのシステムを導入、毎日約30万人の市民が利用する。同様のサービスをカメルーンでも始め、今後は他のアフリカ諸国にも広めていく。

「以前のバスは、車掌が運賃のおつりを計算するのに時間がかかって不便でしたが、タップ&ゴーの導入で市民に喜んでもらえ、バス会社の売り上げも30%伸びました。日本への留学では、計画を立てること、会議や報告を行うことの大切さを学び、すべてが今に役立っています」。

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バスの運転席近くにあるオレンジ色の機械にICカードをかざして運賃を支払う。

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クリスタ・ムネゼロさん

長距離バスチケットのオンライン販売

ムサ・ハビネザさん(29歳)

5年前に共同経営者とともに長距離バスのオンラインチケット会社「ケンズ」を創業。乗客はバスターミナルなどに行かなくても、インターネットでチケットを予約購入できるようになった。ルワンダの27の長距離バス会社のうち14社と契約しているほか、隣国ウガンダのバス会社1社とも提携する。

「日本の企業はそれぞれの専門分野で優れた人材がいて、チームを作って、助け合って、組織を強くしていました。私の会社も、そうなりたいと思います」。

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発券機はインターネットに接続可能で、ここにインストールするソフトウェアをハビネザさんの会社で開発した。

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ムサ・ハビネザさん

アプリで料理の注文を受けバイクで配達

ジョヴァンニ・ムゴバさん(32歳)

自ら起業した「ビタファ」社で、2018年9月にフードデリバリーのアプリをリリース。キガリ市内に10店舗を展開するレストランチェーンと提携し、アプリで料理を注文すればバイクで配達してくれるサービスを提供している。

「ルワンダではスープを使った料理が人気なので、スープがこぼれないように日本のおそば屋さんのバイクについている出前機に似たものをファブラボで作ってみたい」と語る。現在はJICAの現地スタッフとしても働き、「日本の投資家とルワンダの起業家のマッチングを増やしたい」と話す。

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「まだスタートしたばかりで、使えるお店や利用者数は少ないですが、ルワンダでいち早くアプリをリリースしたのは強みだと思います」。

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ジョヴァンニ・ムゴバさん

最適な配送業者を選べるアプリ

イヴス・キュゾゾさん(30歳)、チャールズ・ムタバジさん(30歳)

二人は日本留学後、日本のレックスバート社のオフショア開発(注)の拠点として2014年に設立された「ワイヤードイン」に所属。キガリのオフィスでは約10人のスタッフが日本、欧州、ルワンダの顧客から依頼されたソフトウェア開発に取り組んでいる。2018年12月には、自社開発の「オヘレザ」という配送サービスのアプリをリリース。これは送りたい品物、送り先の情報などをアプリに入力し、複数の配送業者の中から料金や評価をもとに選択するもので、話が成立すれば、業者が直接送り主のところへ集荷に訪れる。

(注)ウェブシステム開発やスマホアプリ開発などのソフトウェア開発業務を、海外の事業者や子会社に委託すること。

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配送料金や相手に荷物が届いたかどうかもアプリ上で確認。料金はモバイルマネーで支払われる。

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イヴス・キュゾゾさん、チャールズ・ムタバジさん

オンラインショッピングのプラットフォーム構築

リチャード・ルサさん(30歳)

2010年に起業したルワンダのICTスタートアップ「へへラボ(HeHe.lab)」を、2017年に日本のICT企業「DMMグループ」が完全子会社化して誕生した「DMM.ヘヘ」。オンラインショッピングのプラットフォームを構築し、日用品や食料、農作物などさまざまなものをネット上で販売している。また地元の高校生・大学生などをICT起業家やエンジニアとして育てる事業も行っている。

「HeHeはルワンダ語で『どこ』の意味で、『どこで手に入る?』『どこで見つかる?』といった問題を解決したいという思いが込められています」と語るのは、同社で技術部長を務めるルサさん。

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リチャード・ルサさん

ただ今、日本で学び中!

ABEイニシアティブで留学中のICT起業家の卵たち。
ルワンダの今後の成長の鍵をにぎる二人を紹介しよう。

マテルネ・ムティへムカさん

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マテルネ・ムティへムカさん

留学先:芝浦工業大学理工学研究科

「ルワンダでは銀行のシステム開発の仕事に就いていました。日本は世界の中でも、もっとも工業化が進んだイノベーションの先進国だと思います。日本では勤勉の精神を学び、一所懸命勉強しています。専門にしている農作物の病気をIoT(Internet of Things、モノのインターネット)で検知する研究は、二つの国際的な学会誌で取り上げて頂くことができました。いずれは自分のビジネスを立ち上げ、新しいアイデアとテクノロジーの力で、世界をよりよい場所にしたいです」。

担当教授からの言葉

システム理工学部電子情報システム学科教授・副学長 井上雅裕さん

「マテルネ君はIoTの研究に取り組んでいます。ネットワーク、センサー等のハードウェア、人工知能(AI)や機械学習などのソフトウェアを統合したシステムを農業に展開する研究を進め、国際会議で論文を2度発表しました。IoTとAIを活用したSDGs達成への貢献とイノベーション創出を期待しています」。

イブラヒム・トゥムクンデさん

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トゥムクンデさん(後列左から3人目)ら宮城大学のグループは2016年の「ビジネスモデル発見&発表会 東北大会」で審査員特別賞を受賞した。

留学先:宮城大学事業構想学研究科

「高校生の頃に空手を習っていて日本に親近感を持っていました。大学では情報デザインについて学んだだけでなく、インターンシップや学会への出席を通じて日本の企業や研究者たちとの幅広いコネクションを得ることができました。彼らと顔を合わせる中で、アフリカ市場への強い関心を肌で感じています。一番の目標は、身につけた知識や技術で母国の発展に貢献すること。プログラムの修了後に向けて、日本とルワンダの企業が協力して行う事業のアイデアを練っています」。

担当教授からの言葉

事業構想学研究科教授 須栗裕樹さん

「イブラヒム君は人工知能でテキスト情報を深く調べる研究をしています。論文ではルワンダの政治状況をめぐるSNS上のさまざまな意見を分析しました。今後の活躍を期待しています」。

日本とともにICTで社会問題を解決したい

ICTイノベーション省大臣 パウラ・インガビレさん

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パウラ・インガビレさん

2018年10月にICTイノベーション省の新大臣に就任。ルワンダ開発庁勤務時代から、JICA専門家の山中さんともルワンダのICTセクター開発に尽力してきた。

「日本政府、JICA、日本の民間企業との関係は10年近く前までさかのぼり、ルワンダのICTセクター開発の初期段階から多くの支援をしていただきました。日本人と仕事をしてきて感じるのは、"ルワンダを良くする"という強い使命感、責任感で、クオリティの高い発展を手助けしてくれてとても感謝しています。今後も日本と協力して、ICTを通じてさまざまな社会課題の解決策を一緒に作っていきたいと考えています。ルワンダは国民の大半が働き盛りな生産年齢人口で構成され、優秀な人材を生み出しています。日本と力を合わせて企業の成長支援に取り組みながら、ルワンダだけでなくアフリカ全土、また日本や国際市場にも展開して、ICTによる解決策を提供していくチャンスを見い出したいと思います」。