協調性を育む日本式(協調性×保育園)

遊びから学ぶ、「子ども中心の保育」へ

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砂場遊びは、子どもの想像力、科学的関心、体や手指の運動機能の発達を促すと考えられている。プロジェクトを通じて、これまで約20の保育園に砂場が導入された。

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教室の四隅に「ごっこコーナー」「積み木コーナー」「絵のコーナー」などを設け、子どもたちは自分がやりたい遊びを自由に選べる。

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「就学前の教育と保育の質向上プロジェクト」チーフアドバイザーの神谷哲郎さん。

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栄養学の第一人者として著名なマグディー・ナゼィーフさん(右端)による「食育セミナー」。受講した保護者からは「今までの食事の与え方の間違いがわかった。子どもたちの健康に役立った」との声が聞かれた。

日本式教育は保育園にも広がっている。そもそもエジプトには1998年から約20年間、のべ70人以上の保育・幼児教育分野の青年海外協力隊員が派遣され、「遊びを通じた学び」を広めてきた背景がある。

その活動を引き継ぎ、EJEPの締結によって、2017年6月に「就学前の教育と保育の質向上プロジェクト」がスタート。保育園を対象としたJICA初の技術協力プロジェクトで、50の保育園をモデル園として、コーナー遊びや砂場遊びといった〝遊びを通じた学び〟の普及に取り組んでいる。

プロジェクトのチーフアドバイザー神谷哲郎さんは、エジプトでは〝子ども中心の保育〟が必要だという。「エジプトでは、園児たちが先生の指示のままに過ごし、乳児は寝かされて、ご飯を食べさせるだけという保育がまだまだ多い。保護者も子どもをあずかってくれればいいという考えです。このプロジェクトでは、子どもたちが五感を使って自由に遊ぶことで脳を刺激し、学んでいける保育をしていこうと提案しています」。

きめ細かな保育を行うために、保育士と保護者の意思疎通を図る取り組みにも力を入れている。「エジプトの保育園はお昼寝がないので連絡帳を書く時間がありませんでした。そこでボードで日々の活動を伝えたり、保育園通信を配ったり、定期的に保護者とのミーティングを開くことを推進しています」と神谷さん。さらに保育への保護者の参加を促すべく、「食育」「親子体操」「絵本の読み聞かせ」の研修会を実施している。

神谷さんは、保育の質を上げるには保育士の地位向上も不可欠だと訴える。「エジプトの保育士には日本のような国家資格がなく、地位が低い。給料も低いので、離職率が高いんです」。そこでプロジェクトでは、現役の保育士への研修を実施し、2018年10月に74人に修了証を授与。今後も同様の研修を続ける計画で、将来的には、保育士の認証制度の整備も重要となる。

日本式の子ども中心の保育を実践することで、エジプトの保育があずける場から学ぶ場へと変わりつつある。