協調性を育む日本式

みんなで取り組むから楽しい!「UNDOKAI」 マラウイ/セネガル

「途上国の子どもたちに、体育の楽しさを感じてほしい」というJICA海外協力隊員の活動から広がった、日本ならではの体育行事「運動会」。
今では「UNDOKAI」として世界に広まっている。
そのなかからアフリカでの取り組みをご紹介しよう。

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本番で最高の結果を出したカゼンゴ小学校の大縄跳び。【ムジンバ(マラウイ)】

UNDOKAI ムジンバ(マラウイ)、ティエス市(セネガル)

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セネガル、マラウイ

途上国での体育の授業は知識を得、理論を学ぶ座学がほとんどで、実技は少ない。そんな現状を目にした海外協力隊員が考えたのは、日本ではどの学校でも行われている運動会を開くことだった。

徒競走、騎馬戦、ダンス、応援など多様な種目がある運動会には、競技として競う、レクリエーション的に楽しむ、身体表現をするなどの要素があり、みんなが参加できる。さらに、体を動かすだけでなく、チームで力を合わせる協調性、ゴールの達成感、ほかの人への応援など、子どもにとっていろいろな学びがあるからだ。

子どもたちの一体感のパワー

2018年12月、マラウイ北部のムジンバにあるカゼンゴ小学校で開かれたUNDOKAIは、ラジオ体操から始まり、ムカデ競争や背中渡り、大縄跳び、騎馬戦と続き、最後はリレーで大きく盛り上がった。子どもたちの笑顔がはじけ、全身から〝楽しい!〟という気持ちが伝わってくる。

開催に協力したのは、同地域の小学校で活動している隊員の吉川啓史(けいし)さんたち。近隣2校と合同での開催だった。競技の練習は放課後。ムカデ競争など慣れない競技に苦戦し、子ども同士が文句を言い合うことも多かったが、練習を重ねるうちに上手なメンバーからアドバイスを聞き、自分がやりたい気持ちを抑えて、上手な子を競技のメンバーにする光景が見られるようになった。「UNDOKAIの競技では仲間を頼り、力を合わせるほうがいいことに気づいたと思います」と吉川さんは言う。

当日、各種目で熱戦がくり広げられたが、カゼンゴ小学校はどの競技も1位になれないまま迎えた大縄跳び。リハーサルでも50回飛べていなかったので、吉川さんは負けを覚悟していたそうだ。ところがなんと、これまで飛んだこともない72回を達成し1位に!「当日の緊張感がこれまでにない一体感を生み、予想をはるかに上回る結果になりました。本番がもたらす臨場感や緊張感、一体感のパワーはすごいです」と、吉川さんは子どもたちの力に驚かされた。

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騎馬戦の練習をするカゼンゴ小学校の児童たち。

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UNDOKAIの運営に携わった小学校教育の隊員たち。左から角倉亜海奈さん、吉川啓史さん、久田健人さん。

どんどん広がるUNDOKAI

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低学年の児童たちは玉入れを楽しんだ。【ティエス市(セネガル)】

セネガルでは、2017年5月、第2の都市ティエス市の小学校で隊員の笹部透さんが中心となり最初の本格的なUNDOKAIが行われた。その後、教員たちから「毎年開催したい」との声があがり、2018年2月に行われたUNDOKAIでは、今度はオマール・ジャハテさんらセネガル人教員が準備、運営の中心となった。当日は、教育系の隊員が派遣されているセネガルの他地域の教員や視学官など約60人が視察に来校した。市の教育長も、UNDOKAIには協調性の育成や他人への思いやり、チームワークの醸成など、さまざまな教育効果があることを実感したそうだ。

そこで2019年3月7日、さらにUNDOKAIを多くの教員に知ってもらおうと、市内の小学校の教育関係者140人ほどを招き、実際のUNDOKAIを開催。その後、体育教育の重要性や実践の課題に関するセミナーを実施した。中心になったのはジャハテさんと、現在ティエスに派遣されている隊員の高橋旺子(あきこ)さん。高橋さんはUNDOKAIをすでに数回行っていて、ルールを守って競技を行う、応援する、仲間同士で声をかける、積極的に当日の運営を手伝うなど、次第に変わってくる子どもたちの姿を見てきた。

「真剣に競技に取り組み、勝って喜び、負けて悔しがる姿。子どものがんばる姿を見て盛り上がる保護者。元気な応援。競技の運営・サポートに動き回る姿…。多くの人が一日を通して運動に関わり、運動を楽しみ、その空間を共有できるのがUNDOKAIのよさだと思います」と高橋さんは言う。

セネガルでのUNDOKAIはすでに広がりはじめ、全国で10回ほど行われている。これからさらに多くの学校で行われ、運動は楽しいと実感する子どもたちが増えていくことだろう。

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白熱する騎馬戦は人気種目。

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UNDOKAIの開催に取り組んだ高橋曜子さん。

ティエス市立エルアジ・アマドゥ・モクタール・チャム小学校 教諭 オマール・ジャハテさん

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オマール・ジャハテさん

UNDOKAIはチームスピリット、フェアプレーを育む体育の祭りであり、子どもだけでなく、私たち教員も熱くなります。これまでセネガルにはなかった革新的な学校行事で、多様な競技を指導することで教員の経験値も高まります。また、UNDOKAIの冒頭に行う選手宣誓は、子どもの競技への集中力や興味・関心を高めていると感じます。UNDOKAI後には、日常の学習態度にもポジティブな影響がありました。

マラウイ

【画像】国名:マラウイ共和国
首都:リロングウェ
通貨:マラウイ・クワチャ(MWK)
人口:1,862万人(2017年、世界銀行)
公用語:チェワ語、英語

1964年、イギリスから独立。人類誕生の地といわれる「アフリカ大地溝帯」の南に位置する。これまで1,800人近いJICA海外協力隊員が派遣されている。サッカー、ネットボール、バレーボール、テニスなどの人気が高い。

セネガル

【画像】国名:セネガル共和国
首都:ダカール
通貨:DFAフラン
人口:1,541万人(2016年、世界銀行)
公用語:フランス語

1960年、フランスから独立して以来、クーデターもなく内政は安定。民主主義が定着している。サッカーが盛んで、2002年、2018年のワールドカップに出場。学校教育では競技会は盛んだが、体育の実技の授業はあまり取り組まれていない。