細やかな対応の日本式

「心配り」が発展を生む コスタリカ/神奈川県・横浜市

2020年東京五輪の誘致の際に話題になったのが、日本人のおもてなしの心。相手のことを思いやる気持ちから生まれる「心配り」は、JICAの途上国への支援にも表れている。

"生活改善"を日本から世界へ【細やかな対応×生活改善】

日本式の"生活改善"の手法が中米・カリブ地域の国々に広まっている。
普及の過程を可視化できるシステムを構築し、各国で情報共有が始まるなど、より現地の状況に適したものとなるよう発展を遂げている。

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住民が改善事例を発表。自らの努力や工夫で改善を実行したという自信をつけてもらい、さらなる取り組みを促す。

普及員の声を拾い農村を発展に導く

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コスタリカ

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住民に生活改善をどう普及させていくか、その手法について普及員がおたがいの意見を述べ合いスキルアップを図る。

世界で知られる日本発の言葉に「カイゼン」がある。この言葉はおもに製造業で品質や生産性を上げるために培われた理念や手法のことを指す。実は戦後の日本には農村の住民に対して「今より生活をよくしよう」と生活改善を促す〝生改さん〟と呼ばれる生活改良普及員がいて、生活の発展を助けていた。こうした日本が持つ実体験を支援に役立てようと、JICAは2006年から中米・カリブ地域の国々を対象に農村開発の関係者を日本に招いて、生活改善を担う普及員の養成を続けている。

「生活改善の活動は住民が自発的に実施していることが特徴で、主体性を伴った貧困削減につながっています」と話すのは、JICA専門家の塙暢昭さん。コスタリカでは生活改善の普及が進んでいて、農牧省を中心に保健省、環境省、農村開発庁、市役所らが省庁の枠を超えた連携チームを結成して集落を訪問している。また、実績を積んだ普及員は自ら新たなチームをつくって対象地域を拡大していこうとする動きが始まっている。

一方で生活改善は、住民の意識の変化が実際の行動の変化につながるという普及過程が目に見えにくく、その理念を伝えにくいとの指摘を受けることも事実である。

「そこで、日本の有識者の支援も受け、普及員が自身の活動の写真を織り交ぜながら記録することで、時系列で解説できるシステムを構築しました。また、生活改善型普及を実施できる人材育成を目的としたマニュアルも作成しています」

こういった課題にマッチした対応策は普及員に快く受け入れられている。心配りのある支援によって、さらに農村の発展は歩を進めている。

コスタリカでの生活改善の普及の一例

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住民が始めた家庭菜園。

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共用地の広場は廃タイヤを活用して整備された。

JICA専門家 塙 暢昭(はなわ・のぶあき)さん

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塙 暢昭さん(中央)

農村開発のコンサルティングを行う企業「アールディーアイ」の主任研究員。中米・カリブ地域を中心に生活改善のアドバイスを行い、JICAつくばセンターでは研修の講師も務める。写真はコスタリカ農牧省の職員と。

研修後も手厚いフォローを【細やかな対応×廃棄物管理】

アフリカ各国が抱える廃棄物管理の課題解決に向けて、ごみの収集・運搬から中間処理、最終処分、民間事業者の取り組みなど日本の廃棄物管理の一連の流れを知ることのできる研修が横浜で開催された。

各国の課題を親身になってサポート

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古紙や古着が運び込まれる倉庫を視察。古紙といっても、新聞紙は新しい新聞紙に生まれ変わり、雑誌は紙の箱、紙パックはトイレットペーパーになるなど細分化されていることを学んだ。(写真:中島健一)

「アフリカのきれいな街プラットフォーム」(以下、ACCP)が始まって2019年で3年目を迎える。2月に横浜で行われた研修には11か国から13名の行政官が訪れた。経済の成長に伴って増えるごみ処理の課題に直面する途上国にとって、廃棄物管理を学ぶ機会は、よりよい発展のために不可欠だ。

「日本は法制度が進んでいて、各自治体も独自の方法を取りながらしっかりと廃棄物管理を行っています。そうしたさまざまなアプローチの中から、各国の行政官はそれぞれの課題に即した方法を得ることができています」と話すのはJICA横浜の竹迫真実さん。たとえば、コートジボワールの行政官は「廃棄物管理の仕組みを見つめなおして再構築したい」と法整備の進め方に興味を示し、ニジェールの行政官は「廃棄物管理はゼロに近いところからのスタートなので、何から進めていくべきか」と体系的な知識の理解を深めた。

古紙や衣類のリサイクルを行っている「横浜市資源リサイクル事業協同組合」の視察では、分別された新聞紙、紙パック、古着などの再生・再利用に話がおよぶと輸出先や売買価格などに感心が集まった。アフリカでは、ごみを分別したとしても適切な処理やリサイクルできる企業がなければそのまま放っておくしかなく、廃棄物事業の成り立ちなどについて説明を求める質問が飛んだ。

「行政官には母国に戻ったときに何をするかというプランを作成してもらい、その進捗状況をしっかりとフォローアップするようにしています」。これには彼らが考える改善策に対して何が課題となるのかを共有し、少しでも背中を押してあげたいという思いがある。ACCPでは、研修を通じて出会ったひとりひとりに寄り添った協力を実践している。2019年8月に開かれる第7回アフリカ開発会議では、研修員からの要望が多かった日本の企業とのビジネスマッチングを行う予定だ。

アフリカ開発会議(TICAD:ティカッド)

日本の主導のもと、国連、国連開発計画(UNDP)、アフリカ連合委員会(AUC)や世界銀行と協力して開催する、アフリカの開発をテーマとした国際会議。1993年から始まり、第7回目は2019年8月に神奈川県横浜市で開催される。

横浜市資源リサイクル事業協同組合

【画像】「横浜市資源リサイクル事業協同組合」は、環境問題を家族が話すきっかけづくりとして、子どもたちが描いた環境絵日記を募集している。アフリカで活動する青年海外協力隊を介してアフリカの子どもたちからも届いた。

「1頭の豚がいます。私たちが捨てたごみを食べてしまったので、お腹の中にごみがそのまま残ってしまいました。これは改善しなければなりません」(ブルキナファソ 小学4年生)。

JICA横浜 研修業務課 竹迫真実(たけさこ・まみ)さん

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竹迫真実さん

「アフリカのきれいな街プラットフォーム」の研修のサポートを務める。

「JICA横浜では、国際協力に関するパネルの中に、アフリカの子どもたちが描いた環境絵日記も展示されています」。