港湾の整備:機能を向上させて荷役作業の効率アップ アンゴラ

アンゴラ南部の経済発展の鍵を握るのが、貨物量の扱いが国内第3位のナミベ港だ。
長期の内戦の影響で手入れがされず荒廃した港湾機能を取り戻すための復旧が進められている。

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高品質な復旧を
改修作業が進むナミベ港(2019年3月)。写真奥に見えるのがナミベ市街で、内陸部には鉱山資源が豊富な山々とナミブ砂漠が広がる。

老朽化した設備を改修

「ナミベ港を初めて訪れたとき、この港は30年、いやそれ以上の長い間、修繕もされずに酷使されてきたのだろうなと感じました」と当時を振り返るのは、清末文明さん。JICAが2005年にアンゴラの主要4港(ルアンダ、ロビト、ナミベ、カビンダ)を対象に実施した「港湾緊急復興計画調査」のメンバーだった。4港の中でもとくにナミベ港は、岸壁のコンクリートがところどころ崩れ落ち、岸壁と船がたがいに傷つかないようにする防舷材も機能をほぼ果たしていない状態で、コンテナを置くヤードは未舗装のため砂ぼこりがひどかった。ポルトガルから1975年に独立した同国は、2002年まで約30年間続いた内戦の影響で港の維持管理や整備が遅れ、老朽化が著しく進行した。

アンゴラ政府は、国の復興に向けて物流網を強化することを決め、JICAとともにナミベ港の再生に取りかかった。同港は中型船(積載量約5万トン)が2隻接岸できるアンゴラ南部地域最大の港で、2007年から10年にかけて3A岸壁(全体のおよそ半分の区画)が改修され、2017年から3B岸壁(残りの区画)の改修がスタートしている。清末さんは現在の「ナミベ港改修計画」の業務主任を務めている。事業のおもな内容は、3B岸壁の修復、コンテナヤードの舗装、冷凍・冷蔵用コンテナの保管施設の整備だ。

「構内の路面が未舗装に近い凸凹の状態では、貨物の積み降ろしに使う重機やトラックの移動がスムーズにできず、機械の傷みも早くなります。そこで、壊れてしまった施設は強固なものへと造り直して、荷役作業の効率アップと安全性の向上を図っています」

改修後の様子

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復旧された3B岸壁。2019年5月には最新の防舷材や係船柱が設置されて船が安全に接岸できるようになった。

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コンクリート舗装によって生まれ変わったコンテナヤード。荷役作業の効率向上のほか、作業の安全性も高まる。

昔の港の様子

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ナミベ港の建設は1958年。その後、約30年の内戦期間中はほとんど整備されなかった。写真は2005年の様子。

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3B岸壁。岸壁の損傷はいたるところに見られた。

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改修前はクレーン等の荷役機械や港内鉄道、道路などあらゆる施設の状況が劣悪だった。

住民の暮らしを守り経済を豊かに

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おもな輸出品は御影石で、EU諸国でインテリア材などに加工される。そのほか木材や鉄スクラップ、水産加工品などが輸出される。

港の機能が回復すれば、現代の海上貿易の主流である「国際海上コンテナ輸送(注)」の輪の中に入りやすくなり、諸外国との貿易量の増加が期待できる。荷役サイクル(船が接岸してコンテナをヤードに運ぶまでの所要時間)は、現在の13分11秒から改修後は10分35秒と約2割の短縮が見込まれている。

ナミベ港の内陸部には御影石など鉱物資源の豊富な地域が広がっている。多くはEU諸国に輸出されていて、今後さらに重要な物流拠点になると同国内で注目されている。

「また、この国は内戦時、全国各地に膨大な数の地雷が埋められたことにより、農地の拡大がいまだ難しく食料品の多くを輸入に頼っています。物流コストが高いと生活必需品の値段に反映されてしまうので、競争力のある港を持つことは、住民の暮らしを守るためにも不可欠です」と清末さんは話す。

2017年に就任したジョアン・ロウレンソ大統領は就任演説で「日本は戦略的パートナーとして関係を強化すべき優先国のひとつ」と明言した。日本の協力に対してナミベ港湾公社総裁は、「他の港に対する他国による支援と比べて、ナミベ港では高品質な復旧が進められている」と安全品質管理や工期を守る姿勢を高く評価しており、清末さんも「この事業がアンゴラの発展に貢献するだけでなく、日本との2国間協力の象徴になればうれしいです。実はナミベ港には内戦激化とともに操業を停止した桟橋があります。その桟橋から最後に出港した船が向かった先は日本だったと聞いています。長い時を経て同港と日本が結ばれたのは、きっと縁あってのことでしょう」と語った。

調査を行った2005年当時のナミベ港は、時が止まっていたかのように老朽化していた。それが今、日本の協力によって輝きを取り戻している。

(注)物流コストを抑えるために、世界的に規格化されたコンテナを使って戸口から戸口へ物資の輸送を行うこと。各港での積み下ろしが容易になって作業のスピードアップを図ることができる。

オリエンタルコンサルタンツグローバル(OCG) 清末文明(きよすえ・ふみあき)さん

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清末文明さん(奥右)

OCGは総合的なコンサルティング企業で、運輸交通分野でも数多くの実績を持つ。「供用中の港の改修工事のため、ナミベ港湾公社と港湾運営を受託している民間企業の両者を交えて、運営への影響や安全面に配慮した調整を毎週行いました。3A区画での日本の実績もあり、円滑に協力を得ることができています」。

アンゴラ

【画像】国名:アンゴラ共和国
首都:ルアンダ
通貨:クワンザ(KZ)
人口:3,077万人(2018年国連推定)
公用語:ポルトガル語(公用語)、その他ウンブンドゥ語など

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ナミベ

アフリカ南西部に位置し、西岸は大西洋に臨む。ナイジェリアに次いでアフリカ第2位の産油国だが、政府は石油依存型経済からの脱却に向けて産業の多角化を掲げる。