能力向上の成果を近隣諸国に伝える

海上の保安:監視・取り締まりや海難救助の能力向上を図る マレーシア

マラッカ・シンガポール海峡をはじめ、国際物流に重要な海路が数多く存在するASEAN地域では安全で安心な海上路の発展を目指し海上保安能力向上を支える人材の育成が進んでいる。

文:松井健太郎

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2019年2月~3月上旬に実施された、救助活動のための潜水訓練の様子。座学、プール訓練を経て、実際の海洋で学ぶ。

専門知識の共有

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訓練中、多目的船の甲板上で朝礼を行う職員たち。

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海上での犯罪捜査のための指紋採取など、鑑識の手法を学ぶ研修も実施されている。

マレーシア政府は2005年に「マレーシア海上法令執行庁(MMEA)」を設立し、それとともに海上保安機関職員としての初任教育を目的にトレーニングセンターも設けられた。JICAはここで能力向上支援を行う。2018年からの3年間では、潜水技術を伴う救助や証拠保全(指紋採取など)といった、より高度な技術の習得と指導員育成を目指した研修訓練が日々行われている。

JICAの長期専門家としてプロジェクトに携わる海上保安官の稲葉健人(いなば・たけひと)さんは、「現在MMEAでは、研修を終えたマレーシア人の職員が教官となって、第三国に対する能力向上支援を行っています」と現況を伝えてくれる。東南アジア諸国を招いた国際研修や訓練を通じて、周辺国の海上保安・海上法令執行機関の能力向上に協力するとともに人的ネットワークを構築するなど、ASEAN地域の連携強化に努めている。「マレーシアは海上交通路の要衝です。海上犯罪や災害は近年、大規模かつ複雑に発展しやすくなっています。海上保安における東南アジア地域の連携は日本にとっても重要です」と稲葉さんは語る。

経済成長が著しく、ODAによる支援を卒業しつつあるとされるマレーシア。MMEA設立前から続く日本の協力が「東南アジア連携」というかたちで実を結ぼうとしている。

マレーシア

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国名:マレーシア
首都:クアラルンプール