海上の保安:衛星データの活用で進化する海洋監視 南アフリカ

南アフリカ国内のデータを日本の技術で組み合わせて、新しい海洋監視システムを開発した普及促進事業。
広い海域の安全と環境保護に貢献する。

文:松井健太郎

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オイル流出の自動検出機能のテスト画面。中央のピンクに色づいた部分がオイル流出を示す。

企業の技術力とともに

ニーズをふまえて新たな技術を開発する

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合成開口レーダーの原理についてSAMSA職員の理解を深めるための講義も実施された。

南アフリカ海上保安庁(South African Maritime Safety Authority 以下SAMSA)は、これまで違法漁業や海洋への不法投棄に悩まされてきた。長大な沿岸の警備に衛星データを利用していたが、検知にうまく結びついていなかったのだ。そこでIHIジェットサービスは、SAMSAの船舶情報を認識する衛星と、南アフリカ宇宙機関が持つ画像データを用いた監視サービスを提案した。

このサービスの衛星画像の解析技術は高い評価を受け、違法漁業を行う船舶や不審船舶の発見だけでなく、船舶からオイルが流出した日時や範囲などの情報のリポート機能がSAMSAから要望された。現在新たに開発が進んでいる。

サービスの普及を目指して、システムのデモンストレーションとヒアリング、それをふまえた海洋監視技術やシステムの有効性の理解を得ながら事業は進められている。

現在、SAMSAによる海洋監視サービスの入札が進められており、南アフリカでの事業が成功すれば、周辺国に対しても監視システムの普及活動を展開する予定だ。システムが広く普及することで、アフリカ南部の海上の安全や環境保護への貢献が期待される。

海洋監視サービス「iOMS」

SAMSAの有する位置情報や船名が把握できる船舶自動識別装置(AIS)と、南アフリカ宇宙機関が有する昼夜・天候に関係なく海上を観測できる合成開口レーダー(SAR)の画像を重ね合わせて解析することで、より精度の高い情報が得られる独自の海洋監視サービス「iOMS」を提案した。

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衛星の取得データ

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データ統合と解析

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情報の提供

IHIジェットサービス 衛星情報サービス部 石関俊昭(いしぜき・としあき)さん/IHI 防衛事業連携統括部課長 渡辺剛(わたなべ・つよし)さん

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石関俊昭さん(右)、渡辺剛さん(左から2人目)

IHIは石川島播磨重工業から改名した総合重工業メーカー。IHIジェットサービスは、その関連会社の中でも宇宙機器について高い技術を持っている。

石関俊昭さんは「今回、衛星データを所有する南アフリカ宇宙機関の協力が必要になった際、JICA関係者が調整してくれて協力を得ることができました。さらに、JICA事務所が省庁へのアポイントメントを担ってくれたことも大きな助力となりました」と普及促進事業の意義を評価する。

南アフリカ共和国

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国名:南アフリカ共和国
首都:プレトリア