JICA海外協力隊がゆく Vol.8 ルワンダ

米作りが盛んなルワンダで日本の稲作の技術を伝える隊員を紹介します。

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農家の人たちと一緒に収穫作業をする藤橋さん(写真左)。

農家の人たちと一緒に米作りをしています!

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ルワンダ、首都:キガリ

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整然と等間隔に苗を植える正条植えを伝える。

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手押しの除草機を使って田んぼの雑草を取り除く。

東アフリカの国、ルワンダに来て1年9か月。稲作が盛んな東部のガツィボ郡で稲作農家に技術指導を行い、収穫向上に貢献することが私の仕事です。これまで農家の人たちと一緒に米作りに取り組んできました。

私が今、協力隊員としてルワンダにいるのは、大学時代の経験が大きく影響しています。東京農業大学国際食料情報学部では稲作を専攻。アフリカ農業に関する講義がおもしろく、その現場を見たいと強く思いました。大学の先生や先輩には海外協力隊出身者が多く、興味深い話をいろいろ聞くことができました。そこで、「アフリカ 稲作」の条件で協力隊員を募集している国を探して応募。ルワンダへの派遣となりました。

配属先はガツィボ郡の農業組合。当初、組合員に農業技術を伝えようと説明するのですが、言葉や思いだけではその必要性をわかってもらえませんでした。そこで、農家の水田を借りて実験圃場(じっけんほじょう)とし、稲の苗を縦と横の筋をそろえて植える正条植えとこまめな除草、肥料の播(ま)き方などの技術を実践しました。また、田植え前の元肥の量、稲の株間の距離など条件を変え、収量の差を見る比較実験も行っています。比較することで、こうした技術を使えば収穫量が増えたり、作業がしやすいことをわかってもらえると思っています。

収穫時期、「さあ、収穫量を比べるぞ」と作付けの比較実験をしていた水田に意気揚々と出かけたら、稲がすっかり刈り取られていて泣きそうになったこともありました。一方で、田植えの時期に農家の人から「きれいに田植えができたから見にきてよ」と声をかけられたので行ってみると、水田にはきっちりと正条植えされた稲。彼の誇らしげな顔を見たときは、ルワンダで活動してよかったと思いました。

ルワンダでは、こちらの意見や思いを一方的に伝えるだけではうまくいかないことを学びました。立場や価値観が違うからこそ、相手の立場になって考えることが大事だということにあらためて気づきました。これは協力隊に参加したからこそ得られた視点。任期終了後も途上国の農家と関わっていきたいので、この視点を忘れずに活動していきます。

JICA海外協力隊プロフィール

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藤橋光明さん

藤橋光明(ふじはし・みつあき)26歳
出身地:東京都 職種:食用作物・稲作栽培
任期:2017年10月~2019年9月

ルワンダ事務所からひとこと

ルワンダでは稲作が盛んですが、収量アップや品質改善のために多様なレベルでの稲作技術の紹介が期待されています。積極的に農家を訪れている藤橋さんはていねいに技術を伝えるとともに、日本では廃れてしまった技術もここでは応用できると、脱穀のための千歯扱き(せんばこき)の試作にも取り組み、農家の方々からの信頼を得て活動しています。

企画調整員(ボランティア事業)(注)

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菱田 靖さん

菱田 靖(ひしだ・おさむ)

(注)隊員の活動全般を支援する「ボランティア事業支援のプロ」。また相手国の要望を調査し要請開拓を行うなど、隊員活動全体の運営を行う。

+one information 千の丘が連なる国

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イラスト:さかがわ成美

アフリカと聞いて、みなさんはどんな風景を想像するでしょうか。きっと、真っすぐで平坦な道があり、その両側に荒野が広がり、それがずっと続いている、そんな景色を思い浮かべるのではないでしょうか。

ところがルワンダは違います。ルワンダは「千の丘の国」と呼ばれるようにいくつもの丘が連なっていて、逆に"THE アフリカ"の真っすぐで平坦な道はありません。バスで移動する際には丘を上ったり下ったりをくり返します。丘を下り、谷に沿った道を走るときにはいくつものカーブを曲がりますし、丘を上って、その稜線を走ることもあります。ルワンダの旅は、高低差とカーブを"楽しむ"旅でもあります。

そして、そんないくつもの丘があるルワンダでしか見られない風景があります。それは、ある開けた丘の頂上に立ったとき。目の前に広がるのは、幾重にも重なる丘と谷間に広がる広大な水田地帯。丘の連なりは遠くまで続き、息を吞むほどきれいで、いつまでも見続けることができます。雄大な自然を感じることができる私の大好きな風景です。ルワンダに来てもうすぐ2年になります。そこからの眺めは何度も目にしてきましたが、いまだに飽きることのない風景です。(藤橋光明)