特別レポート ルー大柴さんのパラオ訪問記

ロックアイランド群と南ラグーンを擁するパラオ。
観光地としても注目を集める同国を、エンターテイナーで環境問題に熱心に取り組むルー大柴さんが訪れた。長年にわたってパラオの産業振興や環境・気象変動といった課題の解決に向けて協力を行ってきたJICAの活動の一部を、ルーさんにレポートしてもらう。

編纂:編集部

島国パラオの環境問題をウォッチ!

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両手には巨大なヒトデ。元青年海外協力隊員の伊藤洋美さん(写真右)の案内でセンターを見学。

レポート1 温暖化は海でも始まっている

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パラオ

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パラオ国際サンゴ礁センター。サンゴ礁とその周辺海域の調査研究、海洋を主とした環境保全の教育・普及啓発などを行う。

2019年3月、美しい海とサンゴ礁に囲まれたパラオをビジット(訪問)しました。周りを海に囲まれたこの国は、アジア・大洋州地域におけるサンゴ礁研究の拠点となっていて、コロール島にはパラオ国際サンゴ礁センター(PICRC)があります。2001年に日本の無償資金協力で設立され、それ以降もJICAにより専門家やボランティアが派遣されてきました。

同センターは、ベリービューティフルプレイス!日本ではオニヒトデの被害がメニー(多い)ですが、パラオでの現状をお聞きすると「オニヒトデによる被害よりも、水温上昇による被害の方が深刻です。しかし、被害を受けやすいサンゴ礁とそうでないサンゴ礁があることもわかっていて、その違いや原因について研究しています」と、南米ベネズエラからの研究者が教えてくれました。

調査研究や環境保全の教育・普及啓発だけでなく、住民・観光客に向けた情報発信拠点ともなっている同センターには、元青年海外協力隊員の伊藤洋美さんが勤めていて、情報発信のためのパネルやグッズのデザインを行っていました。「日本が恋しくない?」という質問に「海外生活が長く慣れっこなんです」とほほ笑む伊藤さん。こういう人たちのおかげで、素晴らしい国際協力が成り立っているのを感じました。

レポート2 保全しながら水産業を発展させる

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90年モノとされるシャコガイの貝殻。

パラオでは水産業は観光業に次ぐ大きな産業で、同じく無償資金協力で整備したパラオ海洋養殖普及センター(PMCD)も訪れました。最近、全面改修されたセンターでは、シャコガイの養殖も行っていました。日本では鹿児島県や沖縄県あたりで食されているシャコガイが、パラオでも食用として古くから重宝されてきたそうです。観光客の増加もあって乱獲が進み、政府も天然モノの採取を禁止したため、養殖を発展させる必要がありました。このセンターでは、ベリービッグでサプライズなサイズの天然シャコガイの貝殻を見せてもらいました。ほかにも養殖産業を盛り上げるためには種苗生産の安定が必要不可欠のため、卵や稚貝を育てるための飼育水槽がズラリと並んでいました。「食用はおよそ3~4年、観賞用は1~2年で出荷できるサイズになりますが、プランクトン(エサ)を必要とするのは稚貝のときだけ。あとは、光合成をして成長します」と、海外漁業協力財団(OFCF)から派遣されている専門家の曽根重昭さんが教えてくれました。餌がいらないなんて、ワンダフル。リッチになれそうなビジネスですし、稚貝の安定生産・供給が実現すれば、養殖産業も元気になり、雇用の拡大にもつながりますね。

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全面改修が終わりオープニングを控えたセンターを訪問。水産専門員として派遣されている曽根重昭さん(写真右)。

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シャコガイセンターのパラオ人スタッフと。

レポート3 〝ゴミステバ〟の改善にチャレンジ

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廃棄物処分場の山に登り、パラオのごみ処理問題を垣間見た。

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空き瓶を使ったガラス工芸品作りにチャレンジ。

パラオは小さな国土であるため、大きなごみ処理場やリサイクル施設を造れないそうです。同じ島国の日本人が先頭に立って、〝ゴミステバ〟の改善を進めていました。

現地語でも〝ゴミステバ〟と呼ばれる廃棄処分場はまさにごみも積もればマウンテンな状態。リサイクルの必要性を目のあたりにしました。残飯や紙くずなどはコンポストでリサイクル、空き瓶に関しては、ガラス工芸品に。それから、ペットボトルや瓶、缶などの容器にデポジット(預かり金)を課すことでリサイクルを進めていました。日本の廃棄物管理の手法を伝えている現場も視察しましたが、入国者にも環境を守ることを宣言してもらう「パラオ・プレッジ(誓約)」など、パラオ独自の環境施策も素晴らしいと思いました。

パラオは美しい海と豊かな自然環境に恵まれた島でした。一方で、その美しさを維持するために、JICAもさまざまな協力をパラオのみなさんとトゥギャザーしながら進めている姿に感動しました。日本とパラオの〝とってもデリシャス〟な関係を見ることができました。

プロフィール

ルー大柴(ルー・おおしば)さん

エンターテイナー。外国語に堪能な父の影響もあり、また高校卒業後、欧米各地を放浪した経験から特技の英会話を生かした"ルー語"で一躍大人気に。TVや舞台で俳優として活躍するかたわら、2007年にNHK「みんなのうた」で「MOTTAINAI-もったいない-」を仁井山征弘さんと歌ったことを契機に、環境問題に関する講演も全国で多数行う。レポーターとして2010年には大地震に見舞われたハイチを、2011年には独立国家となったばかりの南スーダンを訪れた経験も持つ。

Message from ルー大柴

パラオの最大産業はサイトシーイング(観光)!自然環境を守ることが産業の維持にも不可欠です。チャイルドの頃からそれをフィール(感じる)することが重要で、サンゴ礁センターが校外学習を受け入れている活動はベリーナイス!ハート(心)に残っています。それから忘れていけないのは海外協力隊の(シニアも含めた)ヤングパワー。彼らがエブリデイこれでよいのかと悩みながら前に進もうと努力している姿をルック(見る)して、チア(応援)したくなりました。私も今は二人のグランチャ(孫)を持つおじいちゃん。グランチャのフューチャー(未来)にも豊かな自然やビューティフルなシー(海)を残していきたいな。