教えて!外務省 知っておきたい国際協力12)

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外務省ODA広報キャラクターODAマン©DLE

途上国支援で大きな役割を果たすNGO。
外務省"NGO担当大使"がNGOへの支援について語ります。

今月のテーマ NGO

Q1 途上国の開発で、なぜNGOは重要な存在なの?

A1 支援活動の担い手として重要性が高まっています。

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NGO・外務省定期協議会の全体会議(写真提供:外務省)。

NGO(Non-Governmental Organization)は、貧困・飢餓、紛争、環境破壊や災害など世界で起こっている多様な課題に、政府や国際機関とは異なる立場から、利益を目的とせずに取り組む市民団体です。国際的に活動するNGOもあれば、特定の国・地域で活動するNGOもあり、規模もさまざまですが、共通しているのは、途上国支援の現場に入り、その支援の担い手となっていることです。まさに"顔が見える協力"を行っている人たちです。

日本は2015年2月に閣議決定された「開発協力大綱」で、ODAの有効性を高めるためにNGOとの連携を戦略的に強化することを決めました。NGOは、1)支援の現場で自発的に活動していて、現地のニーズを的確に把握し、きめ細かく対応できる、2)寄附や活動などを通し国民が直接、途上国支援に参画できる、3)NGOごとに教育、医療、ITなどの得意分野,専門分野がある、という強みがあり、オールジャパンでの外交を展開する観点からも、途上国支援を行うNGOの重要性は増しています。

Q2 外務省はNGOにどんな支援を行っているの?

A2 資金協力、組織力強化や人材育成の支援、対話を行っています。

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NGO相談員を受託しているアイキャン(注2)による相談対応の様子(2019年2月、写真提供:アイキャン)。

外務省はNGOに対し資金協力、組織力強化や人材育成、対話を通じてニーズに合った支援をしています。

資金協力には複数の枠組みがあります。日本NGO連携無償資金協力は、NGOが途上国で経済社会開発事業を行うための資金を提供します。紛争や自然災害による難民や被災者への緊急人道支援活動には、ジャパン・プラットフォーム(JPF)(注1)を通じて資金提供を行っています。さらにNGOが事業を企画するための事前調査や事後評価活動にはNGO事業補助金が活用でき、目的に応じた資金的な支援の制度が整っています。

NGOの組織力強化や人材育成の支援を行っているのが、NGO活動環境整備支援事業です。この事業では、NGOや国際協力全般に関する相談に対応するNGO相談員制度、日本のNGOにインターンとして若手人材を派遣するNGOインターン・プログラム、日本のNGOの中堅職員を国内外のNGOなどへ派遣するNGOスタディ・プログラム、NGOの専門性や事業実施能力の向上を目指す研究会を企画・運営するNGO研究会、の4事業が行われています。

またNGOと外務省の連携を強化し、対話を促進するための場であるNGO・外務省定期協議会を定期的に開催しています。ODAのあり方、NGO支援や連携策、NGOから政府への要望や活動内容の改善案などを協議しています。

(注1)迅速で効果的な緊急人道支援を可能にするため、日本のNGO、経済界、政府が協力する枠組み。
(注2)認定特定非営利活動法人アイキャン

Q3 今後、日本のNGOに期待することは?

A3 財政基盤強化や多様なセクターとの連携などにより、国民を巻き込むちからが強まることを期待します。

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外務省は、途上国支援の担い手であるNGOへの支援にちからを入れている!©DLE

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日本NGO連携無償資金協力「ネパール国学校防災能力強化事業での避難訓練」(写真提供:シャンティ国際ボランティア会(注6)。

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JPFを通じ、ピースウィンズ・ジャパンが支援した南スーダンの小学校衛生施設建設(写真提供:在南スーダン日本国大使館)。

途上国開発・支援の現場では、日本国内外のNGOや途上国の人たち自身が運営するNGO、さらにソーシャルビジネスやSDGsビジネスに関わる企業など、プレイヤーが増えています。

そうしたなか、日本のNGOが活動の場を広げていくために必要なのが、財政基盤の強化です。そこで外務省は、日本NGO連携無償資金協力事業の一般管理費、つまり同事業の実施に必要な間接費として認められている費用を事業費の5パーセントから最大15パーセントまで引き上げました。今後は政府の支援だけではなく、個人や企業から資金を集めることで財政運営が強化され、国内外でいっそう存在感を高めていくことが期待されます。

国際機関や企業との連携も資金面での基盤拡大につながり、NGOの信頼性を高めるうえでも期待している取り組みです。2018年、国連難民高等弁務官事務所と実施パートナー契約を締結したピースウィンズ・ジャパン(注3)が水・衛生分野で、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(注4)が児童の保護で、難民を助ける会(注5)が教育で、国際機関の潤沢な予算で活動を実施しました。企業との連携では、NGOが活動の支援を得られるだけでなく、企業もNGOを通じたCSR(企業の社会的責任)プログラムを実施することで評価を高めることができ、両者にメリットがあります。

今後、日本のNGOが政府や国際機関、企業などとの連携をより拡大し、国民を巻き込むちからが強まることで、途上国支援の重要な担い手としてさらに活躍することを期待しています。

(注3)認定特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン
(注4)公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
(注5)認定特定非営利活動法人難民を助ける会
(注6)公益社団法人シャンティ国際ボランティア会

在外公館レポート from  Zambia(ザンビア)

生涯を通じた女性の健康づくりプロジェクト

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ザンビア 首都:ルサカ

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SMAG(左)の付き添いのもと、マタニティハウスで出産した女性(写真提供:ジョイセフ)。

ザンビアの首都ルサカから北に車で4時間ほどに位置するコッパーベルト州の農村地域では、保健施設までの距離が遠く、産前検診や分娩を含む母子保健サービスへのアクセスが困難な状況にあります。また、出産のリスクに関する知識不足も加わり、自宅分娩を選択する妊産婦も多く、合併症が起きても保健施設や病院までの緊急搬送が間に合わず、出血多量や感染症により妊産婦と新生児が命を落とすケースが多々見受けられます。

これらの課題に対処するため、国際協力NGOであるジョイセフ(注7)は日本NGO連携無償資金協力で、生涯を通した女性の健康づくりプロジェクトを実施しています。このプロジェクトでは、既存のクリニックに母子保健棟、マタニティハウスおよびユースセンターなどが併設されたワンストップサービスサイトを建設し、幅広い年齢層の女性に対応した包括的な保健サービスを提供しています。また、地域のボランティアからなる母子保健推進員(SMAG(注8))と、若者と同世代の相談役となるピア・エデュケーターを養成することにより、地域レベルでの情報と知識の普及も促しています。

ワンストップサービスサイトで出産したシーラさんは「24時間、助産師さんが対応してくれるので安心して出産できました」と述べています。また、ジョイセフ駐在員の後藤久美子さんは「保健スタッフやSMAG、地域の保健委員会が主体となり、施設の管理や啓発教育活動が行われています。赤ちゃんとお母さんの命を自分たちの手で守るという住民の思いが、プロジェクトの自立発展につながっています」と述べています。ジョイセフの活動により、地域の自助努力に根ざした、生涯を通じた女性の健康促進が期待されます。

(注7)公益財団法人ジョイセフ
(注8)SMAG:Safe Motherhood Action Group

(在ザンビア日本国大使館)

答えてくれた人

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紀谷昌彦さん

外務省 国際協力局参事官、アフリカ開発会議(TICAD)担当大使、NGO担当大使 紀谷昌彦(きや・まさひこ)さん

1987年外務省入省。開発、平和構築、安全保障および国連などの外交政策に従事。防衛省(出向)、在アメリカ合衆国日本国大使館、在バングラデシュ日本国大使館などにて勤務。2015年3月から駐南スーダン大使を務め、2017年9月から現職。NGO担当大使は2018年9月から。