大きな成果を求めて新しいチャレンジを

A(アクション=フィードバック)
P(プラン=事前段階)

技術協力の成果を拡大して森林保全を進めるためには、新たな資金源が必要。
国際的資金枠組みから、業務を受託して、その資金でプロジェクトを行う-JICAは、新たな取り組みを行う仕組みを構築した。

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薪炭材(しんたんざい)を運ぶトラック。コンゴ民では木材が主要なエネルギー源の一つとなっていて、受託業務では森林減少抑制などを行う。

森林を保全し地域住民の生計を向上

「国家森林モニタリングシステム運用・REDD+パイロットプロジェクト」と一体的に実施されているJICAの受託業務。国際的な資金の枠組みであるCAFI(注1)から受けた資金で行われる。クウィル州で5,000ヘクタールの植林を行い、森を造りながら農業をしていくアグロフォレストリーの規模を広げることで、22万トンのCO2の炭素の蓄積、40万トンの排出削減、地域住民の生計10%向上を目指している。

(注1)ノルウェーを議長国にEU、フランス、ドイツ、オランダ、イギリス、韓国、国連開発計画(UNDP)などが出資する国際的資金枠組み。事務局はUNDPが務める。

国際的資金枠組みから委託を受けて実施

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湿地帯での木々の調査の様子。

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コンゴ民の2つのプロジェクトのコンサルタントは「日本森林技術協会」(JAFTA)が務める。調達部が公示を行い、選定委員会が提出された技術提案書の内容を評価する。

「プロジェクトが生まれるまで 築いた信頼が未来へつながる」(注2)で紹介したコンゴ民のプロジェクトと相互に関連しつつ、JICAが実施するプロジェクトがもう一つある。これは、JICAが中部アフリカ森林イニシアティブ(CAFI)から委託を受けて、約4億円の受託資金をもとにクウィル州で5000ヘクタールの植林を行い、アグロフォレストリーを普及させるもの。「プロジェクトが生まれるまで 築いた信頼が未来へつながる」(注2)のプロジェクトで行う同じクウィル州でのガイドライン策定や人材育成等と一体的に実施することによって、両プロジェクトによる大きな開発効果が円滑に発揮されることが期待されている。

CAFIのプロジェクトを受託するに先立ち、JICAは、技術協力プロジェクトとの相乗効果を訴える提案書を提出した。提案書は地球環境部が中心となって作成したが、受託業務の前例は限られており、実施段階での法的枠組みや契約、支払い等の実務面は、実はこの時点ではまだ白紙の状態だった。CAFIからの受託決定後、受託に向けた新たな仕組み作りが、関係部署それぞれの専門的な知見を生かしながら、行われた。たとえば、総務部が受託者としてのJICAの仕事に法律的な問題がないかをチェックし、コンサルタント契約については調達部が主体的に動きながら、企画部や財務部とともに骨組みとなる仕組みを作った。

「異なる専門性を有する部署の多くの職員が関与しましたが、地球環境を守るとともに、地域住民の生活の向上に貢献するという一つの目的を共有していたので、この新しい試みを『前向きに進めよう』とみんなが考えていたと思います」と調達部の安田智幸さんは話す。

CAFIからの受託業務を実現し、コンゴ民の森林保全と地域住民の生計向上を実現するには、さまざまな仕事が必要であり、地球環境部等がプロジェクトを推進するとともに、調達部等がプロジェクトの実施に必要な実務を担っている。新たな業務を実施するには通常のプロジェクト以上に多種の検討が必要となるが、多様なパートナーと協力して開発効果を最大化していくために、JICAは今後も新たなチャレンジに取り組んでいく。

地域住民の生活の向上に貢献する

新たな取り組みを推進し、実現する

JICAでは、他の組織から業務を受託した事例は限られており、かつ資金規模も400万ドル(4億円強)とこれまでの事例よりも大きかったこともあって、新たな検討が必要となった。

「今回のCAFIからの受託に関する手続きは地球環境部が検討しましたが、もっと広い受託業務全体の制度は企画部が整理しています」

JICA全体の事業方針の作成や各種マニュアル作成等を担当し、プロジェクトの適切・円滑な実施を支援するのが、企画部の役割だ。JICA全体を見る部署だからこそ持つ、さまざまな事例や制度が作られた背景・理由などの知見を活用して解決にあたった。

企画部 業務企画第一課 島田和輝(しまだ・かずき)さん

現在はJICAスリランカ事務所に所属。
「時代の流れもくみ取って制度を整備します」

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島田和輝さん

新たな事業の予算・資金管理は、柔軟な頭と鉄壁の態勢で

CAFI資金受け入れのためドル建て外貨預金口座を開設し、CAFI側のルールと照らし合わせながら資金の受け入れや執行の会計処理について地球環境部と細かく話し合い、CAFI受託業務の資金管理方法を確立した。

「事業の表舞台に立つことはありませんが、"組織を巡る血液"たるお金をきっちり管理して回すことが私たちの重要な務めです」

財務部は、事業運営に必要な資金を獲得するための業務、予算を適切に管理し執行する道筋をつくる業務、支払い業務などを担当。「支払いの数は年間で数万件に上りますが、三重四重にさまざまな角度からのチェックを行い、正確を期すことが重要です」。

財務部 財務第二課 村山博司(むらやま・ひろし)さん、財務部 会計課 麻生 留美子(あそう・るみこ)さん

「予算はプロジェクトを動かす"血液"です」

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麻生 留美子さん

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村山博司さん

一つひとつのプロジェクトに合ったコンサルタント契約を

通常の技術協力プロジェクトでは、JICAが業務を発注するコンサルタントとの間で定型の契約書を用意しているが、今回はJICA自身がCAFIから事業実施を受託し、その下でコンサルタントに業務を発注するため、契約書をどのような形にして、どんな内容を盛り込むかを関係部署と決めていった。「調達部がつなぎ役となり、地球環境部、財務部と調達部の3者で論点を洗い出しました。たとえば、事業に従事する方々への支払いは円なのかドルなのか、外部資金の精算報告のあり方や、JICAの決算への影響などです」。

それに加えて、契約を締結したあとも関係者に支払いが終わるまで管理していくのも大事な仕事だ。「コンサルタントが提供する業務の内容については地球環境部が責任を持ち、調達部は契約上の双方の義務履行の観点から管理を行います。CAFIの場合は、通常と異なり3年間で毎年新規契約を結ぶ形態なので、主管部の地球環境部と連携してトラブルの防止に努めています」。

調達部 契約第一課 安田智幸(やすだ・ともゆき)さん、槇田容子(まきた・ようこ)さん

「契約は最初が肝心です」

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槇田容子さん

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安田智幸さん

法律面からトラブルを未然に防ぐ

「受託業務はあまり前例のない案件ということもあり、早い段階で地球環境部から相談がありました。案件が『独立行政法人国際協力機構法(機構法)』に合致しているかどうかの判断を行い、CAFI側から届いた契約書案の内容の確認に力を入れました」

JICAの仕事は機構法の中で定められており、法務課は機構法やJICA内で決められたルールに照らし合わせて仕事が進められていることを確認する。

そのほかにも法務課は、著作権など知的財産権をはじめとする多くの法律に関する他部署からの相談に応じている。必要に応じて、顧問弁護士と連携して解決にあたる。「プロジェクトが走り出したあとは、トラブルが起こらないかぎり私たちの出番はありません。"便りがないのは元気な証拠"です」。

総務部 法務課 大久保 昌光(おおくぼ・あきみつ)さん、増井 恵(ますい・めぐみ)さん

「もしもの法的トラブルはスピード解決をめざします」

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増井 恵さん

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大久保 昌光さん