自然災害にともに立ち向かう

途上国で発生した災害に対してJICAは、緊急時の迅速な協力はもちろん、復興とその先の防災までを見据えた取り組みを行っている。
災害に強い社会づくりを目指して途上国の発展を後押しする。

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取り組みにより防災への事前投資・対応が増えることで、被害の規模は小さくなり、それぞれの対応期間も短くなる(サークルが小さくなる)。また、国が発展を続けることで、社会基盤の質も高まっていく(矢印が太くなる)。

次の災害に備えた、より災害に強い社会を構築していく

日本は地震や津波、台風などの自然災害が多い。2019年9月と10月に上陸した台風は、広範囲にわたって大きな被害をもたらした。自然災害を100パーセント防止することはできないが、それでも日本は大規模な災害に備えてインフラ整備や防災教育、啓発活動などに力を入れて立ち上がってきた。

一方、経済や社会基盤がぜい弱な途上国は、いつ起こるかわからない災害に多くの予算を割くことが難しく、被害も甚大なものになりやすい。なかでも水災害は同じ地域でくり返し起こる傾向があり、その都度、貴い人命と経済発展の機会が奪われていくと、国は災害と貧困という負の連鎖から抜け出せなくなってしまう。そのようななかでJICAは、日本が培ってきた経験と教訓を生かしてシームレスな協力を行っている。日々訓練を積んだ国際緊急援助隊(JDR)が被災地に赴いて多くの人命を救う一方で、その国が必要とする再建策を練り上げて、次の災害に備えた復興、抑止、事前準備に取りかかる。こうした災害に対するサイクルマネジメントは、災害を経るごとに強くなる社会づくりを進めることにもつながる。これはSDGsの持続可能な開発目標にも合致し、各地の災害対応で成果を上げている。

毎年11月5日は世界142か国によって定められた「世界津波の日」だ。今号では水災害に対するJICAのシームレスな取り組みを見ていこう。

災害サイクルマネジメント"より良い復興"を(Build Back Better)

シームレスな取り組みを進める

JICAは「災害発生を契機として、物理的なインフラの復旧や生活水準、経済、産業の復興、そして災害サイクルマネジメントによる地域の環境と文化の復旧を通じてより強靭な国家と社会を造る」という"より良い復興(Build Back Better)"の考え方を提唱している。

途上国で災害が起こった際は、災害サイクルマネジメントを基軸に、応急対応、復興・復旧、抑止・減災、事前準備の四つを踏まえた"シームレス(切れ目のない)"な取り組みを実施している。

応急対応

救援要請に対する国際緊急援助隊(JDR)の速やかな派遣、緊急物資の供与、緊急の資金援助の実施など。

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復興・復旧

災害・被災状況の分析や、復興・復旧計画の作成、建築物や施設の復旧、住民の生計手段の回復など。

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抑止・減災

ハザードマップやリスクマップの作成、防災施設の建設や災害に対する強靭なインフラ整備、防災計画や土地利用計画の策定、防災教育の実施など。

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事前準備

緊急対応チームの訓練、援助物資や資機材の検討、早期警報システム、応急対応/避難計画の策定、住民の防災避難訓練、災害情報の収集など。

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国際緊急援助隊(JDR=Japan Disaster Relief Team)

海外の大規模な災害に対応する日本の国際緊急援助活動の開始は1979年。現在、国際緊急援助隊(通称、JDR)には五つのチームがあり、災害の種類や被災地の要請に応じて、チーム単独で、あるいは複数のチームを組み合わせて派遣している。JDRの事務局機能はJICA国際緊急援助隊事務局が担っている。

国際緊急援助隊

  • 救助チーム(捜索救助)
  • 医療チーム(災害医療)
  • 感染症対策チーム(疫学、検査診断、診療、感染制御、公衆衛生対応、ロジスティクス)
  • 専門家チーム(災害応急対策、災害復旧)
  • 自衛隊部隊(輸送、防疫、医療)