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- 栄養改善 食の不均衡に、みんなで挑む mundi 2020年1月号
- さまざまな民間連携・市民参加の取り組み ベトナムで初となる「栄養士」の誕生に貢献 ベトナム
保健
JICAでは、民間企業や団体、市民らと連携しながら多様なアプローチで栄養改善の課題に取り組んでいる。
・案件名:
栄養士制度普及促進事業(2014年4月~2016年6月)
・提案企業・団体:
味の素(東京都)
ベトナム初となるハノイ医科大学の4年制栄養士養成コースの卒業生。
近年、急激な経済成長を遂げているベトナム。国が豊かになりつつある一方で肥満などの過栄養、栄養バランス不均衡の問題が表れ始めている。「しかし、ベトナムには栄養の専門家である栄養士が存在せず、正しい栄養知識を国民に普及させる環境が整備されていませんでした」と語るのは、当時味の素社のCSR(注)部に所属していた栗脇啓さん。同社研究所はこの問題に着目し、2011年から「ベトナム栄養制度創設プロジェクト(VINEP)」をベトナム国立栄養研究所とともにスタート。それにともなう最初の成果として2013年9月に、ベトナム初となる4年制栄養士養成コースがハノイ医科大学で開講した。日本栄養士会、十文字学園女子大学、神奈川県立保健福祉大学が主体となり、ベトナムで栄養の専門家を育成した。
2014年からはJICAとともにさらなる発展を目指し、栄養士コースで学ぶ学生を日本に招いて栄養学研修を実施した。また現地の大学関係者や病院、政府関係者らを招いた日本での栄養関連現場の視察も行った。「栄養士が活躍する現場を直接見てもらい、学んだことをベトナムで生かしてもらうことが重要だと考えました」。ベトナム国内では、栄養管理や政策の重要性を伝える「栄養シンポジウム」を開催し、国民への認知にも務めた。こうした働きかけを続けた結果、2015年に栄養士が公務員の職業として法的に認定されるなど栄養士育成の制度の基盤ができた。
現在も公益財団法人味の素ファンデーションを通じて活動は続いている。栄養士を養成する大学は9校にまで増え、今後はカリキュラムの質の向上も目指しながら拡大していく予定だ。数を増やしていくだけでなく、社会に効果的な栄養士の育成を目指す。
ベトナム
(注)corporate social responsibilityの略。企業の社会的責任。
ベトナム国立栄養研究所内に掲げられているVINEPのプレート。
ハノイ医科大在学中の第1期生が来日し参加した研修風景。
味の素ファンデーション 栗脇 啓(くりわき・けい)さん
本事業は当初、味の素社のイノベーション研究所が担当していたが、2016年に公益財団法人味の素ファンデーションに移管。現在は公益事業として推進している。「こつこつとしかも戦略的に続けることなくして制度づくりはできません。とくに人づくりの制度は、健康な社会を持続的につくるための基盤となります」。
栗脇 啓さん
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