さまざまな民間連携・市民参加の取り組み

妊娠時から母子の栄養改善を目指す カンボジア

保健

JICAでは、民間企業や団体、市民らと連携しながら多様なアプローチで栄養改善の課題に取り組んでいる。

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離乳食教室の様子。各郡レベルでの自治体予算を獲得して、自立的に離乳食教室を運営・実施していこうという動きがみられる。

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カンボジア

カンボジア国内のなかでもプレアビヒア州は、子どもの低体重児率が30.7パーセント、発育阻害が44.3パーセントと、子どもの栄養状態が著しく劣悪な地域だ。自分の子どもが低体重児であるという認識がない親が多く、離乳食に関する知識も乏しいため白粥しか与えていないなど、子どもたちが十分な栄養をとれていない現状が続いている。そこで、子どもの成長に最も大切とされている、母親の胎内に命が宿ってから2歳の誕生日を迎える1000日間を対象にした栄養改善の活動が始まっている。

JICAとともに事業を行う「シェア=国際保健協力市民の会」(以下、シェア)は、カンボジアで過去10年にわたって、子どもの栄養改善の解決に向けた活動を実施してきた。その知見を生かして、カンボジアの保健センター、保健ボランティア(注)らとともに現地コミュニティでの乳幼児健診を実施。また、地方行政組織の一部である女性子ども委員会や前述の保健ボランティアとは、適切な栄養に関する啓発活動と離乳食教室の共同開催や、州内でとれる食材を使った離乳食レシピの開発などを行っている。「離乳食の概念すらない母親が多くいるため適切な離乳食を作れず、子どもが食事をいやがってしまうという問題がありました。だから離乳食教室で正しい知識を持ってもらうことが必要なんです」と、シェアの清モーガン三恵子さんは語る。

さらに、活動を持続的に行ううえで重要となる予算の獲得に向けて、女性子ども委員会を対象とした自治体予算の作成・運用に関するワークショップも開催。地域の中から自発的な動きが生まれ、活動していた全村において離乳食教室を実施する自治体予算の獲得につなげることができた。今後も州レベルから各地域まで連携を図りながら、子どもと母親の笑顔のために活動を続けていく。

(注)保健省に規定されている保健に関わるボランティア。各村2名が選ばれ、今事業では乳幼児健診時のサポートを行っている。

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保健センターのスタッフと保健ボランティアが実施する乳幼児健診の様子。

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乳幼児健診を直接担当する保健センタースタッフやボランティアへの研修風景。

シェア=国際保健協力市民の会 清 モーガン 三恵子(せい・モーガン・みえこ)さん

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清 モーガン 三恵子さん

シェア=国際保健協力市民の会は、1983年に結成された国際保健NGO(民間団体)。今回の事業では、プロジェクト形成期から州保健局を巻きこむなど、いくつかのチャレンジをしながら実施している。「シェアが離れたあとも取り組みが持続し、影響と効果が広がっていくことを期待しています」。