パワーあふれる若者たち
中東地域は若者が多い。
若者の力による将来の発展に期待がかかるが、教育水準の向上、産業の多角化、就業機会の拡充が必要だ。
JICAはさまざまな取り組みを通じて、新しい世代の活躍を後押ししている。
文:光石達哉 写真:阿部雄介
ヨルダンは天然資源が少なく、周辺国の政情不安や難民受け入れの影響で経済的に厳しい状況に置かれている。さらに人口の70パーセント以上を29歳以下の若年層が占めるが、この世代の失業率は世界平均の2倍以上といわれている。
JICA専門家の笠井千賀子さんは、ヨルダンの社会的な風潮も離職率が高い要因であると指摘する。
「ヨルダンの若者は、両親に将来の学部や仕事を決められて、その通りに生きるのが当たり前と考えています。しかし親の言う通りに就職しても、自分の好きな仕事じゃないから結局辞めてしまうという人も多いようです」
こうした状況を変えるため、JICAは若者と向き合って話を聞くキャリアカウンセラーを育成するプロジェクトを2017年に開始し、日本の国家資格であるキャリアコンサルタント資格で採用されている「キャリア形成の6ステップ」を指導。基本となるのが、1番目の自己理解だ。「キャリアカウンセラーと話しながら、自分はどんな仕事に興味があるのかを理解するのが最初のステップです」と笠井さんは言う。
アンマン第一雇用事務所のキャリアカウンセラー、サミーラ・ザバーディさんは、「以前は求職者にこの仕事に就きなさいと一方的に言うだけでしたが、キャリアカウンセラーとなって自分が間違ったやり方をしていたことに気づきました。今は求職者が話をしやすい環境をつくることを心掛けています」と意識の変化を語る。
さらに、プロジェクトでは合同会社説明会や企業内研修などさまざまな活動も企画。アンマン郊外のペトラ大学では2019年、約7200人の学生のうち約2200人がこれらの活動に参加するなど、自分のキャリアと向き合う若者が着実に増えてきている。
「就職した卒業生に在校生が相談できるネットワークづくりにも取り組んでいます。卒業生も母校に貢献する活動を増やしたいと意欲を見せてくれています」
「キャリアカウンセリングでは学生や求職者を笑顔で迎え、辛抱強く話を聞くように心がけています。私自身も明るい性格に変わりました」