人材育成

【職業訓練】アパレル産業の競争力を高める パキスタン

産業を発展させていくためには、世界的な技術水準やニーズにかなうもの作りを行うことが必要だ。
アパレル産業の競争力向上を目指すパキスタンで、職業訓練所での能力強化の取り組みが行われている。

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教員にデザイン画の表現技法を指導中。授業はいつも笑顔にあふれている。

世界で競争できる洋服作りを後押し

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首都:イスラマバード

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複雑なミシンの使い方も実技を通じてていねいに伝える。

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パキスタンの伝統服には見られない立体的なパターンメイキングを指導。

世界有数の綿花の生産地であるパキスタンは、繊維産業がGDPの約1割、総輸出額の約5割を占めている。さらに製造業従事者のうち約4割を雇用しており、最も重要な産業のひとつだ。だが、その中でも付加価値の高いアパレル分野(服の製造業および流通業)は、高度な技術を持った人材を育成できる環境が長く整わなかった。

そこでJICAは、アジア共同設計コンサルタントに事業を委託し、アパレル産業の競争力の向上と輸出促進を目的として、職業訓練所の支援を2016年より行っている。

対象となるのは、ラホール市にあるパキスタン・ニットウェア研修所(PKTI)、パキスタン既製服技術研修所とファイサラバード市にある女性専用研修所(FETI)の3か所。「アパレル企画・デザイン(洋服についての知識やファッションデザイン画の技術)」「パターンメイキング(洋服の型や立体裁断)」「縫製工場の生産管理・品質管理」の専門家たちが、訓練内容の見直しと教員への技術指導、指導を受けた教員によるモデルコースの開講支援に取り組んでいる。「最初の頃、先生たちは基本的なアパレル用語も初めて耳にするような状態でしたが、授業を通じて技術や知識を身につけ、今では学びの成果を披露するためのファッションショーや展示会などの企画を自発的に提案するほどやる気に満ちています。教える側も楽しく、やりがいがあります」と、アパレル企画・デザインを担当する専門家の鄭貞子さんはほほ笑む。ほかにも指導内容に合わせて、より複雑な縫製作業を行えるミシンやアパレルCAD(注)も導入された。

こうした支援に基づいて訓練を受けたFETIの第1回修了生のうち約10名が地元の工場に就職することができたという。アパレル産業の発展だけでなく女性の雇用促進にもつながっている。

(注)洋服のパターン作成をはじめ、服作りで使用するコンピュターシステムのこと。

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PKTIでの授業の様子。専門家から学んだことを学生たちに伝える。

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FETIに通う女性の学生たち。女性が働く機会も増やしていく。

アジア共同設計コンサルタント 鄭 貞子(てい・さだこ)さん

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鄭 貞子さん

今、職業訓練所の先生たちが中心となって企画しているファッションショーには、学生にも参加してもらう予定です。初めての開催ですが一回きりで終わらず、毎年続けていくなど次につなげていきたいですね。