人材育成

【ジェンダー】学びながら養う生きる力 パキスタン

さまざまな理由で基礎教育を受けられず、読み書き、計算ができない子どもや大人がパキスタンには多くいる。
なかでも女児や女性の割合が多く、この状況を変えるための学びの場が各地で増えている。

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教える先生も、教えられる児童や生徒も同じ地域に住む場合が多い。

読み書きは生きるために必要な最低限の手段

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首都:イスラマバード

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ノンフォーマル学校の先生は、働く女性のシンボルとして憧れの存在だ。

パキスタンの15歳以上の識字率は、国民全体の60パーセントで、女性に限定すると48パーセントと低い水準にある。さらに農村部の女性となると20パーセント程度に下がってしまう。このように多くの人が学ぶ機会を得られない背景には、学校と家との距離が離れている地理的な理由、家庭の貧困や女性に教育は不要という価値観、学校教育のふぞろいな質などの問題がある。読み書きができないと、自ら触れる情報が限定されてしまうため新たな格差を生む要因にもなる。教育を受ける権利は誰にでもあり、人間らしい生活を送るためにも基礎教育はなくてはならない。そこで近年注目されているのが、学校外で学習できる場を提供する「ノンフォーマル教育」だ。

JICAは、パキスタン政府と協力しながらノンフォーマル教育を推進する仕組みづくりをはじめ、カリキュラムや教材の開発、教員の研修を通じた教育の質向上に対する支援を行ってきた。参加者には女子児童や女性が多く、16歳以上を対象にした成人識字教室では女性が8割近くを占める。読み書きに加え、収入向上につながる畜産や洋裁、生活の質向上につながる保健や栄養を学べる教材を使った教室も各地で開かれている。「ここでの学びは、よりよい生活への過程でしかありません。卒業したあと自分で生きる道を切り開く力もつけてもらいたいです。また、ノンフォーマル教育というコミュニティでの学びの場に地域の男性も巻き込むことで、彼らの意識も変わっていきます」と、プロジェクトを総括していたJICA専門家の大橋知穂さんは語る。

取り組みの結果、ノンフォーマル教育が国の政策に取り入れられ、政府公認の卒業資格を取得できるようになるなど、政府もノンフォーマル教育を通じた「学ぶ権利」の行使を後押ししている。今後も学ぶ喜びが人々に生きる力を与えていく。

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学校に通えてとってもうれしい!

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技術訓練の試験に臨む女性。学んだ読み書きで受験の申し込みをする。

識字オルタナティブ教育専門家、JICA専門家 大橋知穂(おおはし・ちほ)さん

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大橋知穂さん

文字が読めないことで、自分は何もできない、誰かに頼らないと生きていけないと思っている方が多いのですが、ノンフォーマル教育に通う約9割の方が、自分に自信がついたとアンケートで回答していてうれしく感じています。