新たな技術が貢献 トイレ環境の改善が人々の暮らしを救う ケニア

ケニアでは劣悪な排泄環境が人々の生活に大きく影響している。
この問題の解決に向けてJICAはLIXILと連携し、その土地や環境に適したトイレの普及・衛生向上に関する実証実験を行ってきた。

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ケニアの孤児院に新設されたトイレの使い方や機能を紹介するLIXILのプロジェクトメンバー。

これからも私たちは世界の衛生課題の解決へ向けて活動していきます。

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首都:ナイロビ

ケニアでは人口の約半数近くの人が、いまだに劣悪な環境で排泄を行っている。ナイロビなど都市部の水洗トイレの普及率は約50パーセントだが、都市から外れた地域や農村部では穴があるだけの伝統的な汲み取り式トイレの使用や、屋外で排泄する人も多い。こうした排泄環境は地下水の汚染や衛生環境の悪化につながる懸念がある。利用可能な水源が少なく水道の設備が整っていないケニアでは、水は貴重な資源であり、水資源の保全も課題になっている。

そこでJICAは日本の水回りと住宅建材メーカーのLIXILと連携して、新たなトイレシステムの普及に関する実証実験事業を行った。事業の確立を目指すこのプロジェクトでは、LIXILが開発した二つのトイレシステムを用いて別々に行われた。一つ目は2014年に始めた事業で、「マイクロフラッシュトイレシステム」という従来型のトイレに比べて洗浄水量が6分の1程度ですむトイレシステムが使用された。2015年に始めた二つ目の事業では「グリーントイレシステム」という水を流す代わりにおがくずを使い、排泄物を発酵させて肥料にできる循環型無水トイレシステムが用いられた。実証実験では、それぞれの設置方法や使い方のデモンストレーションなどをケニア都市部のスラムと都市周辺部の町を中心に実施。現地の声を集め、その土地や環境に合うシステムを探った。

事業終了後もLIXILはアフリカでのトイレ普及事業を進め、2019年10月にJICAとの業務連携・協力に関する覚書を交わした。「新型コロナウイルス感染症(COVID- 19)の甚大な被害により、各国でSDGsのゴール6『安全な水とトイレを世界中に』に関する取り組みが注目されていますが、両者の強みを生かしながらSDGsの達成に向けて現地調査や需要の創出を加速させていきます」とLIXILの坂田優さんは今後の展望を語った。

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事業終了後は、ケニアのカロベイエイ難民居住地などでも普及活動を行った。

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覚書を交わした際の様子。JICA理事長・北岡伸一(左)と、LIXILグループ代表 執行役社長 兼 CEOの瀬戸欣哉さん。

トイレ普及事業の先駆者 LIXIL

LIXIL SATO事業部 Head of Market Expansion 坂田 優(さかた・すぐる)さん

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坂田 優さん。「これからも私たちは世界の衛生課題の解決へ向けて活動していきます」

「パートナーシップを通じて、2025年までに1億人の人々の衛生環境を改善し、生活の質向上につなげる」という目標を設定している。また途上国でのトイレの普及に向けてJICAとも事業を展開。これまでに同社が開発した簡易式トイレシステム「SATO」は世界38か国以上に約380万台を出荷し、1,860万人の衛生環境を改善している。

SATOとは?

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SATO

同社が開発した簡易式トイレシステム。設置が簡単で少量の水で洗浄可能であり、排泄物を流すと開いて動力を使わずに閉まる弁が、病原菌を媒介する虫や悪臭を低減する仕組みになっている。シンプルな構造で安価。現地で購入できる。