農業

チョコレートでSDGsに貢献 マダガスカル

貢献するSDGs 2:飢餓をゼロに、12:つくる責任つかう責任、17:パートナーシップで目標を達成しよう

日本を代表するチョコレートメーカーである明治は、2006年から中南米を中心に6か国でカカオ農家を支援し、生産者の顔が見える取引を行ってきた。
その動きがさらに広がっている。

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マダガスカルのカカオ農園で生産者たちと。写真左端は、明治でカカオ豆の研究開発を担当する宮部昌子さん。

カカオ農家の顔が見えるカカオ豆

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MCSの成果である「meiji THEチョコレート」。原料はブラジル、ベネズエラ、ドミニカ共和国産のカカオ豆で、明治のBEAN TO BAR(カカオ豆から板チョコレートまでを一貫して手がけるスタイル)チョコレートだ。

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MCSのカカオのなかでも、産地が指定されている「meiji THEチョコレート」の特別品。マダガスカルのカカオ豆のデビューを目指して取り組んでいる。

チョコレートの原料として欠かせないカカオ豆(カカオから取り出した種子)。2019年の日本の輸入量は約5万3000トン(注1)だが、世界全体で見ればけっして多くはないと、明治でカカオとチョコレートの開発に携わってきた宇都宮洋之さんは説明する。「日本が輸入しているカカオ豆は全体の1パーセント程度です」。しかも世界のカカオビジネスは海外の大手企業の寡占が進んでいて、このままでは購入量が多くない日本には質の良いカカオ豆が入ってこなくなる-そうした危機感から始まったのが「メイジ・カカオ・サポート(MCS)」だ。

MCSは、海外の産地で栽培から発酵(チョコレートの品質を決める大切な工程。これを経て、カカオの実からカカオ豆が取り出される)、輸送のすべてに明治が関わり、安定的に質のよいカカオ豆を確保しようというプロジェクトだ。最初にスタートしたのは、40年以上前からの輸入先であるベネズエラやエクアドルなど中南米の国々だった。しかし、カカオ農家との関係がすぐに構築できたわけではなかった。「農家の人たちの反応は、けっこう冷たかったですね。商社からカカオ豆を輸入していただけのときにはわからなかったのですが、実際に農園を訪れてみると労働環境はよくなく、道具も不足していました」。

そこで作業用の衣服や発酵用の箱などを提供して、カカオ生産のサポートだけでなく生活向上にも協力。"一緒に作っていきましょう"という姿勢を示していった。こうして少しずつ信頼関係を築き、質の高いカカオ豆の取引ができるようになった。

MCSのカカオ豆を使って2016年に発売された「明治ザ・チョコレート」は、"カカオ"にこだわったチョコレートとして人気を博した。

(注1)出典:日本貿易統計

明治 研究本部 商品開発研究所 カカオ開発研究部 宇都宮 洋之(うつのみや・ひろゆき)さん

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宇都宮 洋之さん

チョコレートメーカーとして、持続可能なカカオ農業のためにできるところから取り組む。「カカオ農家への感謝を忘れず、メーカーとして彼らのこともしっかりと発信していきます」。

マダガスカルのカカオ豆を日本へ

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乾燥させたカカオ豆を収集。

MCSの取り組みは少しずつ広がり、2017年にはサポート国は8か国に。そして明治が9か国目に選んだのがマダガスカルだった。「同国は上質なカカオの産地です。MCSを行う可能性を探りたいと考えていました」。しかし日本から遠く、現地把握もできていないカカオ産地に関して、会社としては状況確認を先に行う必要があった。そこで活用したのがJICA民間連携事業(注2)だった。「費用や現地でのサポート、現地農園とのつながりなど、JICAの支援があればMCSをマダガスカルで実施できると思いました」と宇都宮さんは言う。

採択された事業が2019年7月から始まった。マダガスカルのカカオ農家の生産環境や品質など現状の調査を実施したところ、良質のカカオ豆もあるが、生産者や季節によって品質のばらつきが大きく、生産量も不安定なことがわかった。品質を向上・安定させるためには、明治の発酵ノウハウを導入・習得してもらうことでサポートできると考えた。

さらに貧しい農家が多く、生活の不安を抱えていることも多かった。「仕事に集中し、良質のカカオを作ってもらうためにも、栽培技術の向上と発酵技術の指導、資材の補助などと同時に生活のサポートもしていきたいと思っています」。これまでのMCSの経験を生かしてこれらの課題を解決しつつ、マダガスカルでも質のよいカカオ豆を生産したいと意欲を燃やしている。

「協力農家で明治向けのカカオ生産を軌道に乗せ、ほかの農家へも広げていき、品質も数量も安定したカカオ豆が輸入できるようにしたいですね。私たちが継続的に適正な価格で品質のよいカカオ豆を買うことが、マダガスカルのカカオ農家の生活の安定につながりますし、日本の消費者はおいしいチョコレートを食べることができます。2022年には、明治の発酵技術で生産された納得できる高品質のカカオ豆を輸入する予定です」

現地のカカオ農家と

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カカオ豆の品質を写真を使って説明。

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カカオ豆を発酵・乾燥させる加工場にて。

JICA担当者 小澤 真梨奈(おざわ・まりな)さん

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小澤 真梨奈さん

マダガスカルではカカオ加工技術の向上、日本ではマダガスカル産のおいしいチョコレートの販売と、両国にとってメリットのある事業です。

マダガスカル

【画像】国名:マダガスカル共和国
通貨:アリアリ
人口:2,697万人(2019年、世界銀行)
公用語:マダガスカル語、フランス語

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首都:アンタナナリボ

観光や水産、天然資源に恵まれているが、経済危機、政治不安などの影響で経済的には世界最低水準にとどまっている。2014年の新政権発足後、日本は経済協力を再開し、基礎生活の向上、農業・農村開発、経済インフラ整備・開発を柱に協力を展開している。