農業

ニンニクで深まる農業交流 ベトナム

貢献するSDGs 1:貧困を無くそう、8:働きがいも経済成長も、10:人や国の不平等をなくそう

ニンニクの生産量が全国第3位の香川県で、ファーマーズ協同組合の組合員はニンニク栽培を長年にわたり牽引してきた。
新たな栽培地を求めて、ベトナムでの事業に乗り出している。

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試験的に栽培したニンニクを収穫。近藤さん(写真左端)も現地を訪れ、品質を確かめた。

継続できる事業モデルを描く

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首都:ハノイ

香川県で栽培されるニンニクは白くて大きく、香りのよいのが特徴だ。香川県と徳島県の農家を組合員とするファーマーズ協同組合はニンニク栽培に力を入れてきたが、近年は担い手不足による生産量の減少傾向や、質のいい種子の確保が課題となっていた。

そこでJICA中小企業現地調査プログラムに参加。訪れたベトナム・ゲアン省のキーソン高原でニンニク栽培の可能性を感じ、あらためてJICA民間連携事業(注)を活用して調査を行い、試験栽培を実施した。「気候や土壌が合っていたのでしょう。香川と同じ品質のニンニクが育ちました」と同組合の近藤隆さんは、栽培地としての可能性を語る。

同地で良質なニンニクを栽培して日本への輸出とベトナム国内での流通を増やすと同時に、質のよいニンニクの種子を安定的に日本に輸入する-ファーマーズ協同組合はそんな未来を描いている。しかしゲアン省で栽培するためには、適切な肥料の施し方や農薬の使い方などニンニク栽培の技術が必要だった。そこでまず行ったのが、ゲアン省からの技能実習生の受け入れだ。「1994年から東南アジアの技能実習生を受け入れてきたので、農家との連携もうまくいきました。すでに5人が来日し、組合員の農家でニンニク栽培を学んでいます」と近藤さんは説明する。

現地での生産を軌道に乗せると同時に、ニンニクスライスの冷凍品やペースト、ガーリックオイルなどの加工品作りも視野に入れているそうだ。「継続的な事業にするために、流通・販売まで考えた事業モデルを考えています」と近藤さん。ゲアン省はラオス国境沿いの山間地域で、焼き畑による農業からの収入では生活ができず、多くの人たちが出稼ぎをしている。「この地域でニンニク栽培や加工ができれば、出稼ぎに行く必要もなくなります。現地の人たちからは、ニンニクだけでなく野菜や果樹も栽培したいという声も出ていますので、JA香川などとも連携し、オール香川でベトナムとのつながりを深めていきます」。

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質のよいニンニクが収穫できた!

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収穫したニンニクを選別する技能実習生。

ファーマーズ協同組合 近藤 隆(こんどう・たかし)さん

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近藤 隆さん

ファーマーズ協同組合は、東南アジア諸国を中心に農業分野での協力を長年行ってきた。「帰国した技能実習生の働き場所をカンボジアで提供し、農産物の生産・販売を行っています。その経験をベトナムでも生かしたい」。

JICA担当者 真田みぎわ(さなだ・みぎわ)さん

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真田みぎわさん

ゲアン省は農業に携わる人が多く、貧困率も高い地域です。付加価値の高いニンニクの栽培を通じて、貧困解消に貢献することを期待しています。