JICA海外協力隊サモア派遣50周年特集

ありがとう!50周年

2022年はサモアの協力隊派遣開始から50年になります。50年間にわたり協力隊員を温かく受け入れ、隊員の活動や当地での生活を支えてくださったサモア国国民の皆様に、心より感謝申し上げます。また、この50年の間に、献身的に活動に参加してくださった協力隊員の方々、そしてJICA協力隊事業にご支援・ご協力くださった方々、協力隊事業を応援してくださっている方々にも深く御礼申し上げます

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JICA海外協力隊派遣は1965年に始まり、サモアは1972年に世界で15番目の派遣国、大洋州では最初の派遣国となりました。サモアへの初代隊員は同年12月に派遣され、土木施工の専門性を活かし、公共事業省の火力発電所の建設プロジェクトに協力しました。初代隊員は熱い情熱を持って、独立後わずか10年の若い国サモアに赴任しました。この初代隊員の奮闘と真摯な活動が高く評価された結果、他の省庁からも協力隊派遣が次々に要請されるようになって今日に至り、サモアへの協力隊派遣は累計676名に達しています。教育、保健、建設、環境、IT、スポーツ、文化等幅広い分野において、サモアのすみずみにまで派遣された協力隊員は、サモアの開発と両国の信頼関係の深化に貢献してきました。また、派遣された協力隊員の多くが、帰国後は日本の地域での活動に取り組み、サモアで培った経験を日本の社会に還元しています。
私どもはこれからも協力隊事業を通じて、サモアの人びととともにサモアの開発に取り組むとともに、日本とサモアの双方が学び合うことで日本の地域活性化にも貢献し、両国の友好関係をさらに強化していく所存です。

JICAサモア支所長

50周年を記念して、メッセージをいただきました

サモア国フィアメ首相、10年以上にわたり隊員が派遣されている障害者支援学校の校長、サモア協力隊OBで現在は長崎大学客員教授、ジェームスクック大学シニアフェロー、太平洋同好会代表の一盛和世さんからメッセージをいただきました。

サモア独立国フィアメ・ナオミ・マタアファ首相

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新型コロナウイルスの蔓延前には、学校、スポーツ施設、リサイクル施設、病院、研究、産業、政府省庁で、さらには首都アピアから遠く離れた地方のコミュニティでも、JICA海外協力隊の活躍を見てきました。これは、JICA海外協力隊がサモアで築き上げてきた多大な功績の証です。新型コロナウイルスの世界中の蔓延の影響で、JICAボランティア事業は一時中断を強いられていますが、早く再開することを願っています。
サモアは、大洋州地域で初めて青年海外協力隊を受け入れた国です。2022年は、JICA海外協力隊のサモア派遣50周年を迎えます。1972年の協力隊員派遣開始以来、700人近くの協力隊員がサモアで貢献してきました。協力隊員は、現地の人々と共に生活し、異なる言語、異なる文化慣習も習得しています。サモアの人々もまた、日本の文化・慣習について学ぶことで恩恵を受けていることは間違いありません。多くの協力隊員がサモアの人々が築き上げた、人と人とのつながりは、非常に価値のある成果であり、2年の隊員任期が終了した後も、ずっと残り続けていくでしょう。
協力隊員の派遣人数が増加していることは、サモアがJICAボランティア事業を評価していることの表れです。協力隊は、サモアの成長に必要不可欠な人材育成に大きな役割を果たしています
現在、私たちは新型コロナウイルスの世界的な蔓延によって、悪化する無数の課題に直面しており、これからの協力隊員の活動は、これまで以上に重要になるでしょう。協力隊員のさらなる活躍を楽しみに、近い将来、サモアへ協力隊員がまた戻ってくることを願っています
JICAボランティア事業の功績、JICAサモア支所が現地のパートナー機関と密に連携して、ボランティア事業を推進してきたことをここに称賛します。
協力隊のサモア派遣50周年を迎えられ、心よりご祝福申し上げます。

配属先:フィアマラマラマ特別支援学校長

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フィアマラマラマ特別支援学校には、10年以上、JICA海外協力隊が派遣され、様々な支援を受けています。私たちの学校は、隊員の皆さんの知識や技術に支えられ、その取り組みは学校の職員の技術向上にも大きく貢献しています。松井恵隊員からはたくさんの作業療法技術を支援と共に、日本大使館の草の根無償資金協力による施設拡充のデザイン案作成に協力してもらいました。また、松井美智子隊員はたくさんの知識を持っていて、また、他の協力隊員と開講した日本文化紹介イベントは生徒たちにとって素晴らしい交流イベントになりました。その後、宮﨑博隊員が始めた生徒への職業技術訓練は、その後、派遣された林孝一隊員に引き継がれ、今でも現地教職員によって継続して取り組んでいるプログラムとなっています。私たちはJICA海外協力隊からたくさんの喜びを頂きました。
あらためまして、JICA海外協力隊サモア派遣50周年、おめでとうございます。

フィアマラマラマ特別支援学校長
Sharon Suhren

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宮﨑博(2016年~2018年 障害児・者支援)

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宮﨑博(2016年~2018年 障害児・者支援)

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林孝一(2018年~2020年 障害児・者支援)

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林孝一(2018年~2020年 障害児・者支援)

青年海外協力隊OB:長崎大学客員教授

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私のこれまでの人生を振り返るとキーワードは3つです。「フィラリア対策」、「蚊」、そして「太平洋」です。1977年2月、サモアに初めての女性隊員として参加しました。それまでに学んできた、熱帯病や蚊の対策の現場で仕事をしたいという動機でした。2年間、サモア人スタッフと一緒に毎日、村々を回り、蚊を集め、フィラリアの患者さんと接して、驚くことばかり、多くのことを学び、扉が開いた気がしました。その後、本格的に熱帯病を学び、1992年6月に今度は世界保健機関(WHO)の職員として、再びサモアでフィラリア対策に関わりました。そこから、さらにバヌアツ、フィジー、太平洋全域に対策を広げ、太平洋リンパ系フィラリア症制圧計画(PacELF)を立ち上げました。そして、その太平洋での経験と成果をもとに、本部ジュネーブで世界リンパ系フィラリア症制圧計画を担当しました。今は日本に戻り、熱帯病のこと、蚊のこと、そして太平洋の島国のことを日本の方々と考え、想い、語る場を提供できたらと務めています。
私のキャリアはJICAボランティアから始まりました。そして、私にとってサモアは世界へ向かっての出発点でした。心より感謝です。50年にわたるJICAサモア海外協力隊事業、おめでとうございます。

一盛和世

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隊員の活動成果トピック

サモア初の天気予報・防災アプリを開発

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サモア気象局に派遣されたコンピュータ技術隊員は、サモアの自然災害の発生をいち早く国民に伝えるツールとして、サモアで初めての天気予報・防災スマホアプリSamoa Weatherを開発しました。
大洋州に位置する島国のサモアは、サイクロンや地震、津波など、自然災害のリスクを抱えています。2009年にはサモア近海で大きな地震が発生し、津波による壊滅的な被害を受けた経験があります。
このアプリが開発される前は、テキスト情報では地震が起こった場所を地図で示すことが出来ない、ウェブサイトでは情報をプッシュ型で国民に届けることが出来ない、SNSの投稿では他の投稿に埋もれてしまうという課題がありました。
「このアプリのおかげで、気象情報を分かりやすく、タイムリーに国民に伝える事が出来るようになりました。」とサモア気象局長はSamoa Weatherアプリを評価しています。
Samoa Weatherアプリは、サモアの天候、気圧配置図、近海で発生した地震やサイクロンの発生状況を発信し、サモアの防災予防に貢献しています。

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松村 剛志(2016~2018年 コンピュータ技術 気象局)

数字で振り返る、50年の歩み

累計派遣人数676人

1972年から隊員派遣がはじまり、毎年10~30人が派遣され、50年経った今、派遣隊員人数は676人に達しました

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首都アピアへの派遣が71%

隊員の派遣人数を島別でみると、ウポル島が591名、サバイイ島が85名となっており、首都アピアへの派遣比率が全体の71%(478名)を占めています。全体の比率としては少ないながらも、ウポル島北西地区は12%(80名)、ウポル島その他地区5%(33名)、サバイイ島12%(85名)と島の端から端まで、幅広く地方の村に多くの隊員が派遣されています。

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FelipeRev(注1), 2021 Samoan general election (results by constituency)(注2), modified, CC BY-SA 4.0(注3)

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累計派遣97職種

1972年の隊員派遣以降、サモア国のニーズに合わせて、97職種の幅広い分野の隊員が派遣されてきました。派遣開始当初は、公共・公益事業分野(土木や建築など生活サービスに関わる仕事)の隊員比率が高かったですが、サモアの発展に伴い、隊員へのニーズも変化してきました。2000年代以降、人的資源分野(教育やスポーツなど人を育てる仕事)の隊員が一番大きな派遣規模になっています。

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直近5年間の職種別派遣人数と比率(2016~2020年)

派遣分野 派遣人数 派遣比率
人的資源 40 68%
保健・医療 6 10%
農林水産 5 8%
計画・行政 3 5%
社会福祉 3 5%
鉱工業 1 2%
公共・公益事業 1 2%
合計 59  

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50周年特別企画

50周年記念誌を制作

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JICAサモアの50年の歴史と、活動の成果をまとめた「50周年記念誌」を制作しました。皆様と共に歩み、築いてきた50年の全貌をぜひご覧ください。

女性をエンパワーメントするエコバッグを制作

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「社会的に不利な立場に置かれている女性のエンパワーメントにつなげたい」というコンセプトのもと、サモア国内のNPO法人Samoa Victim Support Group(SVSG)と連携して、50周年記念エコバッグを制作しました。
生地の裁断、縫製、サモアの特徴的なデザインが施されたハンドプリントは、SVSGが支援する女性Jean Levaleさん(20歳・Moamoa村)が行いました。Jeanさんは、「エコバッグの制作で一番難しかったのは、裁断でした。お母さんに教えてもらいながら、一緒に裁断を行ったので、裁断技術を覚えることも出来ました。」と話してくれました。
50年間にわたって、協力隊員を受け入れ、活動を温かく支援していただいたサモアの方々に感謝を込めて、協力隊員の派遣累計人数676人に因んで、676個のエコバッグを配布することにしました。エコバッグには、JICAスタッフが心を込めて、一人ひとりの隊員の名前、職種、配属先、活動期間を記したタグを付けました。
制作したバッグは、使いやすさにこだわり、サイズやマチ、内ポケットにこだわり、柄デザイン、カラーのバリエーションは複数あるので、女性も男性もどなたでも使えることを心掛けてデザインしました。
スーパーや小売店でもらうビニール袋の代わりにエコバッグを使えば、プラスチックごみの削減になり、Nofotane女性が制作したバッグを街中で使えば、Nofotane女性のモチベーションアップ、自信につながり、SDGsの「ジェンダー平等」「作る責任・使う責任」「海の豊かさを守ろう」への貢献につながります。

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50周年記念式典を開催

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サモア国副首相祝辞

50周年企画の締めくくりとして、2022年12月8日、首都アピアにおいて、協力隊サモア派遣50周年記念式典を開催しました。式典には、サモア副首相、在サモア日本国大使の他、関係省庁、国際機関、隊員配属先等から、約60 名が出席しました。

式典は、在サモア日本国大使の挨拶から始まり、青年海外協力隊事務局長からのビデオメッセージや、隊員OBで現在は技術協力プロジェクトの専門家としてサモアに派遣中の隊員OBからのスピーチがあり、協力隊事業関係者への謝辞や過去の隊員の具体的な功績を紹介しました。

続いて、隊員の配属先を代表し、フィアマラマラマ特別支援学校長のスピーチでは、「生徒のみならず職員も、協力隊員から多くのことを学びました。協力隊員が取り組んだ楽器演奏指導は、現在、学校において不可欠な取り組みとなっています」と協力隊員の活動成果を発表しました。

式典の最後には、サモア国副首相から、「協力隊員は、日本の顔であり、日本とサモア国民の相互理解に大きく貢献しています。これまでの協力と貢献に深く感謝し、これからも連携協力を強く依頼します」と祝辞を述べ、会場は大きな拍手に包まれて閉幕しました。

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