地元から世界へ

【写真】松下(旧姓:西畑)陽子さん(香川)平成22年度1次隊/エジプト/幼児教育
松下(旧姓:西畑)陽子さん(香川)

無事に青年海外協力隊員になれ両親と共に祝福しました

任地ポートサイドにて。スエズ運河の出入り口

現地の保育士対象のセミナー開催。壁面を皆で作りました

現地での活動の様子

「遊びから学ぶ」ことを伝えました

同期の環境教育隊員だった主人と共に、香川県のアラブイベントにて

 私は2010年から2012年まで青年海外協力隊の幼児教育隊員としてエジプトで活動しました。東京にある勤め先(公益財団法人)に籍を置きながら参加できる『現職参加制度』を利用しての参加でした。
 父の仕事の関係で0歳から7歳まで中南米パナマの保育園やインターナショナルスクールに通っていたので海外に出ることに対して抵抗は無かったのですが、出発前に福島県の二本松で行われた事前訓練に一番衝撃を受けました。全国から熱い思いを抱いて集結した隊員候補生(訓練を終えて正式に協力隊になれる)の、日々懸命に訓練所で語学習得に励む姿はとてもかっこよく見えました。
 そして訓練を終え、青年海外協力隊になってからそれぞれの任地に行った際、現地の人々に真剣に関わる姿に感動しました。自分たちの育った地域の伝統文化を紹介している様子には、国内でも県民性により全然違う文化や風習があるなと考えさせられました。また、同時に自分自身のアイデンティティは何だろうかと考えさせられました。

 私の任地はポートサイドという地中海に面した地域で、スエズ運河の出入り口になっています。昔住んでいたパナマにもパナマ運河という有名な運河があり、共通点があったので驚きました。
 ポートサイドでは社会連帯省ポートサイド支局に配属され、週に3、4日ほど現地の保育園で活動し、残りの1、2日は支局に行き、活動している保育園の様子を報告していました。また支局スタッフと共に数カ月に1度は現地の保育士を対象にした技術向上促進のワークショップやセミナーを開催しました。現地の保育士や保育園の園長が参加して一緒に教材を製作したり、玩具を使って体を動かす遊びを紹介したりしました。現地の小児医療の専門家や幼児教育関係の専門家が講義を行い、私を含む青年海外協力隊員の幼児教育隊員は現地の保育士と一緒にアラビア語に訳した手遊び、絵本の読み聞かせ、製作物の紹介をしました。

 私がポートサイドの支局スタッフや現地の保育士さんたちに意識して伝えていたのは「エジプトにあるものや歌」を使用すること。保育園は勉強するところという認識が保護者の間でも強く、座学が中心だったので、まずはその認識から変えようと思い、「エジプトの家庭で歌っている童謡や手遊びは無いの?」と尋ね、それを保育園で実施しました。また、保育園にもよりますが、英語や数字が2歳の時から始まっている園もあり、先生たちも子どもたちに対して常に「静かに!」と言い、定規や棒を持って威嚇していました。製作や絵本の読み聞かせ、手遊び、そういったものから最終的に数字や文字も含めて理解していくという情操教育が幼児期の成長に必要だということがエジプト社会ではまだまだ認識不足でした。
 「中東幼児教育広域研修」という大きな研修会が4日間にわたりエジプトで開催され、エジプトやシリア・ヨルダン・モロッコ・チュニジアの幼児教育関係者と幼児教育隊員が集まりました。「遊びを通した学び」の保育方法の導入が掲げられ、各国の幼児教育委関係者が発表を行い、今後中東全体の幼児教育が更なる発展をしていくことを願いました。

 2010年12月、チュニジアでの反政府運動から「アラブの春」が起こり、治安悪化によりエジプトから退避することになりました。その後再びエジプトに戻り、私がいなかった間の分を埋めるために支局職員の方々と、日夜ワークショップやセミナーのための展示品作りに追われました。真面目な支局スタッフに励まされながら完成させて帰国しました。今でもSNSのおかげでポートサイドの幼児教育関係者の方々が頑張られている姿を見ることができ、とても嬉しい気持ちになります。

 現在ですが、同じ時期に派遣されました元ヨルダン環境教育隊員の松下倫尚と結婚して香川県に住んでいます。四国はとても魅力的な島で歴史的な四国遍路がありますし、海や川・山が近くにあり、とても自然豊かです。讃岐弁を流暢に話す我が子に対してとても感心させられ、このまま香川県の食文化や伝統文化を知って、将来世界に出た時に自信を持って自分の育ったところについて伝えていってくれたらなと思います。
 私も、家族を大事にしながら今後も日本社会や世界に視野を向け、自分なりに動いていきたいと思っています。