宝の2年間を経験できたから、事業を立ち上げようと思えた

【写真】城戸 和美(愛媛県)H27年度2次隊/フィジー/環境教育
城戸 和美(愛媛県)

青年海外協力隊が嫌いだった私。そんな私が応募した理由

クリーンスクールプログラム
教員対象の環境ワークショップ

 大学時代にフィリピンに1年間留学しており、青年海外協力隊の話が耳に入ってくることがありました。ただ、現地に貢献しているという活動内容というより、ネガティブな声を周りから聞くことが多かったため、留学時代は「私は絶対青年海外協力隊という道には進まない…」と思ってました。
 大学卒業後は、3年間は民間で経験を積み、将来は途上国の発展に寄与できる、社会貢献度の高い進路に進もうという計画でエネルギー商社に入社しました。仕事は楽しかったのですが、朝も夜も走り回り、家では寝るだけの生活を続けていると、自分自身がどんな分野で途上国に関わっていきたいのか全くイメージできなくなっていました。
 悩んでいる中で、協力隊OVの方とお話する機会がありました。最初は留学中にあまり良いイメージではない青年海外協力隊に抵抗がありましたが、自分次第で道は拓けるお話をOVの方がしてくださり、応募を決意しました。

1年目はがむしゃらに。2年目は持続可能な活動

マーケットでいつも仲良くしてくれるおばちゃん

マーケットの野菜ゴミをなくす活動(1)
分別に関するルールをマーケットスタッフにプレゼン

 私はフィジーのナウソリという町役場に環境教育の隊員として配属されました。1代目と言うこともあり、全くフィジーの現状や活動の進め方などを教えてくれる人がいませんでしたので、とにかく1年目はカウンターパート(同僚)と2人3脚で進めていきました。
 私はゴミを削減することを期待されていると思っていたのですが、配属先の期待は、廃棄物処理にかかる費用の削減でした。なので、必ずしもゴミを削減しなくても良いとのことで、ゴミ以外での削減方法もカウンターパートといろいろ話し合ったのを覚えています。
 ゴミにかかる費用が変わらなかったら、説明を求められる時もあったので、やりがいもあり、緊張感もある配属先でした。
 1年を通して、フィジーと言う国やナウソリ町役所のやり方を経験で覚えていき、どうしたら活動が定着するのかを考えていきました。
 1年目をがむしゃらに活動した結果、2年目は「トップの指令で規則を作り、協力隊がいなくなっても続く活動にする」という目標を立てました。フィジーはボトムアップでは組織は動きませんが、トップが一言伝えたら明日からすぐ行動が変わります。
 トップダウンはあまり好きではありませんでしたが、ボトムアップで変わる社会ではないことを1年目で学んだため、とにかく上司に働きかけるよう心がけていました。
 活動がうまく行ったかどうかは別として、1年目がむしゃらに活動して、2年目に目標を立てたことは今でもよかったと思います。

協力隊の目的は自分探し。結果は…?

マーケットの野菜ゴミをなくす活動(2)
豚農家さんに対する、野菜くずを豚にあげるメリットに関するプレゼン

マーケットの野菜ゴミをなくす活動(3)
コンポストセンター作成中

 「具体的にどの分野で途上国に貢献したいのか」を考えるため、協力隊へ応募しました。2年間、活動以外でも現地の非営利組織や民間の方々、専門家の方など、多くの人の話を聞いた結果、「ビジネスとしてゴミ問題に取り組みたい」という結論に至りました。
 フィジーは、国も経済も小さいためフィリピンのように新しい人に出会う機会が少なく、自分探しのできるフィールドに出会えず、かなり苦労しました。それでも、目的だった次のステップの明確化ができたのは、周りの協力隊員のおかげでもあったと思います。
 帰国後はリサイクルビジネスでエチオピアに進出したい会社に入社しました。ただ、そこでリサイクルにも限界があることを痛感し、現在では”ゴミを出さない”ことの大切さやエシカルをテーマにした事業を2つ行っています。
 1つは古民家事業です。地域に根ざして、”食”をテーマにサステイナブルを伝える活動をしています。もう1つは「暮らしの目からウロコ」という女性3人で立ち上げた事業です。全国の人と一緒に、地球と人に優しい暮らしをテーマに、自分達の暮らしを見直していく事業です。
 これらの事業はまだ軌道には乗っていませんが、今までで一番 ”城戸和美” でないと出来ない国際協力をしていると感じています。
 そして、今ここに立っていられる大きなきっかけが青年海外協力隊の経験であると思います。最初は協力隊嫌いな私でしたが、今は2年間、宝の経験と出会いをさせてもらったと思います。

世界と近くなった協力隊

マーケットの野菜ゴミをなくす活動(4)
コンポストの確認

 協力隊で自分の目的が達成されたことが自分の中で一番大きいことでしたが、もう一つ良かったことは世界と近くなったことです。私の同期隊員は約180人います。名前も知らなかった国に同期が派遣され、SNSで活動内容や生活の情報が流れてくるため、行ったことのない国でもすごく親近感が湧いてきます。青年海外協力隊に行っていなかったら、存在を知らないままだった国や人たちが沢山いたんだろうなぁと思うと、本当に協力隊に行って良かったなと思います。そして、それでもまだ知らない国があることにも驚きます。世界の近さと広さを教えくれたのも、協力隊だったと思います。