所長あいさつ

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南アフリカと日本との関係は古く、1910年には両国の国交が樹立されました。明治の時代です。1918年にはケープタウンに日本領事館が設置され、2018年で100周年になります。アフリカ大陸初の日本の公館です。1918年は、あのマンデラ元大統領が生まれた年でもあります。ちょっと不思議な縁を感じませんか。

南アフリカといえば、まずはアパルトヘイトを思い浮かべる方が多いかもしれません。それとも、2010年のサッカーワールドカップでしょうか。関連する映画も色々と作られているので、映画を通して南アフリカに触れたことがある方もいらっしゃると思います。映画でいえば、アパルトヘイト終焉後に南アフリカで行われたラグビーワールドカップにおけるマンデラの想いを描いた「インビクタス」、ヨハネスブルグのスラム街の少年を描く「ツォツィ」、自伝を原作とした「マンデラ 自由への長い道」などなど。ヨハネスブルグを舞台にしたSF映画「第9地区」も楽しめます。監督は南アフリカ出身。小説では、ノーベル文学賞も受賞したJ.M.クッツェーの作品が文庫でも入手できます。

南アフリカに実際来られたことがある方は、整備された道路網、ヨハネスブルグ・サントン地区の街並み、巨大なショッピングモールなど、つまりは南アフリカの“華やかな”部分にまず驚かれることでしょう。“華やかな南アフリカ”を見て「アフリカじゃない、ヨーロッパだ、先進国だ。」「開発援助が必要なのか?」とおっしゃる方もいます。しかし、「そうではない南アフリカ」も文字どおり隣り合わせで存在しています。かつ、南アフリカの場合、残念ながらその差が極めて著しいのです。

一見華やかな南アフリカは、サブサハラアフリカ全GDPの約2割を占め、アフリカ経済を牽引する存在ですが、世界でも有数の所得格差は縮まらず、また、最大の問題である失業率も全体で約27%、若年層では約50%という極めて高い水準にあり、人種間での数値の差も著しいものがあります。眩しい光と深刻な影を抱え各種課題に取り組んでいる南アフリカに対し、まだまだ我々ができることがあると思っています。例えば、教育の現場では、特に理数科における教員の質が大きな課題です。アパルトヘイト政策により満足のいく教育が受けられなかった黒人層の人たちが、現在は教師という立場で教壇に立っているということも、その背景の一つです。

JICA事務所は1997年に開設され、2017年には20周年を迎えました。南アフリカに加え、レソト、エスワティニ(旧スワジランド)、ナミビア、ボツワナ、ジンバブエを担当している当事務所では、国単位のみならず周辺国も含めた「地域としての視点」も意識しながら支援を行っています。例えば、経済・社会的格差是正の取り組みとして実施している障害者分野の支援は、サブサハラアフリカで唯一の同分野における技術協力プロジェクトですが、南アフリカのみならず周辺国にも拡げていくことを視野に入れています。南アフリカで始めた取り組みを、共通の課題を持つ周辺国にも拡げていく。南アフリカはそういう役割が可能な国であり、そういう役割を担っていると言ってもいいかもしれません。

また、南アフリカの特徴の一つとして、サブサハラアフリカで最も多い約140社の日本企業が進出していることが挙げられます。この特徴を活かし、日本企業の活動とJICA事業を如何に絡めていけるかについても模索し続けていきたいと考えています。

アフリカにはまだまだ課題はありますが、可能性にあふれた大陸です。ODA事業やビジネスのみならず、映画・小説・文化・観光など入口は何であれ、アフリカへの、そしてアフリカの入口になり得る南アフリカへの皆様からの熱い視線、お待ちしております。

南アフリカ事務所長
関 智宏