所長あいさつ

南アフリカ共和国は、1900年代半ばから続いたアパルトヘイト(人種隔離政策)諸法を1991年に廃止し、1994年に全人種が参加する選挙を経て民主政権が発足した新しい国でもあります。マンデラ政権が和解と融和を掲げ、多様な人種・民族が共存する「虹の国(Rainbow Nation)」として歩み出しました。人種を越えて一体となる象徴的な存在の一つが南アフリカのラグビーチーム(愛称は、Springboks)です。以前はアパルトヘイトのため国際舞台からも遠ざかっていましたが、1995年には自国でラグビー・ワールドカップを開催し、「One Team, One Nation」の掛け声の下、初出場・初優勝を果たしました。2019年に日本で開催されたワールドカップで優勝したことは記憶に新しいところです。

経済面では、南アフリカはサハラ以南のアフリカの国内総生産(GDP)の2割を占め、アフリカ諸国で唯一のG20メンバー国であり、アフリカ屈指の大国としてアフリカ大陸の発展を牽引しています。白金、クロム、マンガン、金、ダイヤモンド、バナジウム、鉄鉱、石炭などの鉱物資源に恵まれる世界有数の資源国でもあります。また、国際物流の拠点となるダーバン港を擁し、アフリカ地域で活躍する企業が多数あります。日本企業の進出数も約260に及び、南アフリカを拠点にアフリカ大陸でのビジネスが展開されています。

一方で、民主化から約30年が経過しようとしていますが、経済格差や若年層の高い失業率が依然として大きな社会問題です。1人あたりのGDPが5,000米ドルを超える中進国ですが、経済を牽引する南アフリカ社会の頂点を除けば、他のサブサハラ・アフリカ諸国と全く同様の開発課題に直面しており、民主化当時に思い描いた到達点はまだまだ遠いというのが実情です。国別開発協力方針の基本方針「成長の加速化と貧困層の底上げ」に示されるように、アフリカ地域経済を牽引する経済成長を図りつつ、並行して国内における格差是正を支援していくことが求められます。

アフリカ地域共通の課題解決に貢献する観点からは、南アフリカに拠点をもつ「アフリカ連合開発庁-アフリカ開発のための新パートナーシップ計画調整庁(AUDA-NEPAD)」への支援・連携強化にも取り組んでいます。

南アフリカ共和国に加えて、当事務所で兼轄するエスワティニ、レソトを含めて、JICAは、技術協力、科学技術協力、資金協力、民間連携事業、海外ボランティアなどを駆使してそれぞれの国と地域が抱える課題に真摯に向き合い、これらの国々の人々の幸せに貢献できるよう、日本の産学官民の皆さまや国際社会と共に信頼されるパートナーとして取り組んでいきたいと思います。

南アフリカ共和国事務所
所長 本閒 穣