所長あいさつ

2021年4月1日にスリランカ事務所長として着任いたしました。

スリランカは、新型コロナウイルスのパンデミック発生当初半年近くの間は感染抑え込みにかなり成功しておりましたが、経済への影響は大きく、2020年のGDP成長率は過去最悪のマイナス3.6%となりました。特に近年成長の原動力の一つとしての経済を牽引し、外貨収入源としての重要な役割も果たしてきた観光業の落ち込みは著しく、パンデミックから1年が経過し、世界的な第3波の流行とともにスリランカでも感染の急拡大がみられる中、回復は未だに見通せません。

しかし、スリランカ政府や医療従事者等関係者の懸命な努力の末に感染はいつか落ち着き、やがて終息を迎えることでしょう。他方、傷ついた経済や社会を立て直し、以前の成長軌道に再び乗るには少し時間と努力を要するかもしれません。また、中進国入りし、さらに力強く、インクルーシブで持続的な成長を遂げていくためには、運輸・交通、上下水道、電力などのインフラ開発や、地方部での社会経済環境整備、災害に対する脆弱性の克服、保健医療の拡充等、パンデミック以前から課題であった様々な事柄に取り組まなければなりません。

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JICAは長年にわたり、スリランカとの協力関係を発展させて参りました。1950年に発足したコロンボプランに日本が1954年に加盟して以降、日本はスリランカに対する技術協力を1950年代に、円借款の供与は1960年代に開始しました。スリランカ向けの円借款の累計承諾額は今では1兆円を超えています。また、2021年は1981年に開始された青年海外協力隊の派遣から40周年に当たりますが、これまでに派遣されたボランティアは1,100人以上に上ります。2022年は両国の国交樹立70周年に当たります。

スリランカは、2009年に終結するまで30年弱にわたり続き7万人近い死者を出した内戦、約3万5千人が亡くなった2004年のインド洋津波など、いくつかの大きな困難を乗り越えてきました。こうした困難にも、JICAは常にスリランカ政府と国民に寄り添い、きめの細かい協力を展開してきました。

今回の新型コロナ感染症のパンデミックとその様々な影響をいち早く克服し、この美しい輝ける島スリランカに暮らすすべての人々に一層輝かしい未来が訪れるよう、様々な関係者やパートナーと協力し、力を尽くしてまいる所存です。

スリランカ事務所長
山田 哲也