JICA「スリランカ防災行政アドバイザー(2017~2020)」長井隆幸氏の活動完了報告

2020年7月8日

JICAは長きにわたり、スリランカの防災分野、その中でも防災行政の基盤構築に大きく貢献してきています。協力の一環として、JICAでは2017年よりスリランカの防災行政担当省である災害管理省(着任当時)に「防災行政アドバイザー」として長井隆幸氏を派遣し、2020年6月23日に3年間の活動が完了しました。

長井専門家は、日本国内での防災行政に関する豊富な経験を基に、スリランカの防災行政強化に関する政策助言を行い、特に、以下の点で大きな成果を挙げました。
「国家災害管理計画」の改訂作業に参加し、助言を行うことで、従来スリランカで重視されずに同計画内にも十分な言及の無かった「防災」に係る記載がより明確に草稿に反映されました。長井専門家の助言は、2015年に我が国主導で開催された2015年第3回国連防災世界会議の採択文書「仙台防災枠組(2015-2030)」に基づいています。
反映された具体的な内容は以下の通りです。

  1. 関連組織や住民の防災上の責任が言及され、今まで防災を必ずしも自身の責任と捉えていなかった各関連機関や住民が当事者意識を持ち、関連機関が責任をもって計画・実施にあたることを促し、住民の防災事業への積極的な協力、自身の責任での早めの避難等の行動に繋がることが期待されます。
  2. これまで主に災害発生時の対応に予算が割かれてきましたが、予防のための対策の充実が明記され、例えば、堤防などのインフラ整備等、災害発生前の対応による、開発済地域での災害リスクの軽減にも力点が置かれることが期待されます。
  3. 防災は防災担当省庁だけでなくあらゆる省庁で考え取り組む必要があることが明記されました。例えば、都市開発や住宅開発などの担当省庁が、土砂崩れや洪水などの災害リスクを十分に考慮した、土地利用規制や住居地域の制限等を行うことで、災害リスクのある場所での開発が事前に防がれることが期待されます。

スリランカ初の試みとなる「地方防災計画」について、国内2か所を例に取り上げて策定の支援を行うとともに、策定作業を踏まえて国内他地域で策定する際に参照可能な「地方防災計画策定ガイドライン」案を作成しました。
「地方防災計画」とは、災害の発生に備え、災害の予防のための対策を行い、災害による被害を軽減するために、地方自治体が中心となって策定する防災に関する基本的な計画です。
スリランカの地方自治体関係者にとっては「地方防災計画」策定作業は初めであるため、長井専門家により、その重要性が説明され、策定作業支援が行われました。また、長井専門家により地方防災計画策定ガイドラインが作成され、スリランカ側による「地方防災計画」策定の促進が図られることが期待できます。
「地方防災計画」策定は「仙台防災枠組」で各国が取り組むべきターゲットの1つとされています。今後は、2か所の地方防災計画をベースに、スリランカ政府により国内全地方自治体での策定作業が進むことが期待されます。

今後JICAでは、これらの成果も踏まえて、スリランカ政府の「防災」概念のさらなる定着・推進と、災害リスクの軽減に向けた「防災のための事前投資」の実現を目指し協力を続けて参ります。

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2019年12月12日 Bulathsinhalaでの第1回ワークショップ風景

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2019年12月12日 Bulathsinhalaでの第1回ワークショップ風景

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2020年2月18日 Bulathsinhalaでのドラフティングミーティング

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2020年3月12日 Ayagamaでの第2回ワークショップ風景

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2019年2月23日 Bulathsinhala集落移転地にてセミナー講師との現地調査

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2020年6月8日 国防省災害管理部幹部と記念撮影