「海外協力隊員と共に-タジク人日本語教師として-」ベグマトワ・シャフノザ・サビルジョノブナさん vol.2

2019年12月11日

前回は、シャフノザさんが日本語教師になったきっかけや協力隊員との授業運営についてお話をお伺いしました。今回は、タジキスタンでの日本語教育の課題や展望について、またタジキスタン日本語教師会に関しても詳しくお話をお伺いしていきます。

日本語教育の課題

-上級生になるにつれて、日本語を利用した就職が難しいなどという理由から日本語学習のモチベーションが下がってしまうというお話をお聞きしました。そういった現状も含めて、学生さんたちに日本語学習を通して学んで欲しいことはどのようなことでしょうか。

学生たちは、1~3年生のときは頑張って学んでいても、4年生になるとやる気がなくなってしまうようです。私も田村先生もそのことを分かっているので、学生が4年生になってすぐにどのような授業を受けたいか希望を聞きました。聞いてみたところ、漢字の勉強がしたい、ビデオをもっと見たい、文法の授業を受けたいなどのいろいろな希望が聞けました。希望に沿って、漢字や文法の授業、ビデオを使った授業を準備しました。学生たちもやりたいことができるので頑張るかなと思ったのですが、残念ながら用意した課題をやってこないなど、今のところ頑張っているのは私たち教師側だけのように感じるので、私は学生たちに「日本語を頑張って勉強したという経験が将来に生きるから頑張りましょう。」と伝えています。今は試行錯誤しながら、田村先生と一緒に新しいことをやってみようと考えています。

将来を見据えた活動も

-将来的に、協力隊員の派遣が続かなかった場合などに対応するための準備はされていますか。

もちろん協力隊員派遣の継続は希望していますが、実際に田村先生とそのときの準備はしています。どういうことをしておけば後で困らないかについて考えています。例えば、発音指導のために、日本の学校と協力して日本語のオーディオ教材を作ってもらいました。また、協力隊員の派遣が続かなくなってしまいパニックにならないように、心の準備をしています。田村先生と一緒に将来的なことも考えて活動しています。

タジキスタン日本語教師会の活動と協力の大事さ

-会長を3年間務めていらっしゃったとお聞きしましたが、タジキスタン日本語教師会(以下「教師会」という。)の成果と困難だったことを教えてください。

【画像】

教師会の様子。シャフノザさん(左端)、田村隊員(右端)と他メンバー。

2016年に元シニアボランティアの先生と一緒にタジキスタンで初めての教師会を作りました。なぜ作ったかというと、他の中央アジアの国々には教師会があって、さまざまな問題を解決していると聞いたからというのと、タジキスタンでは日本語教師が足りていないので、イベントがあったときの役割分担が大変だったからです。教師会ができた後は、話し合いをするようになり、うまく役割分担ができるようになりました。また、教師会ができた頃は教師たちの勉強会もおこなっていたので、毎週集まっていました。しかし、皆が業務の傍ら教師会に参加しているので、時間が合わず毎週の開催は難しくなりました。月に1回開催している今でも、皆忙しく、人を集めることが難しいと感じています。

-会長は、開催日の調整、また、会の進行も行わなければならないなど多忙だったと思います。それでも3年間続けてこられたシャフノザさんの原動力は何でしょうか。

【画像】

教師会にて発表するシャフノザさん

それは、教師会を作ろうと言い出したのは私だからです。言い出して、途中でやめてしまうのはいけないことだと思っていました。また、教師会があることで、イベントの運営がスムーズにいくなどのいいこともあるとわかったからです。ただ、会長を交代したときに、会長がたくさんの仕事を一人で背負うことは大変なので、話し合って、仕事を分けることにしました。

-教師会の今後の展望について教えてください。

現在は、田村先生を含む日本人の方々が教師会の運営を手伝ってくださっています。タジク人の教師だけで話し合っていると議論が停滞してしまう場合があり、そのようなときに立場が違う日本人の方の意見を聞いて解決することもあります。しかし、今後は将来のためにも、タジク人の日本語教師だけで教師会を運営できるようになることが目標です。

-タジキスタンの日本語教師たちが日本語能力を伸ばすには、どのような取り組みが必要だと思われますか。

タジキスタンの日本語教師の日本語能力はまだまだ低いと思っています。現在は、主に日本語の教え方をシニアボランティアの方々に教わっていますが、今後は教師用に上級者クラスを再び開くことができれば良いと思っています。それにはシニアボランティアの方などの日本人の方たちの協力が重要です。また、現地の教師同士でお互いの授業を見学し、意見交換することなども大切だと思っています。こちらも、現地の教師同士の協力が大事なんです。

おわりに

シャフノザさんは日本語教師としての業務で忙しいにもかかわらず快く取材に応じてくださいました。このインタビューを通じて、海外協力隊員と働くカウンターパートの方の思いと、タジキスタンでの日本語教育の様子やその課題について少しでもお伝えすることができれば幸いです。

関連リンク:

プロフィール

ベグマトワ・シャフノザ・サビルジョノブナさん
タジク国立言語大学日本語学科を卒業。日本語教師歴は8年。ホジャンド出身。
現在、田村隊員の派遣先でもあるロシア・タジク・スラブ大学にて日本語教師として教鞭を取る。

聞き手
堀場 くるみ
早稲田大学 文化構想学部 文芸ジャーナリズム論系
JICAタジキスタン事務所インターン