所長あいさつ

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私とタイとのご縁は、1980年代後半、私が学生だった頃に旅行で訪れたことが始まりです。当時、タイでの一人当たりの名目GDPはようやく1,000ドルを超えた辺りで、人びとの微笑みに心魅せられながらも、これからこの国が目覚ましい経済成長の時代を迎えることになるとは想像だにしていませんでした。

タイへの政府開発援助は1954年に21名の研修員を日本に受け入れたことが始まりです。以来、60年以上にわたり、モンクット王工科大学ラカバン校との協力に代表される技術協力やボランティア事業そして東部臨海開発、チャオプラヤ川にかかる多くの橋梁、バンコクのスワンナプーム国際空港や都市高速鉄道といった資金協力によるインフラ整備など多岐にわたる事業を実施してまいりました。これらの協力は、タイの人びとの生活の豊かさだけでなく、日本との結びつきを深めることにも大きく寄与してきました。

そして今日、タイは上位中所得国となり、貧困率も大きく改善されました。バンコクの高層ビル群を前にして、改めてタイが成し遂げた経済の発展を肌で感じています。

今後、JICAが取り組むべき課題は、大きく次の三つがあると考えています。

一つ目は、メコン地域、そしてアジアにおけるタイの地政学的、経済的な重要性を踏まえ、地域の連結性とイノベーションを念頭においたタイらしさを活かした持続的経済発展を促進することです。

二つ目は、環境の保全、災害対応を含む気候変動対策、経済格差の是正や高齢化に適切に対応し、より包摂的で強靭な社会を作っていくことです。

最後はコロナ対策です。タイはこれまでコロナの封じ込めに成功していますが、保健医療や経済活動に大きな影響が出ており、With/postコロナ社会を構築していくことが求められています。

これらの取り組みは、いずれも人間の安全の保障と質の高い成長の実現に資する重要な取り組みですが、先進国があらかじめ解決の処方箋を持ち合わせているものではありません。三角協力のパートナーであるタイ政府をはじめとして、タイに関わる様々な関係者の方々とお互いの知見・経験を共有し、手を取り合って解決への道を切ら開いていく、従来の「支援」ではなくお互いの「協力」によるアプローチを重視して参りたいと思います。

ぜひみなさまからのご意見・ご提案を頂戴できますと幸いに存じます。

「微笑みの国タイ」の微笑みが次世代にわたって引き継がれ、さらに豊かなものとなりますよう、取り組んで参る所存です。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

2020年11月
JICAタイ事務所長
森田 隆博