所長あいさつ

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2018年12月にタイ事務所長として着任致しました宮崎です。

所得階層で上位中所得国に分類されるタイは、地政学的にも経済的にもメコン地域、そしてアジアにおける要の国であり、国際協力局(TICA)や周辺国経済開発協力機構(NEDA)という政府機関を通じ、近隣国に対する公的援助を実施しています。このような国は、もはやJICAが従来行ってきたいわゆる“途上国援助”の対象国ではありません。

では、JICAがタイにおいて果たすべき役割とは何でしょうか。

JICAのタイにおける1960年代からの長い協力の歴史、密接な人的・組織的なネットワークの強固さには、着任まもない私がタイ側の方々と接するたびに感謝の意が表明されることなどから既に強く実感しているものです。例えば40年以上にわたり協力してきたモンクット王工科大学ラカバン校(KMITL)。JICAの支援により建設されたチャオプラヤ川にかかる多くの橋梁、バンコクのスワンナプーム国際空港や都市高速鉄道などの数えきれないほどのインフラは、現在のタイの方々の生活や経済活動にとってなくてはならないものであり、JICAがめざす質の高い成長に大きく寄与してきました。

一方で、2015年9月に国連サミットにて合意された持続可能な開発目標(SDGs)は、JICAのミッションにも掲げられている人間の安全保障と方向を同じにしており、誰も取り残さないことをめざしているものですが、ある調査機関が最近発表した統計によれば(注)、タイは意外にも世界一経済格差が大きい国とも言われており、SDGsはタイにおいてもめざすべき目標です。SDGsは数多くの、それぞれが密接に関わりあう複雑な課題であり、これらの解決のためには、公的機関やドナーや国際機関だけではなく、大学や研究機関、そして民間企業やNGO等が一丸となって、ICTなどイノベーティブな手段を導入することが必要です。JICAも近年、民間企業との連携や海外展開支援に力を入れていますが、日系企業が数多く進出しているタイにおいて、ダイナミックな活動を行う様々なアクターと共に、タイの抱える複雑で難しい課題を解決したいと考えます。

加えて、タイは我が国と共通する課題をともに解決するパートナーになりえる国です。例えば、高齢化問題。タイは日本より早いペースで高齢者の比重が7%以上である「高齢化社会」から、14%以上の場合を指す「高齢社会」に移行すると予測されています。また、気候変動対策や環境配慮型経済社会の形成など、地球規模的課題に対し、日本の有数の大学や研究機関を通じた協力案件も数多く実施しています。タイはまさに日本のパートナーとして協働でその解決策を探っていくことが可能な国であり、かつタイ側もそのような関係を望んでいると考えています。

タイ、そしてメコン地域やアジアの人々ひとりひとりが人間らしく、自分で人生の選択肢を持てる生活を送ることができるように貢献するだけではなく、JICA自身が世界の開発に貢献していくために、非常に重要なヒントや要素を有する開発パートナーであるタイとの協働を意識しつつ、活動していきたいと考えています。

タイの方々やタイでのご経験をお持ちの日本の皆様からのご意見やご示唆は大歓迎です。心からお待ちしています。

2018年12月
JICAタイ事務所長
宮崎 桂

(出典:Credit Suisse Global Wealth Databook 2018 P.153)