【今、日本からできることを!一時帰国中の海外協力隊員が活躍 その2】赴任国の経験を日本で活かす

2020年8月17日

新型コロナウイルスの影響により、一時帰国中のJICA海外協力隊隊員たちは「今、できることから取り組もう!」と日本国内での活動を続けています。赴任国での経験を活かして、国内でさまざまな活動に取り組む4人の姿を紹介します。

民間企業で外国人従業員に日本語を教える 

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海外協力隊の日本語教員の経験を活かし、地元香川県の民間企業で働くミャンマー人に週に1度、オンラインで日本語を教える上原由雅隊員

青年海外協力隊の日本語教育隊員としてインド・ニューデリーの国立大学で日本語の指導を行っていた上原由雅隊員は、2年の任期の折り返しを迎えた矢先に突然の一時帰国となりました。

「インド人の同僚に『早い段階で日本に帰れてよかったね』と言われたときは申し訳ない気持ちになりました。その優しさに応えるためにも再派遣されたときにはより力を発揮したいです」と語り、現在もインドの最新情報や学校の状況などを現地の同僚と常に情報共有しています。

インドでは大学生を対象に日本語を指導していた上原さん。一時帰国した今はその経験を活かして、地元の民間企業で働く外国人従業員を対象にした日本語クラスを担当、またミャンマーにある関連会社の従業員にもオンラインで日本語を指導しています。

このように国内で日本語指導に携わる今、インドへ戻った時に実施したいと考えているのが授業時間外の活動です。

「例えば、習字で筆を使うと漢字は書きやすいことを教えたり、折り紙を一緒に折りながら日本の季節の行事を教えたり、日本語に対しての興味と理解を深められるよう、日本文化に触れられる活動をしていきたいです」と日本語教師としてのスキルアップとともに、新しい取り組みへの意欲を高めています。(取材は7月上旬に行われました)

保育園で赴任国についての情報を発信 

「手作り新聞や写真、クイズを通じて赴任国であるエクアドル共和国を紹介しています」と語る田中悠美子隊員は、現在、静岡県の保育園で保育士として働いています。子どもたちの発達に合わせた教材選びや音楽活動の普及のため、エクアドル共和国インバブラ県イバラ市の私立幼児センターで活動をしていましたが、配属からわずか1カ月での一時帰国となりました。

「『エクアドルではバナナがおかずなんだよ』などと教えると園児たちは興味津々。中には、帰宅後に世界地図を広げてエクアドルの説明を家族にしている子どももいて、エクアドルに対する関心が広がっています」と微笑みます。

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保育園でエクアドルの話をする田中隊員。スペイン語で書かれた絵本があり、読み聞かせをしながら簡単なスペイン語を教えることも

また、任国紹介をするだけでなく、協力隊の活動に盛り込めることはないかと意識しながら日常の業務に取り組んでいると田中隊員は話します。

「エクアドルの保育現場では『遊びながら学ぶ』という要素はなかったように感じました。日本の保育では遊びと学びをどうつなげているのか、わかりやすく説明できないかと日々考えています」と思いを伝える彼女の視線の先には、再派遣後の活動が見据えられています。

感銘を受けた尊重し合う文化を日本での活動に活かして

「マレーシアには初めて会う日本人の私に対して日本語を調べて声をかけてくれる人がたくさんいました」と任国へ思いをはせるのは、マレーシアのヌグリスンビラン州ポートディクソン地区にある小学校の特別支援学級で活動していた比留川なつ美隊員です。

赴任して3カ月目、活動へのやりがいが日々増していく中での突然の一時帰国となり、現在は、神奈川県横浜市にある中学校の国際教室(外国につながる子どもたちが、安心して学校生活が送れるように、日本語や日本の文化・社会生活を学ぶ場)に勤務しています。

「マレーシアは多国籍国家で異なる文化や思想の人たちが、お互いを尊重しながら過ごしていることに感銘を受けました。私自身、会議の内容が分からないとき、困ったときに助けてもらったこともあります。このような経験があるからこそ、母語が日本語ではない子どもたちの目線に立ってサポートし、教授方法を考えられるようになったと感じています」

「マレーシアは第二の故郷」と笑顔で語る比留川隊員は、今も任国の教員たちとの交流を続け、関係性を育みながら再派遣のときを待っています。

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マレーシアの特別支援学級での様子。子ども達の自立や主体性を引き出す授業づくりを心掛けていたそう

相手の価値観に寄り添い、新型コロナ相談に応える

「日本とは違う環境、条件下でどのように人々の健康をサポートできるのかを考え続けた3カ月でした。さまざまな視点で課題に取り組む柔軟さを鍛えることができました。急遽、一時帰国となりましたが、現地スタッフといっしょに新型コロナウイルスに立ち向かいたかったです」

ウガンダのカムウェンゲ、ルワマンジャ難民居住地区で1カ月半にわたり、看護師隊員として5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)活動の現状把握と改善、現地医療スタッフへの看護技術・ケアの改善業務を行ってきた周東美奈子隊員。現地では、ウガンダの人々との医療に対する価値観の違いに悩んだり、自身の考え方に偏りがあると感じたり、そのたびに「相手を否定するのではなく理解しよう、相手の物差しで物事を見よう」と心がけてきたそうです。この経験は、新型コロナウイルスの健康相談を受ける現在の業務にも活かされているとのこと。

「目に見える現在の症状や状況のみで説明しても相談者には納得してもらえないことがあります。そんなときは、ウガンダで自分では考えつかなかった現状や価値観がある事を学び、相手を尊重した支援を検討し実施してきたことを思い出します。相手の目線に立って本当は何に対する答えを望んでいるのかを考えて向き合うことで、ようやく相談者は安心します。こんな発想の切り替えは、協力隊員になっていなければ身に付けられませんでした」

「教えてもらったことのほうが多くて、成果としてウガンダに返せたものはまだ少なかった」と振り返る周東隊員。「机上の学びを現地で活用するためには何が必要かと考え続けている」という彼女の情熱は、日本に戻っている今も消えていません。

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難民居住地区内にあるクリニックへの訪問。クリニックでの仕事内容や住民である難民の方々の日常の様子についてヒアリングして回ります。左から2番目が周東隊員