【10月11日は国際ガールズデー】女の子が自分の夢や希望をかなえることができる世界になるように

2020年10月8日

女の子だからというだけで学ぶ機会を奪われてしまうという現実がまだ存在しています。その背景は、女性には教育が必要ではないという、価値観や、学校が近くにないという物理的な制約など、さまざまな理由です。

10月11日は、国連が定めた「国際ガールズデー」。男の子に比べて不就学率が高く、若年での強制的な結婚や、貧困に苦しんでいる世界中の女の子たちを力づけようと2012年に制定されました。

JICAは、途上国で女の子も平等に将来の夢や希望をかなえる力をつけるための学びや、誰もが平等に学ぶことができる社会の実現に向けて、さまざまな取り組みを進めています。

その一つが、学校に通えなくても、いつでもどこでも学習できる場をつくり、男の子や成人女性も含めコミュニティ全体で、読み書き計算など、人が生きる上で不可欠な教育の機会を提供するパキスタンでの取り組みです。女の子たちが識字と職業・生活に必要な知識を結び付けて学ぶことによって生計向上、就労の機会も広がり、自分の人生を自分の意志で切り拓くことができる素地が整うようになり、女の子や女性が学びやすくなりました。

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出展:パキスタン政府教育計画・運営協会

パキスタンで女の子が学校に行けない理由は、「近くに学校がない」、また学校があっても「女子トイレがない」などの物理的な要因に加え、「女の子はいつか結婚して家を出るので、稼ぎ手にならないから教育は必要ない」という伝統的な慣習による、女の子への教育に対する理解の低さがあります。

また、農村部では、親が非識字者であることが多く、子どもたちは幼い頃から文字や数字に親しむ機会(家の中に本・雑誌やカレンダーがない)がほとんどありません。自宅での学びの機会も少ないことに加えて、読み書き計算といった基礎的な学校教育を受けることができないと、将来成長した時に情報を正しく判断したり、職業としての選択肢も限られてしまいます。

そこで、JICAとパキスタン政府が協力して取り組んだのが「誰もが、いつでも、どこでも、いくつになっても学ぶことができる学校外の学び=ノンフォーマル教育」の仕組みづくりです。

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出展:パキスタン政府教育計画・運営協会

JICAは2004年から、パキスタンで通常の学校に通うことが難しい子どもたちのためにノンフォーマル学校の整備を進めてきました。現在、ノンフォーマル学校に通う子どもたちは約130万人に上り、そのうち55%が女の子です。

ノンフォーマル学校は、コミュニティの内に設置され、居住地からのアクセスが良く、通学の距離や女の子一人では通学できないという文化的な背景を踏まえると、女の子たちも安心して通うことができます。使用する教科書には、リーダーシップをとる女性のお話や、男女が平等に社会に参画するエピソードなどがイラスト入りでわかりやすく記載されています。通常の学校で5年間かけて学ぶ内容を3年半で学べるようになっており、試験に合格すると、小学校卒業資格を得て、公立の中学校に進学することもできます。

また、識字とライフスキルを習得できる成人識字教室の設置も同時に進んでいます。パキスタンでは、女性が自分の村から外に出ない(出ることができない)という風習が一般的です。この成人識字教室は女性たちにとって数少ない情報交換の場所となり、識字だけでなく、保健衛生や職業訓練といった知識についても学ぶことができます。裁縫や近隣で採れるマンゴーを使ったジャムなどの加工品の生産方法を習得することで、収入の向上にもつながっています。

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パキスタンで女の子たちの学びの機会が広がったのは、ノンフォーマル学校の設置といった物理的な背景だけでなく、男性も含むコミュニティ全体が、女の子にも教育が必要だと理解するようになったことも大きな理由です。これまで女の子や女性には教育はいらないと考えていた男性も、読み書きができるようになった女性が自信をつけていく姿に、その見方が変わっていったと言います。

その一方で今、世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスの感染拡大による経済停滞などに伴い、途上国の女の子の教育機会は奪われ、女性の雇用や生計へも深刻な影響が出ています。このような厳しい環境に置かれた途上国の女の子たちが、自分の人生を自分の意志で選ぶことができる——そんな世界の実現に向けて、JICAはこれからも取り組みを続けていきます。