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【3月8日は国際女性デー】女性が能力を発揮できる社会に向けて、誰もが身の回りでアクションを!:未来をひらく女性たちのリーダーシップをウガンダとカンボジアから

2021年3月4日

3月8日は「国際女性デー」です。女性の社会参加や地位向上、女性への差別撤廃に向け、世界中で声が上がっています。さまざまな場所でリーダーシップを発揮する女性たちのアクションによって、誰もが暮らしやすい社会へと変わっていく—そんな力強い女性たちの姿をウガンダとカンボジアから紹介します。

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左:ウガンダ北部の村で、農家グループリーダーとして活躍するアケラ・ジャクリンさん
右:コロナ禍で近隣国からの出稼ぎから帰国せざるをえず、経済的に困窮するカンボジアの女性たちのサポートに取り組むJICAカンボジア事務所のナック・チャン・ボリンさん

女性たちが率先して自らの知識と経験を伝え、力強く生きる姿を見せる

アケラ・ジャクリンさんの隣に立つ男性農家は彼女から栽培指導を受けました

ウガンダ北部グル県ウニャマ郡。一面のトマト畑で農家に栽培方法、農薬・肥料の使い方について教えるのは、農家グループリーダーのアケラ・ジャクリンさんです。北部ウガンダ生計向上支援プロジェクトの研修に参加し、トマト・キャベツの栽培方法や家計管理・栄養改善などを学びました。今でグループメンバーとともに、近隣農家だけでなく、他地域の28もの農家グループに対して指導をして回るモデル農家となっています。

伝統的な文化や慣習として女性に家庭内の決定権がなく、男性に従わなければという考えがあるウガンダ北部で、農家の生計向上を図りながら、家族全員が幸せに暮らすことを目的としたこのプロジェクトが始まったのは2015年。農家たちは、男性も女性も一緒に野菜の栽培技術や、収穫した野菜の販売方法を学びます。収入を向上させると同時に、男女が協力して家計管理や栄養の改善など日常生活の質を高めるため、家庭内での男女の役割分担に関する研修にも参加してきました。

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研修では、このイラストを提示し、それぞれの家族の問題点、良い点などを話し合い、家事分担について考えます

プロジェクトが進むなか、家事・育児は女性のみが行うべきといった固定観念は払しょくされ、男性も少しずつ参加するようになりました。男性が中心で決めていた収入の使い道も、女性と話し合って決めるようになり、女性だけで運営される野菜農場もできました。

農家グループの成果発表会であるフィールドディでは、近隣の人々を集めて、自分たちの経験を寸劇やダンス、歌で紹介しています。グル県パイチョ郡の農家グループでは、栽培方法や市場での売り方を学び、丸々と育ったキャベツを市場に並べると、飛ぶように売れるシーンを女性たちが自ら演じました。この劇を観て、彼女たちのようになりたいという女性の声も上がりました。

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大きく育てたキャベツを女性たちが市場で高く売った経験を伝える寸劇のシーン

女性たちの行動が男性の意識を変える

プロジェクトに参加する男性たちの意識も変わっていきました。女性が野菜を市場で売った方が収益をきちんと持ち帰ることを目の当たりにすると、女性の意見を取り入れるようになりました。また、これまで女性の仕事とされていた除草作業を行う男性の姿も見かけるようになりました。

地元で採れる食材のカードを組み合わせて、栄養バランスのとれた食事について男女がともに考えるワークショップ

ウガンダでも新型コロナウイルスの感染が拡大し、さまざまなストレスなどから、家庭で男性が女性に暴力を振るうことが増加しています。そんななか、ジェンダーの研修で知識を得た男性のアピラ・トーマスさんは、村長と一緒に家庭内暴力が起こっているコミュニティで、解決役としても活躍しています。

農家グループのトマトの農場でモニタリング中の山下専門家(中央)と農業普及員ら

プロジェクト開始当初からジェンダーの専門家として携わる山下里愛さんは、「ウガンダ北部は、1986年から20年近くに渡る内戦を経験しており、その負の影響についても農家さんたちの声を丁寧に聞く必要がありました」と言います。女性への差別だけでなく、内戦時に誘拐され子ども兵にされて親族を殺害せざるをえなかったことから、内戦が終わって村に帰ってきても差別される人もいました。

「誰もが取り残されることなく参画できる社会に向け、プロジェクトでは、老若男女、内戦の苦しみを背負う人など多様性を大切にし、それぞれが日常で直面する課題と向き合い、一緒になって考え、対処していくプロセスを大事にしています」。そう語る山下専門家は、現在、ウガンダへの渡航が制限されるなか、農家が学び合うための教材制作を遠隔で行うなど、現場の人々に寄り添いながら、プロジェクトを先導しています。

コロナ禍で困窮するカンボジアの女性たちを何とかサポートしたい:強い思いがアクションにつながった

「コロナ禍で、タイやマレーシアに出稼ぎに行っていた女性たちが職を失い、一斉にカンボジアに戻ってきました。しかし、帰国後、仕事に就くことができず、家族を養えずに苦しむ姿を目の当たりにして、何かサポートできることはないかと強く感じ、この調査を計画しました」

そう話すのは、JICAカンボジア事務所ナショナルスタッフのナック・チャン・ボリンさんです。

JICAは昨年、ジェンダー視点から新型コロナ対策をまとめた「ガイダンスノート」(日英)を作成。ボリンさんも調査に向けた提案書を作成する際、何度もページをめくりました

平時からジェンダーに基づく差別などで、社会保障や就労の機会が男性よりも限られている途上国の女性や女児の生活や生計は、新型コロナウイルスの感染拡大で、甚大な影響が及んでいることが明らかになっています。そのため、JICAは、途上国の女性や女児が今、どんなリスクにさらされ、またどのような支援が必要とされているのかを綿密に調べ、具体的な対策を実施する調査を行っています。各国の事務所にも呼び掛け、手を挙げた一人がボリンさんです。

「調査に向けた提案書の作成など、日本のJICA本部と何度も協議が必要で、私にとってこの調査の実施は大きな挑戦です。でも、経済的に困窮する女性たちの力になりたいという思いで進めています」

ガイダンスノート「ジェンダー視点に立ったCOVID-19対策の推進」

カンボジアは、安価な労働力や自国での労働機会の不足に伴い、労働人口の約1割が他国へ出稼ぎに出ています。特に農村部では多くの女性が出稼ぎに出る一方、人身取引の被害に遭うこともあります。

ボリンさんはこれまで約15年間、JICAカンボジア事務所に勤務。現在は、出稼ぎに伴うトラブルに巻き込まれる女性たちの支援を始め、女性の経済的なエンパワーメントに関するプロジェクトに従事しています。今回、その経験を活かし、現地のNGOと連携して、リーダーシップを取ってこの調査に取り組んでいます。

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女性の経済的なエンパワーメントに向け、ビジネススキルを習得するためのワークショップ(左)やジェンダー研修(右)を実施しています(写真提供/ PGM-WEE)

コロナ禍で出稼ぎから戻ってきた女性たちにどんな支援が必要なのか、コンポンチャム州とトボーンクモム州の2州で対面での聞き取りが始まっています。

「具体的な課題を明確にしながら、女性たちが職を得るための技術の習得などもサポートしていきます。そして、今回の調査結果をコロナ収束後の女性たちの生計向上に向けたプロジェクトだけでなく、国の女性支援政策にも反映できればと思っています」

コロナ後を見据え、ボリンさんはその言葉に力を込めます。