専門家ブラッシュアップ研修(収量調査)を実施しました!

2020年10月2日

2020年10月2日、JICA筑波では、株式会社三祐コンサルタンツ様と共催で、コメの収量調査研修を開催しました。研修では、基礎講義、実際にJICA筑波で収穫されたコメを使用した演習の他、衛星画像を使用した収量推定の試みについても講義を実施。オンライン配信も含め、41名が参加、充実した内容になりました。当日の様子と参加者の声をご紹介します。

研修概要

収量調査は、コメの収穫量を測り、導入した農業技術の効果を確かめるものですが、これ以外にも、収穫量や品質を改善するために必要な情報を集めるために活用できます。しかしながら、途上国では正しい調査の方法を理解している普及員は少なく、そのため、正しい収穫量や改善案が分からない、という状況も生じています。今回の研修は、この収量調査の基礎を改めて確認し、途上国での普及につなげるとともに、近年取り組みが加速している衛星画像を使用した収量推定の試みについても議論する機会としました。

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浦山氏の講義の様子

はじめに、JICA筑波で実施中の開発途上国の技術者・普及員等に向けた研修「天水稲作のための稲栽培・種子生産及び品種選定技術」のコースリーダーを務める一般社団法人海外農業協会(OADA)の浦山様から、収量調査の基礎について説明を頂きました。

説明では、基本的な収量調査の手法、収量を構成する要素、そして各要素がどの時期に何によって決定するか、についての解説がありました。収量を把握するという観点でいえば、もちろん田んぼにある籾を全て測ることでも事足りますが、コメを全て刈るのは非常に時間がかかります。従って、部分的に収穫することで全体の収量を推定する方法や、今後の収穫量や品質の改善に向けた情報を得るため、収量構成要素法を使用した収量調査を行うことが、収量把握においては極めて有効です。この講義・解説により、有効な方法・調査法を改めて確認することができました。

(注)収量構成要素は次の4つから構成されます:1平方メートル当たりの穂数、一つの穂から得られる籾の数、籾を比重1.06の塩水に浸して沈んだ正常に胚乳の発達した登熟籾の割合(%)、籾1000粒の重さ。

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脱穀機を使用して稲穂から籾を取り出します。その様子もオンラインで中継

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実習の結果を解説する浦山氏

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加藤氏の講義の様子

午後は、実際に2種類の方法で収量調査を行いました。まずは「部分刈り法」です。1週間前にJICA筑波の圃場で対角線法を用いて1区当たり2平方メートルで収穫して事前に乾燥しておいた稲の脱穀、脱芒(ぼう)、風選を行い、その重さを測りました。2つ目は「代表株選定法」です。圃場から30株を抽出し、その中から平均的な穂数を持った株をさらに5つ選定、4つの収量構成要素を測り、これらを掛け合わせて収量を推定しました。求められた収量は10アール当たり600kgと、日本では平均的な収量であることが確認できました。なお、収量構成要素を分析すると、良い籾の割合が多く、品質が非常に良いことがわかりました。しかし、1平方メートル当たりの穂数が比較的少ないことから、収量をもう少し上げるためには、一案として、分げつ後の施肥の量を少し増やした方がよいこと、などが説明されました。

最後に、(株)三祐コンサルタンツの加藤様から、ミャンマーで実施している衛星画像を用いた収量予測の試みについてご紹介頂きました。実際に圃場で収穫した量と衛星画像から読みとれる葉面積指数(Leaf Area Index)を用いて回帰モデルを作成し、実際に収穫をしていない圃場でも収量を推定するという試みです。回帰モデルの作成には、栽培カレンダー等、今回研修で学んだ現地での正確な収量調査データが必要となります。衛星画像の撮影頻度という課題は残りますが、各農家が同様の品種を作付けしている地域において、大まかな収量を把握することに関しては、この試みが非常に有用であることが示唆されました。

参加者の声

  • 収量構成要素の考え⽅の背景説明、実際に収量算定を⾏う実習、リモセン技術と結び合わせた講義提供とディスカッションなどが、とても参考になった。
  • 個別事項について知識を確認・深めることが出来るとともに、他の専⾨家と業務上の実態を踏まえた議論ができるので、有益な研修だと思う。
  • 新たな国でコメプロジェクトを実施するときに原本となる資料がJICAとしてあると、研修・研修教材を作るうえで⾮常に効率的であると思う。理想的にはコメ普及の進んでいるプロジェクトから、現地ならではの収量調査などをする上での注意点を含んだノウハウ集などができるとアフリカ全体で知識を共有できてよいと思う。

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部分刈り(対角線法)を行った圃場をドローンで撮影しました

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部分刈り(対角線法)を実施している様子

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刈り取った稲穂の数を数えている様子