【JICA海外協力隊帰国報告】栃木県上三川町出身 平山祐理さん~アフリカ・モザンビークで農家の収入や生産性向上を支援~

平山祐理さん(栃木県上三川町出身)
2017年度3次隊(青年海外協力隊)・2018年1月~2020年1月派遣・モザンビーク共和国・コミュニティ開発

【1】自己紹介 

一緒に活動をしていた農家さん(メイズ(とうもろこし)畑にて)

2018年1月〜2020年1月まで、アフリカのモザンビーク共和国にコミュニティ開発隊員として派遣されました。農村地域であるナンプラ州のモナポ郡の経済活動事務所(郡内の農業や商業などの経済活動をサポートする機関)に所属し、郡内の農家さんの収入や生産性向上の支援活動を実施しました。子供の頃から国際協力に興味があり、いつか現地に行って生活したり、仕事をしてみたい、と思っていました。会社を休職しボランティアに参加する制度を活用したため、現在は元の会社に復職しています。

【2】任国,任地の様子について

私の好きなモザンビーク料理:マタパシリシリ

モザンビークはアフリカ大陸の東海岸に位置し、日本の約2倍の面積を持つ国です。「アフリカ」と聞くと、英語やフランス語を話すイメージがあるかと思いますが、モザンビークはポルトガルの植民地だった影響で、公用語がポルトガル語です。加えて、国内には現地語(それぞれの民族が使用する言語)が40以上存在すると言われています。現地語とポルトガル語、また異なる現地語同士は、共通の単語はいくつかあるものの、基本的には通じません。ちょっと日本人にはイメージしづらい世界ですよね。私の任地では、マクワ族の言語であるマクワ語が話されていて、私が簡単なマクワ語を話すと、現地の方はいつも大喜びでした。食事は大変美味しく、他のアフリカの国から訪ねてきたボランティアが羨ましがるほどでした。というのも、モザンビークは長い海岸線を有し、観光客が多く訪れるビーチも多く、新鮮な海鮮料理を食べることができるのです。昔からインドやアラブ諸国との交易も盛んで、食文化はとても豊かです。私のお気に入りは「マタパシリシリ」という料理で、シリシリという海藻とカシューナッツのペーストを煮込んだものです。海藻の食感とカシューナッツの旨味がマッチし、忘れられない味でした。

【3】任国での活動について  

農家さんに会計指導をしている様子

配属先では、郡内農家の生産性や収入を向上させるため、次のような活動をモザンビーク人の同僚と行ないました。
①会計指導:郡内の養鶏農家グループ、農業加工品製造グループに対し、日々の収支をつけること、最終的な利益・損失の計算、売価の決め方などの指導を行いました。何人かの方は、それまで利益や損失などの記録をつけたことがありませんでした。記録をつけて初めて利益が見えるようになり、嬉しそうな表情を浮かべていたメンバーのことが忘れられません。
②有機肥料の普及:郡内のいくつかの農家と、現地で手に入る材料を使い、それまで任地では一般的ではなかった有機肥料を一緒に作り、実際に畑に撒いて効果を確認しました。残念ながら撒いた作物は病気などで収穫に至らなかったのですが、農家自身が効果を実感し、その後は、農家だけで有機肥料の作成を続けていました。
③ネリカ米※の普及:ネリカ米を郡内の農家と栽培し、現地米との比較を行いました。何件かの農家では、現地米より多くの収量を得ることができ、それらの農家では継続してネリカ米の栽培を行っています。
※ネリカ米=NERICA NEw RIce for afriCAの略。アフリカの米生産向上を目指して開発された品種。

【4】帰国後の活動について  

現地の子供たちと

帰国後は元の会社に戻り、会計に関わる分野で仕事をしています。帰国後周りの方から、「肌が黒い」、「明るくなった」とよく言われます。肌が黒いのは、平日は農道をバイクで走り、休日はビーチで過ごし、日光を沢山浴びていたためです。明るくなったのは、モザンビーク人とのコミュニケーションのおかげだと思います。私は、あまり積極的にコミュニケーションをとる人間ではありませんでしたが、明るい彼らと挨拶やお喋りをしていく中で、人と直接コミュニケーションをとることが自然で大切だ、と感じるようになりました。また、2年間の活動のなかで、自分の専門性を深めることの必要性を感じました。活動中、途上国で技術指導を行う様々な分野の方とお会いする機会があったのですが、どの方も自分の確固たる専門分野を持っていらっしゃいました。私も自分の経験分野である会計を使い活動をしましたが、考えや文化が大きく違う人に伝えるには、まだまだ理解や経験が不十分であると痛感しました。これからもっと世界に貢献していくためには、自分の仕事をより深く理解し、様々な経験を積む必要があると感じました。

【5】今後の抱負

同僚たち(最終報告会にて)

まず、現在の仕事である会計分野の知識を深めていきたいと思います。将来的には、その分野の知識を活かして海外勤務をしたいと考えています。プライベートでは、モザンビークで使っていたポルトガル語の勉強を継続しながら、それを活かし、日本在住のブラジル人の方の役に立てるボランティア活動に参加していきたいと思っています。
私にとって、モザンビークで過ごした2年間は、楽しく充実した思い出とともに、まだまだ自分では役に立てなかったな、という悔しい気持ちもあるものでした。これからもっと努力して、この世界に貢献できる人間になっていきたいと思います。