【JICA海外協力隊帰国報告】栃木県小山市出身 野沢 有加さん~シェアの文化にとまどいながらも、子どもたちと楽しく過ごした2年間~

野沢 有加 さん (栃木県小山市出身)
2017年度1次隊(青年海外協力隊)・2017年7月~2019年7月派遣・サモア・小学校教育

【1】自己紹介 

授業の様子。習熟度別に課題に取り組めるよう、個別にプリントを準備

大学では教職課程を専攻し、その経緯から小学校教育の職種で青年海外協力隊に応募しました。新卒で青年海外協力隊を志し、大学を卒業した年の7月からサモアに派遣された私ですが、その理由は大学時代の経験にあります。大学在学時は、地域交流をメインとするボランティア団体に所属していました。その団体では、主に地域活性化を目的とした国際交流・普及の活動や町おこしイベントを行っていて、そこからボランティア活動に興味を持ったことが第一のきっかけです。また、大学卒業後ストレートで教員になることを考えたとき、その当時の自分の経験値やレベルでは教員は務まらないのでは、と自分のスキル面に疑問を感じていていました。そのようなことから、青年海外協力隊員の一人として途上国で経験を積み、スキルを磨かせていただこう、と青年海外協力隊員になることを志望しました。

【2】任国,任地の様子について

他の隊員にも協力してもらい、一丸となって理科の実験大会(サイエンスフェスティバル)を実施

サモアは小さな島国で、日本と似た文化を多く持っています。「本音と建前」の文化がいい例です。サモア人は、日本人よりもさらに「本音と建前」を用いるので、それを理解し、またお互いを理解しあうのには、かなり時間がかかりました。また、サモア文化を説明するときに欠かせないものとして「シェア」の文化があります。人々はなんでもシェアをします。食べ物をシェアすることはもちろん、お金、ペンなどの文房具類、日用品など、「もの」というものは全て、みんなでシェアします。日本で普段何気なく人に貸したり借りたりする行為。これらは、「返ってくる」という前提(当たり前)があるからこそできるんですね。国が違うとその「当たり前」は通用せず、大きなトラブルになることもあります。自分が1番苦労した文化の違いをあげるならば、間違いなくこのシェアの文化です。「自分のもの」「ひとのもの」の境界線がないので、貸した・返ってこない・失くした・さらに誰かに貸して行方不明・・・・ということは日常茶飯事。2年間生活をしていても、最後まで馴染むことができませんでした。

【3】任国での活動について

ソーラン節を大変な思いで練習し運動会で披露。終わってみれば、皆とびきりの笑顔に

サモアの小学校に配属され、理科と算数を教えました。対象は日本の年長園児から中学校1年生まで。サモアの小学校は8学年制で、その中でも小学校4年生から上の児童を中心に教えていました。対象が小学生だったので、使用言語はサモア語でした。もちろんはじめは、サモア語で子どもたちと意思疎通をはかることすら困難だったため、授業でクラスを統率することには本当に苦戦しました。しかし、彼らと時間を過ごす中で、サモア語を徐々にマスターしていき、最後には本当にいい関係を築くことができた、と思っています。自分の思いが、言葉は十分に通じずとも、少しでも彼らに伝わっていてくれたら、嬉しいものです。2年間の活動の中では、サイエンスフェスティバルという理科のお祭りをサモアで初めて開催したり、算数大会など算数の基礎学力の向上を目指した活動も行ったりしました。そのほか、日本の文化に積極的に触れてもらうため、運動会やソーラン節などの指導を行ったことも良い思い出です。言葉や授業形態が異なるサモアで、このような行事を開催することは本当に大変だったのですが、皆よく協力してくれたな、と今になっては懐かしく、そしてありがたく思っています。

【4】帰国後の活動について

家族と教会にて。皆、いつもよりもおめかしをして教会へ。サモアではとても大切にされている習慣

現在は、ものが限られていたサモアの教育現場でも、PCやプロジェクターを駆使し授業を実践できた経験から、IT技術を駆使し世界各国でフラットな教育現場を実現したい、と、日本のIT企業で日々経験を積んでいます。教育業界から未経験でITの世界へ飛び込み、本当に右も左も分からない状態ですが、いつも心の奥ではサモアを思い出し、慣れないことであっても挑戦を続けています。サモアでの2年間を通じ、人間できないことはない、と強い自信を持つことができました。再び途上国に関わることを夢見て、今は修行の時だ、と思い日々の業務に当たっています。青年海外協力隊に参加してよかったことは、日本での今までの生活や物事を外から俯瞰してみることができたことです。しかも、サモアという、日本よりもずっとずっとものがない国からみることができたので、自分の生活のあり方や、これからの人生についても、深くじっくり考えることができた2年間でした。そういうことを自分に気づかせてくれたサモアの人々には、感謝の気持ちしかありません。

【5】今後の抱負

こんな格好をした人たちが村のあちこちを歩いている。サモアの様子がわかる、大好きな1枚

サモアに再び帰りたい、という思いが心の中にいつもあります。私にとってサモアは、第2の故郷とも言えるような大切な国であり、そこで関わった子供達やサモアの家族の顔や笑い声を今でも色濃く覚えています。今すぐ戻ることはなかなか難しいですが、現在の環境でしばらくは新しい経験を積み、必ずサモアに帰りたい、と考えています。また、今でもこの青年海外協力隊の縁を通じて、SNSで声をかけてくれる人たちがいます。そんな人たちのために、少しでも自分ができることがあったらと、自分が経験したことをこれからも積極的に発信していきたいと思っています。日本での生活も落ち着いてきた現在、これらの思いの実現に向けて、行動をしていきたいと思っています。
最後に、これからJICAボランティアを志す皆さんへ。JICAボランティアは、自分の人生にとって必ず大きな経験になることは間違いありません。現地の人たちと色濃く関わった分、やりがいや新たな気づき、自己の成長に結びついてくるので、2年間どのような環境に身を置くことになっても、活動を思いっきり楽しみ、最後までやり切ってもらいたいです。また、応募に悩んでいる方々には、悩んでいるのならば、参加してみることをお勧めします。人生で1度や2度もないこのような機会、多くの人たちに経験してもらい、自分の視野を広げてもらいたいです!