【海外協力隊の国内研修報告】途上国の農村指導者とともに考え、発信し、行動することを学ぶ

~栃木県那須塩原市の学校法人アジア学院で待機中隊員が研修に参加~

2020年8月21日

2020年7月29日(水)~8月11日(火)、新型コロナウイルス感染拡大等の影響で一時帰国中の青年海外協力隊員8名が、栃木県那須塩原市にある学校法人アジア学院で、アジア・アフリカ・大洋州諸国からの農村指導者とともに、コミュニケーション・ケーススタディ・農業などの実習・座学研修に参加しました。隊員たちは、開発途上国/国際協力の現場・活動で役立つリーダーシップとは何かについて、また、考え、発信し、行動することの重要性を、ケーススタディ、農村生活疑似体験などを通じ学びました。

研修の概要

この研修は、有機農業による自給自足を基本とし、アジア・アフリカ・太平洋諸国から“草の根”の農村指導者を学生として招き、様々な座学・研修を通した実践的な学びを提供している学校法人アジア学院のご協力により実施されました。今回の研修では、隊員たちが任国に戻った際、活動に意欲を持って取り組めるよう、「考え、発信し、行動する機会」(の重要性)に焦点を当て、コミュニケーション・ケーススタディ・農業の3つのカテゴリーに分け、研修プログラムが組まれました。

コミュニケーションプログラム

コーチングを練習する隊員

「内面を聞く」ことに取り組んだ結果を皆で共有

英語でのコミュニケーション実践

プレゼンテーションの様子

このプログラムは、大きく「①自分と他者の内面を聞くことを主体としたプログラム」と「②人に伝えることを主体とし外面に働きかけるプログラム」の2つに分け実施されました。

①「内面を聞く」プログラムでは、はじめにコンサルテーションを実施。アイスブレークを兼ね、互いによく話し、良く聞いて、自分と他者の内面に意識を向けることを体験しました。任国からの帰国後、対面で会話する機会はほとんどなかった、という多くの隊員は、人と会い、コミュニケーションをとることの楽しさを実感していました。


②「外面に働きかける」プログラムでは、アジア学院が共通語としている英語でのコミュニケーション実践、プレゼンテーションを行いました。英語が必ずしも得意ではない隊員もいましたが、アジア学院で学ぶアジア・アフリカ地域などの農業指導者の多様な発音の英語に触れ、楽しくコミュニケーションを取っていたようです。締めくくりでは、参加隊員それぞれが、この研修での「学び」について、様々に工夫を凝らし、英語で最終プレゼンテーションを行いました。

ケーススタディプログラム

自立のための改善を考えるケーススタディ

このプログラムでは、ガーナ、フィリピン、東北インド、ミャンマーの農村開発をテーマに学びました。ガーナ人スタッフのティモティさんは「開発は自立のために行うこと、援助や介入になってはいけない」、インドのアチボさんは「教育とは自立である」とコメント。

自立について、また、単に知識を伝達するだけでなく自立を促す教育について、途上国の農業指導者、参加隊員がともに考えました。また、参加隊員間でも、開発について改めて意見を交わし、大きな学びを得ることができました。

農業体験プログラム

毎朝夕のフードワークライフ(農作業)

ルバーブという野菜を使ったパイづくり

豆の収穫

このプログラムでは、開発途上地域の人々の多くが従事する農業の実体験を通して、作物の生育、自然のサイクル、豊かな土の作り方などを学びました。

参加隊員は、農業技術や知識だけでなく、実際に身体を使って体験したことで、食と命・土と生命の循環について考える機会を得ることができました。鴨のと殺、解体など、普段体験することができない実習もありました。

炎天下の農作業、臭いのきつい肥料づくりなど、厳しい環境での体験でしたが、参加隊員は皆明るく、笑顔があふれていました。

研修を振り返って

一時帰国期間が長引くなか、国際協力へのモチベーションを保つことが難しい、と感じていた隊員もいましたが、この研修に参加したことで、モチベーションを再び高めたようです。農業体験では、自分たちが生産に関わったものを食べることで、人と食の深いつながりを体系的に、実感を持って学ぶことができました。また、アジア学院で出会った様々な人たちとのコミュニケーションを通して、自分の考えを深め、整理すること、国際協力に必要不可欠な語学力の向上、多様な文化・習慣への理解を深めることができました。
充実した2週間の研修期間中、参加隊員の皆さんの顔はいつも笑顔であふれていました。隊員の皆さんが研修で得た大きな学びを、任国での活動や国際協力に活かせるよう、JICAはこれからも応援していきます。