所長あいさつ

バヌアツ国は、80年近くフランス、イギリス両国の共同統治が続いた後、1980年7月に独立を果たした若い国です。大洋州の他国と同様に、80以上の群島で構成されており、人口(約27万人)の8割近くが地方の離れた島で生活しています。各島にはそこでは未だに伝統的なメラネシア文化(先祖崇拝、氏族間の儀礼交易、天地創造神話)が色濃く残されています。

バヌアツ国の歴史を俯瞰すると、17世紀の初めに「南方大陸」の存在を信じたスペイン人探検家が群島に現れ、キリスト教が徐々に広がるきっかけを作りました。その後、18世紀半ばにフランス人、イギリス人の探検家が次々と群島に到着し、当時の植民地主義を背景に群島を統治していく中で、20世紀の初めにはフランス、イギリス両国による共同統治が行われました。そのため、現在でも英語系の学校とフランス語系の学校があり、ビスラマ語(ピジン英語),英語,仏語のいずれもが公用語として話されています。

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このような歴史を持つバヌアツ国にJICAは1988年に事務所を開設し、JICA海外協力隊の派遣や技術協力プロジェクト、港湾や病院整備などの資金協力事業など様々な協力を実施してきており、バヌアツ側からも非常に高い評価をいただいています。

しかしながら、新型コロナウイルスの影響により、2020年3月に当時バヌアツ国に派遣中だった協力隊員23名を日本に帰国させて以降、いまだに協力隊員の再派遣の目途はたっていないなど、JICA事業のほとんどはストップした状況が1年以上続いていました。

なお、そのような中ですが、バヌアツ国内では、厳しい水際対策が功を奏し、現時点で感染者4名、死者1名とコロナを非常にうまく抑え込んでいることから、今年6月より協力隊以外の事業再開が可能となりました。今後、なるべく早急に、各事業関係者がバヌアツ国に来ていただけるよう、関係各部と密接に調整を進めていきたいと考えています。

今バヌアツ国内では、マスク着用も不要の完全なコロナフリーの状況ですが、外国からの観光客が来ないため、観光業を中心としてじわじわとマイナスの影響が出始めています。また、今は大丈夫でも、今後何かをきっかけにいつ感染が急拡大しないとも限りません。

全世界を覆うコロナ禍はなかなか終わりが見えず、もどかしい思いも感じていますが、このような事態であるからこそ気を引き締めて、バヌアツ側の関係者とも真摯に向き合い、With/Postコロナを見据えて支所としてできることを積極的に進めていきたいと思います。

2021年7月
バヌアツ支所長 植村 吏香