所長あいさつ

ザンビア共和国といえば、世界三大瀑布の一つであるヴィクトリアの滝や、世界最大のダム湖であるカリバ湖が有名です。また、国内には複数の国立公園があり、手つかずの自然やサファリが楽しめます。周囲をタンザニア、マラウイ、モザンビーク、ジンバブエ、ナミビア、アンゴラ、ボツワナの8か国に囲まれた内陸国ですが、戦争の歴史を持たない平和な国、おだやかな国としても評価されています。本来であれば、水や自然環境が豊富にあり、かつ内戦がないということで、開発や経済成長が見込める環境にあるといえます。

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産業は北部のカッパーベルト州で産出される、その名のとおり銅の輸出に依存する単一輸出経済です。国際価格に大きく影響を受ける経済構造から脱却するため、産業人口の半分を占める第一次産業の多角化や企業振興を進めてきましたが、銅価格落ち込み以降の経済悪化、長年の社会主義体制による中国をはじめとする対外債務への依存や汚職が積み重なり、経済成長が阻害され2020年には外貨建て国債の利払いができず、事実上の債務不履行状態に陥りました。

こうした経済悪化と、これまでの中国依存への不満から、2021年の大統領選挙では野党が勝利を収め、民間企業出身の党首のヒチレマ大統領が誕生します。新政権は経済立て直しを掲げ、雇用創出、企業振興を打ち出しますが、長引くコロナ禍の影響、ウクライナ情勢による世界的な物資不足と価格の高騰は、内陸国で物資の輸送に費用の要するザンビアにとって、より大きなマイナスの影響をもたらしています。

JICAは1970年代初めに協力を開始して以来、幅広い協力を展開し、かつての支援額はアフリカの中でも上位に位置付けられていましたが、上述のとおり援助受入能力低下が背景となり、援助量が縮小傾向にあります。現在の厳しい状況の中、コロナ禍により中断、中止していた事業を再開し、ザンビアの経済再生、活性化に資する支援を、安全、かつ確実に遂行するとともに、本来のポテンシャルの高さを最大限に引き出し、自立を促進することで援助が減っていく、そんな支援を行っていく所存です。

今年8月にはコロナ禍では初めてとなる第8回アフリカ開発会議(TICAD8)が開催されますが、アフリカ自身の主導による開発が益々重要になっています。ザンビアのオーナーシップを尊重しながら、コロナをはじめとした様々な危機や課題にも対応できる強靭な社会をザンビアの人々と共に作っていきます。

2022年4月
ザンビア事務所長 米林 徳人