jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

所長あいさつ

ザンビアは、日本から約12,900km離れた南部アフリカの内陸国です。1964年の独立以来、平和と民主主義を重んじながら発展を続けており、日本との外交関係も2024年に60周年という大きな節目を迎えました。この長年にわたる友好関係を基盤として、JICAはインフラ整備、産業振興、教育、保健、農業など幅広い分野でザンビアの発展を支援しています。
私自身、政府関係者や地域の皆さまとお話しする中で、日本によるこれまでの協力が今なお高く評価され、記憶されていることに深い感銘を受けています。その温かい評価は、個々の事業の成果だけでなく、長年にわたり築かれてきた信頼関係の表れであると感じています。

日本とザンビアの協力の歩みは、人材育成からインフラ整備まで多岐にわたります。1980年代から続くザンビア大学獣医学部への協力は、現在ではアフリカ有数の獣医学教育拠点の形成につながり、多くの卒業生が国内外で活躍しています。また、ルサカ市ジョージコンパウンドにおける給水・衛生改善事業は、都市部の生活環境改善の成功事例として現在も高く評価されています。教育分野では、小学校建設や教育の質の向上を通じて次世代を担う人材育成を支えてきました。さらに、カフエ橋やカズングラ橋の建設、ワンストップ・ボーダーポスト(OSBP)の導入支援などを通じて、ザンビアのみならず南部アフリカ地域全体の物流と経済連携を支える協力を進めてきました。また、これまでに1,600名を超えるJICA海外協力隊員がザンビア各地で地域の人々と共に活動し、教育、保健、農業、職業訓練など幅広い分野で人づくりと地域づくりに貢献してきました。こうした協力隊の活動は、両国の友情と相互理解を支えるかけがえのない財産となっています。

JICAは、施設やインフラの整備に加え、人材や組織、制度の強化を通じて、ザンビアの人々が自ら課題を解決し、発展を担う力を育むことを重視してきました。相互の学びと信頼、そして現地の主体性を大切にする協力の姿勢こそが、長年にわたるパートナーシップを支えてきたものと考えています。
ザンビアは独立以来、大きな紛争を経験することなく民主主義を尊重し続ける平和な国であり、周辺国からの難民受入れを通じて地域の安定にも貢献してきました。また、70を超える民族や多様な言語・文化を有しながらも、「One Zambia, One Nation」の理念のもと、国民の結束と共生を大切にしてきた国でもあります。異なる背景を持つ人々を温かく迎え入れる開放性や寛容さ、そして人々の明るさと親しみやすさは、私がザンビアの大きな魅力だと感じている点の一つです。

さらに、ザンビアは世界三大瀑布の一つであるビクトリアの滝、広大な国立公園、豊かな野生生物など、自然の魅力にもあふれています。また、銅やコバルトをはじめとする豊富な鉱物資源を有し、近年は世界的なエネルギー転換を支える重要鉱物の供給国としても注目されています。一方で、鉱業への依存からの脱却と産業の多角化、都市インフラ整備、教育・保健サービスの向上、農村部の貧困削減、感染症対策、気候変動への適応など、多くの課題にも直面しています。
特に首都ルサカでは急速な都市化が進み、給水・衛生、交通、廃棄物管理、洪水対策などの課題が顕在化しています。JICAは、給水改善や保健サービスの向上、都市交通整備、廃棄物管理、都市計画策定などを通じて、持続可能な都市形成を支援しています。
また、農業はザンビア国民の多くの生計を支える重要な産業ですが、近年は干ばつや気候変動の影響が深刻化しています。JICAは稲作振興を通じた農家所得の向上を支援するとともに、市場を意識した生産や販路拡大を後押ししています。さらに、小規模灌漑開発を通じて、水資源を有効活用したレジリエントな農業の推進に取り組んでいます。

また、ザンビアは8か国に囲まれた内陸国でありながら、南部アフリカをつなぐ交通・物流ネットワークの要衝でもあります。JICAは橋梁整備や国境通関の円滑化などを通じて、ザンビアが「Landlocked」から「Landlinked」へと発展することを後押ししています。
私は、ザンビアが有する若く活力ある人口、豊かな農業ポテンシャル、世界的にも重要な鉱物資源、そして南部アフリカの結節点としての地理的優位性に大きな可能性を感じています。その中でも最大の資源は「人」であると考えています。未来に向かって挑戦し続ける人々の力こそが、ザンビアの持続的な発展を支える原動力です。
JICAは、人間の安全保障の理念のもと、開発の成果を一人ひとりに届けるとともに、人々や組織が自ら未来を切り拓く力を育むことを大切にしています。外から解決策を持ち込むのではなく、ザンビアの人々や組織が描く将来像の実現に向けて、ともに考え、ともに歩むパートナーでありたいと考えています。

「One Zambia, One Nation」の精神は、誰一人取り残さない包摂的な発展を目指すJICAの理念とも深く重なります。日本とザンビアの60年を超える友情と協力の歩みを大切にしながら、JICAザンビア事務所は今後もザンビア政府および国民の皆さまと手を携え、より強靱で包摂的、そして持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

小野 智子
JICAザンビア事務所長