ザンビアでのオンライン授業実施の試み

2020年12月1日

2019年度2次隊 理科教育
セレンジェSTEM男子中等学校 三浦 広大
セントマリー初等学校 小川 翔生

1.はじめに

私達は2019年度2次隊理数科教育隊員として、ザンビアに派遣されましたが、新型コロナウイルスの感染拡大により、わずか3ヶ月での日本へ退避となってしまいました。日本に居ながらザンビアの学生のために何か出来ることはないかと2人で考え、取り組んだ活動について報告します。

2.ザンビアでの心残り

小川

実際現地の学校で活動した期間は約3カ月でした。この3カ月で出来たことは、日本の中学2年生、高校1年生にあたるGrade8・10の理科の授業や先生達とのコミュニケーションに努める事、そしてどんな形で私がザンビアの理科教育に貢献できるかの調査でした。当初の目的としてはこれらの過程を通して、現地の先生達と協働しながら活動を本格化していく予定でしたが、帰国せざるをえなくなりました。
自分のザンビアでの活動に対する心残りとしては、本格化する予定だった活動が現地の先生達と一緒に出来なかったことです。配属された学校の先生達は、私を温かく受け入れてくれ、相談も真摯に乗ってくれる本当に頼もしい先生方でした。そんな先生方と一緒に多くの活動を行って、ザンビアの教育に貢献することが出来たら充実した2年間になるだろうと思っていたので、突然の退避帰国は非常に残念でした。

三浦

私は2020年1月から約2ヶ月間、ザンビア中央州セレンジェ郡にあるセレンジェ技術STEM(注)男子中等学校で高校1・2年生を対象に生物の授業をしていました。この学校は全寮制の男子校で生徒も先生も皆が活気に溢れており、男子校特有のノリがあったり、学校に唯一ある生徒用のテレビがある部屋からは、サッカーの試合観戦で大きな歓声が聞こえたりしていました。その一方で、「自分は将来、ビル・ゲイツのようなエンジニアになる」という生徒や夜9時近くまで教室で自習に励む生徒の姿があったりするなど、勉強にも真面目に取り組んでいました。そして、ずっと友達と一緒に暮らし、遊び、勉強する、そんな彼らの学校生活を近くで見ていて、時に羨ましく思いました。また、先生達は連続で授業があった時には職員室に帰ってきて、疲れて死にそうだと言いながらも課題の採点をしたり、放課後に隣町までバスでサッカーの試合に行き、勝った日の帰りのバスでは、いつもその日のMVPを決める争いが起きたりするなど、とても賑やかで楽しい先生達でいっぱいでした。こんな生徒や先生達と共に、これからの活動をしていくのがとても楽しみでしたが退避となってしまい、あっという間の楽しい夢を見ていたような感じでした。
(注)Science, Technology, Engineering and Mathematicsの略。日本のスーパーサイエンスハイスクールと同様に、ザンビアも全国に52のSTEM校を設置し、理数科目の強化を図っている。

3.オンライン授業実施の試み

私達はザンビアから日本へ退避してから半年以上が過ぎました。青年海外協力隊員としての身分であるものの、自らの国内や任地に対する活動が満足に出来ていない状況でした。そのうえ、現地の学校が新型コロナウイルス感染対策のため休校していたことも重なり、何か現地のためになる活動をしたいと強く感じるようになりました。

ザンビアの現状を2人で話し合い、ザンビアではほとんどの生徒が教科書を持っていないため、インターネット上に教科書を要約したものを乗せれば、教科書を持っていない生徒もいつでも教科書を見ることが出来るのではないかという結論に至りました。また、現地の先生や生徒にFacebookを通して、「日本からできる事は何かないですか?」と尋ねたところ、「オンライン授業を実施してほしい。教科書のコピーが欲しい」などの声が多くの生徒から上がってきました。そこで、生徒がいつでも教科書を見ることが出来る教科書の要点をまとめたホームページとオンライン授業を行うためのFacebookのグループを作成し、その中で週に1度、オンライン授業を実施してみる事にしました。

第1回目はZoomを用いたオンライン授業を試してみたのですが、参加生徒は1人で、相手の音声が聞こえないという中での授業でした。Zoomは使い方が分からないという声があったため、第2回目はMessengerのグループビデオ通話機能を試しました。顔の見えない生徒に対して話すのはなかなか慣れず、生徒が理解しているかどうかも分からない状況でしたが、20分程度の授業を行い6人程の生徒が参加しました。しかし、時間帯が合わず参加出来ないといった声も聞かれたため、第3回目はFacebookのLive配信機能を用いて、いつでも見返すことができるように授業を行ないました。そこでは3人の生徒がリアルタイムで視聴してくれてコメントを送ってくれたのですが、相手の顔が見えない状況での授業のやりづらさというのを同時に感じました。また、動画を見るための通信費が高くて動画を見ることが出来ないといった声も聞かれたため、第4回目はWhatsAppのグループに説明用のスライドと説明用のボイスメモを投稿しました。現地の同僚教師数名に声をかけるとオンライン授業に興味がある教師もいましたが、実施には至りませんでした。第5回目は再びFacebook live での動画配信を行ないました。その後9月末より学校が再開され、全員が学校の寮に下宿している生徒達は携帯電話の持ち込みが禁止されているため(それでもなぜか生徒からはHow are you, sir?と連絡が来ますが)、今は生徒との連絡が取りづらくなっている状況です。

今回のオンラインでの取り組みで感じたことは、実際に実験を生徒にさせてみせたり、生徒の直接的な反応を元に授業を進めたり出来るなど、現地で活動が出来るという有難さです。それと同時に、日本に居ながら任地へどの様に貢献するか体験しながら対策を考える良い機会にもなりました。

4.今後の取組み

現在コロナ禍の大きな変換点にあるため、オンラインという環境をうまく活用して新しい国際協力の形を作りたいというアイデアが膨らんできました。例えば、このオンラインでの取り組みをさらに改善し、将来的に現地の学校の一室を借りて遠隔授業をしたり、授業で分からなかったところを質問するQ&A方式ができる場や、学生のリクエストを基に補習授業やテスト対策を行ったりするなどです。現地と日本を繋ぐことはもっと学びたいという現地の生徒だけではなく、国際協力に興味のある多くの日本人にとっても面白い試みではないかと思っています。現地に行けない今、難しい面が多く苦戦してはいますが、このオンラインだからこそ出来る取り組みの可能性についても今後、探しながら実践していきたいと思います。

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オンライン授業第1回目

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作成した生徒用Facebookグループ

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作成したホームページ